第93話 珍客

 耐性があっても見てて何も感じない訳ではないとわかった昨日。

 少しだけだけど、人間らしい感性が残っていたことが嬉しかった。

 肉類や魚類を食べる気になれなかったので、簡単でさっぱりと食える素麺を食べた。

 その時に大量に茹でておくのは忘れない。ストックしておくのは大事。


 さっぱり系のメニューを増やしておく。面倒臭い冷水で締める作業がフルオートで出来るのはとても嬉しかった。

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 さて、目が覚めて気分もリフレッシュされている。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 テントの外に出て、骨喰さんが反省しているのかを確認しようと思ったんだけど......

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 張ってあるトラップの前、そのギリギリを見極めてちょこーんと座っている白と黒のフワフワ物体が二つある。

 大きさは白いのが肩に乗れるくらいの鳥。黒いのが白いのより一回り小さい鳥。


 多分梟系の鳥だと思う。

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 うん。すっごい可愛いぞオイ。

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 このモコモコ達からは敵意も悪意も感じない。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 観察されてるような雰囲気もなく、ただただ気になったから来てみたって雰囲気。

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 あの詐欺ウサギみたいに見た目の可愛さに騙されて、油断した瞬間に豹変されても嫌だし、強襲されても守れるようにテントをトラップでガチガチに固めてから、こっちのトラップを解除。そして鳥を鑑定。

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 ▼ルナスコップオウル

 この世界で希少なスコップオウル種

 その中でも特別希少な個体で、月の名を冠している▼


 ▼ソルホーンオウル

 この世界で珍しいホーンオウル種

 進化をして太陽の名を貰った特殊な個体▼

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 黒いのがルナ、それに白いのがソルか......どっかの火竜の希少種を思い出すな......あっちは金と銀だけど。

 このモコモコ二体はカップルさんなのかな?

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 オウル......フクロウ?でもスコップとかホーンとか付いてるのはなんだろう?

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 ......まぁいいか。攻撃されたりしなければ、モコモコしている生物は愛でる対象なのだ。

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「さぁこっちにおいでー♪怖くないよー」

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 両手を広げて呼んでみた。

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 黒い子はこちらを警戒する事もなく寄ってきて、俺の腕の中に飛び込んできた。白いのは警戒心が少し強いみたいですねー。

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 おほーーーーーー!!


 飛び混んできた黒い子やばすぎる......

 たまらん!!これはけしからんぞ!!


 手に吸い付くような不思議な手触りでありつつも、指先がフワフワの羽毛に沈み込んでいくように包み込まれる......


 あかん、魔性のボディやでこの子。


 我が生涯に一片の悔いなし......とはならないけど、こんな子に好かれるのは死ぬほど嬉しいぞ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 オレンジ色のまん丸おめめと角っぽい羽根?が耳みたいに生えていて可愛い。

 体色は真っ黒だけど、胸元と顔は白と灰色のグラデーションみたいになっている。

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 フワフワの身体を撫でると「くるるっ」と鳴き声をあげた。梟ってこんな声出せるのね。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 それにしてもこの子たちはなんなんだろうか......最初っから好感度がカンストしている様に思える。

 魔王の卵の影響だったりとかはないよな?

 ......この異世界で大規模な宴が起きるとかやめてね。ガチで。


 白い子にもおいでーと声を掛けるが、こちらの好感度は低いらしい。


 白い子は金色のクリクリおめめに真っ白ボディ。よーく見ると、真っ白ってよりは白銀って感じかな?

 こちらも角みたいな羽根があるけど、こっちの子の方がシャープ。


 懐いてくれたら嬉しいのに......太陽は闇野郎NGなのかなぁ......


 とりあえず黒い子を装備したままで、朝飯の準備をしよう。

 白い子も飯でホイホイされて警戒心を解いてくれたらいいな。

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 フライパンにチャーシューの薄切りをびっちり敷き詰めて、その上に卵を落として塩コショウ、そしたら水を少量加えてから蓋をして蒸し焼きに。

 片面カリカリのチャーシューとチャーシューの旨味が移った白身の目玉焼きが美味しい。

 チャーシューエッグは白米にもパンにも合うし、ツマミにも最適なのでこの機会にいっぱい作る。


 その横でソーセージをボイルしていく。

 レモン&バジルの物とチョリソー、オーソドックスなタイプの物を。

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 猛禽類ってなんかソーセージとかウインナーを食べそうな気がしたから、釣られてくれたら仲良くなれるかなーっていう打算に塗れてのソーセージのチョイスでもあるけど、単純に俺が好きなのもあるし、用意しておけば色々と使えまくる万能おかずでもあるから。


 さて、それじゃあボイルしたてのソーセージを味見するとしようか。できるだけ美味しそうに食わなきゃ。


 茹でたてのソーセージをパキッと齧れば、肉汁と共にスパイスの香りと肉の旨味が口の中に広がる。


 うん、いつも通り美味しい。

 俺が口にした事で毒ではない事を証明したから、未知の食べ物への警戒心はきっと消えただろう。

 俺は猛毒が入っていても死なないから、意味のある行動とは言えないんだけどね。


 ちっちゃいお口に入るサイズにカットしたソーセージを黒い子のお口へ運ぶ。


 さぁ、どうだ?


 白いのは警戒しろよって感じでホーホー言ってるけど、黒い子には届いていなかった。残念だったね。

 んー......?お、良かった良かった。

 美味しかったみたいで次をちょうだいとおねだりしてくる。可愛いよぉぉぉぉぉ!!!


 結局ソーセージをまるまる一本食べちゃった黒い子。よく食べましたねー。

 餌付けって楽しい!!


 レモン&バジルも与えてみたけども、こちらは刺さらず。

 黒い子に一番刺さったのは、なんとチョリソーだった。辛いのがイケる口なんだねー。

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「別に罠に掛けようとか、君たちに酷いことしようとしてる訳じゃないから、こっちきて食いなよ」


 未だ警戒心剥き出しの白い子へ向けてそう言い、皿の上に一口大にカットした三種のソーセージを並べたのを近くに置く。


 ......黒い子と白いのはカップルで、俺が誘惑したとか寝取ったみたいになってたりするのか?

 んな訳無いか。......まず種族から違うし、懐かれただけだし俺は悪くない。


 白いのも食欲に勝てなかったみたいで、近寄ってきてソーセージを啄みはじめた。お腹空いてたんやないかい。


 黒い子にどっから来たのか訊ねてみても、首をクリンって捻るだけで話ができない。可愛かったです。


 お嬢様とピノちゃんが起きてくるまで意思疎通は無理だなー。

 こっちの言葉は通じてないよなぁ。なんとなくニュアンスだけ伝わる感じっぽい。

 それでも一応これだけは俺の口から聞いてみよう。ダメだったら通訳を挟んでもう一度。


「君たちウチの子にならない?」


 ............しーん。


 はい、そんな訳で伝わりませんでした。

 黒い子はずっと俺にスリスリしてきているから、嫌われてはいないと思う。これで嫌われていたのなら、もう何も信じられない。

 白いのはレモン&バジルのソーセージを食べきっていた。他はあまり好きじゃなかったらしく、味見だけして放置だった。


 それから十分程声を掛けたり撫でたりしていたら、白いのもそこそこ気を許してくれたみたいで、まだ触らせてはくれないけど距離は近付いた。


 この子たちがオスなのかメスなのかわからん。

 白いのはイケメン......イケ鳥でオス、黒い子は人懐っこくて可愛いからメスって勝手なイメージをしている。

 あとでそこら辺の事はわかるかな?さすがに鳥類の雌雄の見分け方はわからん。


 ......もうそろそろ白いのも触らせてくれないかしら。

 手を伸ばせば触れる距離には居るんだし、もうよくね?

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 いいよね。もう触ってしまっても。

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 左手を伸ばして触ろうと試みる......が、ダメっっ!!



 しろいのは ひらりと みをかわした▽


 しろいの の つつくこうげき▽


 しあんのひだりてに 5のダメージ▽


 はい、無理でした。

 カウンターを仕掛けるとはやりよる......


 鷹匠みたいに、呼ぶと飛んできて腕にとまるのをやらせてみたい。

 もしウチの子たちと仲良くなれて、家族になってくれたら是非とも仕込んでみよう!!


 とりあえずあの子たちが起きてくるまでは、もう少しこの微妙な距離感の触れ合いを楽しもうかね。


 あ、ウインナーとか魚肉ソーセージとかもあげてみて反応を探ってみよう。

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