第100話 仲直り

 目を閉じて寝ようと頑張っても、悲しそうにしているあんこの姿が焼き付いていて寝れそうにない。辛すぎて辛い。


 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いッッ!!腸引きずりだしてハンマー投げしてやりたいっっ!!


 桃だから内臓ねぇけど......


 人間界の方に向けてあの木をぶん投げようか。桃を食ってパッキパキになればいいんだ。


 そうと決まれば善は急げ......だ。よし、やってやる。


 全力で気配と魔力を消してから、桃の木がある方へ向けて移動を開始。


【あんこや他の子に気付かれずに、桃の木を極秘裏に処分せよ】


 ミッションスタートです!!



 何事も無く桃の木まで辿り着けた。

 自然を破壊するのは心苦しいけど仕方ないよね。うん、仕方ない事なのだよ。


 マイエンジェルを傷つけて悲しい思いをさせる原因を作りやがった異世界桃野郎は、に返り討ちにされるのであった。めでたしめでたし。


 木を引っこ抜いて幹に麻雀牌の白を、対子で突き刺す。うん、深い意味は無いよ。


 舌を突き刺して人を殺せそうな中国人拳法家っぽい人形も幹に突き刺す。これも深い意味は無いよ。


 後はソレを王都方面、帝国方面、皇国方面に狙いを定めてぶん投げる。珍しい高級な桃を食べて元気だしてね。

 どこらへんまで飛ぶかわからないけど、近くまで飛んでいれば誰かが見つけて口に入れちゃうだろう......という願望を込めて。


 全ての桃の木を処理したので、本日の隠しミッションはコンプリート。悪は滅びたぜ......


 力の限りぶん投げたので気持ちは少し晴れた。

 これで多分少しは寝れるようになっているはず。




 ◇◇◇




 短い時間だったけど睡眠はとれた。まだ寝ているお嬢様を抱きしめて撫でる。

 お願いします......起きた時にしょんぼりしてないで、元気いっぱいの姿を見せてください!


 ......この子をギュッと抱きしめていると落ち着く。撫でていると安心する。


 五分ほどそうしていたらあんこがお目覚め。今日は起きるの早かったね。


 目が覚めるまで抱きしめられていて、撫でられていた事に気付いて嬉しかったみたい。あんこからもギュッてしてきてくれた。


 よかったっっ......嫌われていなくてよかったよぉぉぉぉ!!!


「昨日はごめんね」


 そう言って撫でていると、『昨日は怒られたのが悲しかった』と、胸の内を明かしてくれた。


 ガチトーンでの制止と真面目な顔での説得が、怒っているように見えたらしい。

 今までこの子に対してそんな態度を一切取っていなかったのと、真顔でのお話......それが、敵対者に怒っている時の顔と似ていて怒られたと思ったんだって。


 あと、最初に制止させる時にちょっと威圧が漏れてたのも原因らしい。焦りすぎてそんな事になっていたのか......本当にごめんね。


 あの後ピノちゃんや鳥ちゃんズが、俺に近寄って来なかったのもこれが原因っぽいなぁ......

 空気読んでソッとしておいてあげよう......ってなっていたのかと思っていたけど、全然的外れな事を考えていたのか。


 あの子たちにもしっかり謝らなきゃいけないわな。まるでダメな男でごめんよ。


「昨日はね、怒っていた訳じゃないんだよ。あの桃には中毒性があって、もし食べてハマっちゃったら、定期的に食べないと頭がおかしくなっちゃう物だったんだよ」


 そうだったの?って感じでフンフン頷きながら聞いてくれている。可愛い。


「鑑定してその事に気付いた時には、あんこがそっちに向かって行っちゃってて、急いで止めようと思ったら......うん、ああいう風になっちゃったんだ。

 怖がらせるつもりはなかったんだけど、結果として怖がらせちゃってごめんね」


 俺が謝ると、あんこも『ごめんなさい』って言いながら顔を胸に押し付けてきた。


「じゃあもうこれで仲直りだね。普段通りにしてくれるのが一番嬉しいよ」


 空気を読んでくれたのか普通に寝てたのかはわからないけど、あんこが元通りになるまで寝てくれていたピノちゃんと鳥ちゃんズに感謝。


 起きてからずっとべったりなあんこを抱っこしながら朝飯を食べて、ピノちゃんと鳥ちゃんズにごめんなさいした。


 やっぱり威圧が漏れていた事が原因だったらしくて、あの時は怖かったと言われた。

 取り乱してごめんなさい。今後このような事が無いよう再発防止に努めてまいりますので......


 はい。気をつけます。


 ピノちゃんはしょうがないにゃあって感じで許してくれた。

 ツキミちゃんは怖いのは嫌だよってだけだった。


 ダイフクは......刀のプレッシャーよりも怖かったって言いながらこめかみを連続で突いてくる。お前、フクロウとかだろ?キツツキになろうとしないでほしい。


「痛くはないんだけど頭が揺れるから早くやめなさい。他の子がマネしちゃうでしょ!!」


 しかし......時既に遅し。


「あーもう、ほら!ピノちゃんが便乗してきちゃったじゃん......それで、なんで鼻に噛み付くんですかね?」

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ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 あー、参戦者がまた増えたよ......

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ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

「ツキミちゃんもマネしちゃダメだってば、肋骨の隙間を器用に狙ってこないで!なんか地味にダメージあるから!」

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ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 唯一の良心はあんこだけだったか......

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 と思って油断している俺にトドメの一撃がキた。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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「ねぇ、あんこはこの流れに乗っちゃダメでしょ......いや待って、ほんとソレあかん......へその穴を氷柱っぽいので刺さないでほしいんだけどぉぉぉぉぉ」

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 頭は揺れるし、鼻呼吸を止められて、鼻もムズムズしているってだけでもなんか辛いのに、地味にダメージを入れられて、マニアックな箇所を攻められてキツい。

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 骨喰さんを謹慎させておいて本当によかった。なんか指示とか出しそうだし、龍さん明王さんとかは勝手に顕現して参戦しそうだし......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 これもまぁ家族の時間か......痛みとかも甘んじて受け入れよう。

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「あぁもう......わかったわかった。

 さぁ挑戦者達よ!好きなだけやるがよい!我は全てを受け入れようぞ!!」

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 厨二病っぽい言い回しをしたのと、全てをって言ってしまった事を後悔する。

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 情け容赦無い子供たちのおもちゃになってしまった仲直りの朝でした。

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「あっ......それらめぇぇぇぇぇぇ......」

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 あの子たちが飽きるまで我慢しなきゃダメみたい......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 エスカレートしすぎるのはよくないので、ほどほどにしてくださいよ。......いや、ほんとマジで。フリじゃないっすよ。

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 なんやかんや100話まで来てしまいました。


 途中で何書いているんだろうとか、上手く表現できないとか......心折れそうになりましたが、なんとかここまでやって来られました。

ㅤ早く物語を進めろよとか思われる方もいると思いますが、基本的にダラダラ進んでいきます......すみません。


 後書きとかは余り好きではないのですが、近況ノートの方には反応が無く、見て貰えてるかわからないので、ここに書かせて頂きます。ウザかったらごめんなさい。


 ☆や♡、コメント、フォロー、PV数などの目に見えてわかる事は本当に励みになっています。本当にありがとうございます。


 上手く描ける様頑張っていきますので、生暖かく見守ってください。拙い作品ですが、これからもどうぞよろしくお願いします。



 ※桃や果物に対して思い入れのある方、大好きな方々へ、不快になってしまいましたら申し訳ございません。

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