第104話 ソロハンターシアン
胡座かいて待機していたら小鳥が寄ってくるんじゃね?ってくらい、無になりながら待機していると、なんかよくわからない違和感を感じた。
具体的にどこが?って聞かれると、「うーん」としか言えない。でも、何かしらの変化はあった!と、胸を張って言える。
注意深く観察しながら待ってみようと思う。なにか変化があれば、これで気付くはず。きっと。
◇◇◇
ウトウトしながら頑張って観察を続けると、違和感の正体を発見できた。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうね★
違和感の元へと近付いていき、ソレを目掛けて石を投げる。
あんことのお遊びでは使えない縦変化の変化球。縫い目も無く回転も雑なのに何故か鋭く落ちていき、小気味よい音を立てて目標にぶつかって爆ぜた。
スプリットフィンガードファストボール......通称SFF、スプリット。
フォークよりも落ちは控えめだけど、フォークより球速があり、フォークよりも鋭く変化する魔球。こんな球が投げられていれば、俺も夢のプロ野球選手になれたのに......
小石が爆ぜる勢いで当てたのに、ヤツは小石がぶつかったとしか思えていないのかなぁ、鈍感な目標は姿を現さない。
仕方ない......下手したら倒しちゃうかもしれないけど、硬球でいってみようか。
良い子の皆は絶対に、人や生き物に向かって投げちゃダメだよ。残念なお兄さんとの約束だよ。
縫い目とか考えずにぶん投げてみよう。汚い回転のストレートで変な動きしてくれれば面白い。
日本人は、今でも綺麗なフォーシームを投げる事に固執しているけど、ツーシームや汚いストレートをもっと使えばいいのに。
糸を引くような綺麗なフォーシームなんて、ほんのひと握りの投手しか投げられないんだし。
そんな事を考えながら、思いっきり振りかぶって力任せに投げる。フォームなんか気にしない......コントロールとかはスキルが補ってくれるはずだ。
ただ投擲したモノを、標的にぶち当てる事だけを考えたスローイング。
俺の投球は、ただただ酷い事をしてしまったの一言だった。
火の玉ストレート。
有名な猫科の球団の、もう引退してしまったレジェンドが投げていたストレートがそう評されていた。
だけど、俺の投げたモノは火の玉ストレート(物理)だった。
空気の摩擦と何かの要因が重なって、文字通り燃えた。
一体アレは何Km/hくらい出たんだろうか......
標的の岩を貫通していったボールさん。どっかに着弾するまえに燃え尽きると思うから放っておいてもいいか。
幸い標高が高い場所だから、どっかのドラゴンが火の玉吐き出したと思うでしょ。きっと多分。
地面の下で寝ていたと思われる標的は、背中のナニかを抉られた事でようやくお目覚め。
地面から飛び出してきたのは巨大なカメだった。
どうやって埋まってたんだろう?頻繁に移動されたら土地がぐっちゃぐちゃになりそうだなぁ。
起こしちゃったせいでこの場所が荒れちゃった......そこはごめんなさい。
さて、バサル〇スみたいのが出てくると思っていたけど、カメさん......そして、この地が全然荒れて無いことから大人しい系と思われる。
▼ランドタートル
地面と同化し、少しずつ土を食べる大人しい生き物▼
しばらく睨み合いみたいになったけど、カメさんはまた地面と一体化していった。
なんかごめんね。部位破壊した部分は、記念に貰っていきます。
移動する岩場......アレみたいだって思っちゃうじゃん。ハンマー投げっぽい事をしてくるアイツや、クッキング〇パみたいなアイツが出現しなくてよかったけどさ。
心の中でカメさんに謝罪をして、それから場所を移動して狩りを再開。今度は木の上で待機しようと思っている。
待ちの姿勢だけど、やってくる大型な肉を狩ってやるぜ!!
探知に頼りすぎな俺なので、いい機会だし、気配を読む訓練と思って頑張ろうと思っている。
◇◇◇
かつてないほどに集中して気配を探ってみるも、俺にはそっち系のセンスが皆無みたいで何もわからない。
ギリギリの戦いとか、常に追われているとか......多分そんな事をしないと無理っぽいですわ。
草が揺れる音がするまで、そこに生物がいるのに気付かないし、逆に植物の方が気付けるらしい。葉っぱが木から落ちてくるのには、何故か敏感に反応できている。
初期位置が生物の居ない場所だったのが原因かと推測。あそこでは、本当にのほほんと過ごせたからなぁ......
そんな俺だけど、しっかり存在感のあるヤツなら問題なく察知できるんだよね。
まぁ誰でも気付けるか......獣臭とか息遣いとかわかるくらいのヤツだし。
という訳でやってまいりました!王冠サイズのドスイノシシが!
すごく......おっきいです。このデカイノシシ、銃弾は通るのか?
まぁ......ダメだったら近接戦闘を挑むしかないな。イノシシ肉は結構過好きだから、絶対に逃がさない。
樹上で息を殺して機を待つ......気分は金塊を狙っている狂ったスナイパー。
イノシシ野郎が俺の真下を通過するのをひたすら待つ。
頭頂部へと弾丸を撃ち込めば、弾丸が通らなくても多少は脳味噌が揺れたりするだろう。現代日本スタイルの狩りを異世界で試したいと思う気持ちは、きっと誰か理解してくれるはず。
さぁ、来やがれ!!
しかしイノシシは、あっちにフゴフゴこっちにフゴフゴ......俺の真下に来ないで、地面を掘りながら鼻を突っ込んでいる。
感想は、ひたすらもどかしいとだけ......俺には、待ちの姿勢をずっと維持するのは無理なようです。
チャカを撃ち込むのではなく、チャカを鈍器にしたほうが殺傷力が高いって考えてしまう。そんな脳筋生物に成り果てています。
ダメだ。そんな脳筋狩りだと、あの子たちに示しがつかない。
も、もう少しだけ狩人気分を味わおう......
撲殺死体を見せるよりも、猟銃で仕留めた死体を出せば、しっかりと狩りをしてきたってあの子たちに言えるしね。
まだイノシシはこっちに来なさそうだし、今のうちに鑑定を。食えないのは狩りたくない。
▼マッシュボア
キノコが大好きな猪
キノコの匂いに釣られて、キノコ狩りをしている人間を襲ったりする
肉の味は濃厚で、臭みは少なく、脂はラードに最適▼
相変わらずだなぁ......食への部分では饒舌な鑑定さん。
猪肉であの子たちとパーティーをしたいです!!
あんこが味噌を苦手にしてるし、晩酌の時に俺一人でこっそりボタン鍋を食べよう。濃厚な味噌スープで、山の幸と共に頂くボタン肉は、最高に美味かったと記憶に刷り込まれている。
いや待て、冬場に囲炉裏でボタン鍋の方がソソるぞ......ぐぬぬぬ、あの子たちの戦果を見てからだな。
あぁぁぁお肉が食べたいです!!
さぁ!!早く来いやっっ!!
そこから十分ほど経ち、ようやくこっちに来た肉塊......もとい、イノシシ。
乾いた銃声が響き、倒れ伏したボタン肉の塊......じゃなくてドスファ〇ゴ先輩。
この猟銃も異世界仕様になっていたのか、分厚くて硬そうな毛皮を容易くぶち抜いた。
何はともあれ、美味しいお肉ゲットだぜ!獲物は獲れたし、狩りにも満足した。そして今......圧倒的に可愛さが足りてない。
イノシシを収納にしまって集合地点へと走り出す。
まだ時間には早いけど、ソロでの狩りはもう満足した!はやく会って抱きしめたいねん!!
集合予定地に近付くにつれて、血の臭いが濃くなってくる。
なんだろ?血抜きでもしてくれてるのかな?
「......マジやばくね?ウチの子たちマジパネェっすわ」
明王さん二人分くらいのまるまる太ったトカゲ、まるまる太ったニワトリらしき鳥、まるまる太ったよくわからん魚......
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太った生き物になんか恨みでもあんの?ってくらいに、太った生き物の死体のみが集合地点にゴロゴロと転がっていた。
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コイツらは元々太った種族なのか。
それとも太ったヤツに狙いを定めて狩っているのか。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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あの子たちが選ぶくらいだ。食いでもあるし、きっとコイツらもめっちゃ美味しいんだろうな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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そして狩りをすれば、鳥ちゃんズのレベルと上がっていると思う。
あ、だからこそセンパイと新入りのツーマンセルで狩りに向かったのか......
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俺よりも考えてるんだな......ハハッ。残念な俺に代わって、鳥ちゃんズをパワーレベリングしてくれてありがとう。
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あーあ......寂しいから早く帰ってきてくれないかなぁ。
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