第91話 無駄な時間
待てども待てども一向に溜池から出てくる気配のないスライム達。
溜池の水嵩は少しずつ減っている事から、水没している......もしくは活動を停止して休んでいるなんて事はないと思う。
ただ単に魔力吸収ヒャッハーなんだろう。
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それにしても......なんだこの光景は。
水底から光を出せばパリピがウェーイしているナイトプールみたいな風景になるな絶対。
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飛び込んだら気持ちよさそうなんだけど、ほぼ100%海を割るアレみたいになるからやらない。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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......ガチ泣きしてもいいならやるけど。
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......はぁ、満足するまで浸らせてあげようか。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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あんこに水を追加してもらい、俺はミストシャワーを降らせる。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ヤツらが満足して出てくるまでは暇になるのでランチタイムにする事に。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
あんこと俺は焼き魚、ピノちゃんには白玉をご用意。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
さぁたーんとお食べ。おかわりはいっぱいあるから。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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食べさせて貰いたいらしく、甘えてくるあんことピノちゃん。
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今回の件では頑張ってくれたから、期待に応えなくては!
両手をフル稼働させて、あーんを繰り返す。お口を開いて待機しているのも、もぐもぐしているのも可愛すぎるッッ!!
自分の食事は糸で口に運んでいく。川辺キャンプの時の反省を活かして編み出した。
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一応自力での食事なのに、なぜか介護されているような気持ちになるが、致し方なし。
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食後にあんことピノちゃんも水遊びしたいと言い出したので、浴槽を取り出してあんこに水を入れてもらう。
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無許可でもう一つ穴を開ける訳にはいかなかったからね。広くなくてごめんねと謝って、そこで遊んでもらった。
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俺はリクライニングチェアを取り出してお昼寝。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
目が覚めたら事が進んでいることを願う。
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どれくらい寝たかわからないけど、寝た事で体はすっきり。
水遊びが終わったあんことピノちゃんが、俺の上で可愛い寝息をたてていた。
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浴槽を片付けようと思い、あんことピノちゃんをリクライニングチェアの上へ寝かして浴槽へと向かう。
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......あぁ、その水もあんこのお水だもんね。
最初に見かけた時よりも一回り大きくなったスライムの群れが、片付けようとしていた浴槽の中から逃げ出していった。
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お前らなんなん?近寄るのさえ嫌なの?
こっちは一応お前らの望みを叶えてあげたやん。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
それなのにすぐに逃げやがって......逃げ出すのはメタル系だけって相場が決まってんだよ!!ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
無理矢理はダメって約束があるから、追えないし触れない。
俺の事を馬鹿にしてるのかな?
約束がフワッとしていたせいで、あっちには抜け道がいっぱいあるけど、こっちは逃げられると手を出せない。
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......チッ......よく考えたら水を飲ませたら触らせるなんて約束はしてなかった。
あの条件なら、ある意味こちらが善意でやったみたいな雰囲気やんけ。
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それでも魔力分くらいはこちらにメリットを寄越せやと思う。
無駄に成長しやがって......
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このままだとなんか悔しい。アイツらから魔力を抜けるかな?
元は俺らの魔力だし、魔を統べているらしい俺ならなんとかできそう。
よっしゃ早速試してみよう。
............むむっ。
ヤツらの魔力を把握できた。なんとなくだけど、問題なく分離させて取り出せそう。
浴槽から真っ先に逃げ出やがった白いスライムに狙いを定める。
逃げきれたと思って気ィ抜いてやがるから、これほどお誂え向きな相手はいないだろう。
ヤツの魔力混ざり合いかけている愛しのあんこの魔力を分離。
多分コレは崩魔法の影響だろうけど、随分とスムーズに分離できた。
その魔力を抜き取ってあんこに還元。
......これも問題なくできた。あの白いスライムは何が起きたのかわからずに、魔力が抜けて混乱している。
対価を払わずにぶくぶく肥えたスライムには元に戻っていただく。
新しい技の閃きをくれた事だけは感謝してあげるから、魔力を抜いた水の入った溜池だけは残してあげるよ。
どのスライム共も、未だこちらに近寄ろうとはしていない。なんとなくだけど、してやったりってツラをしている気がする。
......はぁ。ホントにもういいや。
あの子たちが起きる前に終わらせよう。所詮スライムは所詮スライム。
その程度の知性と感性しか無かったという事だ。
ここで触るのは諦めて、道端とかで単独のスライムを見つけた時に触ろう......
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キレイさっぱり全くの取りこぼしも無く、こちらの与えた全魔力の回収を終える。
すっかり萎んで元通り。
お互いこの出会いは事故ったと思って忘れようね。
お嬢様を久しぶりの定位置に、ピノちゃんも一緒に入れてスライムのコロニーから退去。交代で見張りをしているとか言っていたから、穴を塞いでおいてあげよう。
穴がピッチリ塞がるサイズに岩を削って嵌め込む。
仕上げに速乾セメントを召喚して塗りたくる。
うん。正に匠の技。
これでヤツらはここの警備の心配をする必要無くなったね。おめでとう。
後はセメントが乾くのを、一服しながら待とう。
......はぁ。
タバコがおいしい。
コーヒーもおいしい。
冷静になってきた。
スライムには悪い事をしてしまったかもしれない。
不法侵入して訳わからん要求をし、勝手にキレて退出。
うん。頭おかしい。
でもさ、あちらの望みも叶えたんだから、最低でも要求をしてきたスライムが体を張るべきだと思うの。
これも見解の相違だろうけど。
............。
穴を塞ぐのはやりすぎかな。
あっちの被ったデメリットは溜池制作で相殺になるだろう。
今回は反省点しかないわ。
考えの甘かった俺への授業料と思って今回の事は諦めよう。
穴も戻しておこう......
さぁて......この子たちは寝てるけど洞窟探索を進めようか......
採掘をした場所まで戻り、そこから更に奥へと進んでいく。
魔王の卵を収納から取り出して眺めながら歩く。
もういっその事魔王らしく振舞ってみようかしら。
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「フハハハハハハッ!!雑魚どもよ!!魔王の前に平伏せィ!!!」
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こちらへと飛んでくるコウモリを撃ち落としながらそんなことを口に出してみた。
虚しい。
感想はその一言。
この子たちが寝ていてくれた事だけが救いだ。
しかし骨喰さんは爆笑している。
お願いしますから忘れてください......いやほんとマジで......
威厳をもっと出せ!とか、黒いオーラを出しながらもう一度言え!とか言うなぁぁぁぁ!!!
忘れろぉぉぉぉぉ!!!忘れろよぉぉぉぉぉ!!!
魔王愛用の武器になれるなんて夢のようだ......素晴らしい!!じゃねぇ!!
うるせぇよ!!ちくしょう!!
召喚して直ぐのあの時以外、ずっと傍に置いていた骨喰さんを収納して歩き出した。
散々俺を揶揄ってきた骨喰さんへの当てつけに、大鎌を取り出して。
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