第87話 ちょっと寄り道2

 昨日触れ合えなかったので、存分に白蛇成分を補給しながら待つ事15分。

 ようやく起きてきた愛しの眠り姫様。まだ少し眠たいのか、フラフラしているのがキュートです。


 大きくなったピノちゃんに対してどんなリアクションをするのか......

 それを楽しみにしていた俺だけど、おっきくなったねーと、あっさりした一言で終了してしまった。


 俺のイメチェンの時と合わせて、ナイスなリアクションを取ってくれないこの子たち。

 もう少しだけ、年相応な無邪気な一面を見せて欲しいと切に願う。


 朝食を先に食べちゃってごめんねと謝り、朝飯にリクエストされた焼き魚を食べさせてあげた。

 先に俺らが食べちゃっていた事を残念に思ったのか、ちょっと拗ねていたお嬢様が可愛かった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 拗ねちゃったお嬢様を抱きしめながら後片付けをし、目的地の山に続いていると思われる川上の方へと進み出した。

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 お嬢様は俺にベッタリくっついているので、背中をよしよしと撫でながら歩く。

 ピノちゃんは移動するのが楽になって嬉しいらしく、俺の前をスルスルと進んでいる。

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 ピノちゃんは前に比べて格段に動きが滑らかになって、スピードが上がっている。

 大きさも、日本で見かけたら「うわぁ......蛇が出たよ......」となるくらいに立派に蛇をしているサイズ。

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 健やかに成長していることは喜ばしいけど、最初に見た時くらいの大きさにはならないで欲しい。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 せめて首に巻きつけるパフォーマンスをしている映像くらいのサイズで成長が止まってください。よろしくお願いします。


 どのくらいまで大きくなるのか......

 そこが心配なので前方を進んでいるピノちゃんに確認をとってみる。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

「ピノちゃんって最終的に、どれくらいのサイズにまでなるのか自分でわかったりする?」ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤ


 そう訊ねると、動きを止めて考え込むピノちゃん。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 尻尾の先に顎を乗せて考えているその行動が、妙に人間臭い......

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 長々と考え込んでいたピノちゃんが口を開いたが、よくわからない......との事だった。

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 でも後何回かは脱皮できそうなんだって。

 これ以上は大きくならなくていい、脱皮はしなくてもいいと思っているらしい。


 どうして?と訊ねると、俺に乗ったり、ポケットに入れなくなるから!だって。

 可愛すぎて鼻血出そう......もしおっきくなったとしても、俺頑張るよ!!

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 ......我慢して体に悪影響がでないのかな?俺もこのサイズで固定して欲しいとは思っているけど、無理はしないでね。

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「そっか、教えてくれてありがとね」


 俺がお礼を言うとまた進み出したピノちゃん。大きくなった時の対策も考えていかないとな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ずっと一緒に暮らしていくんだし、快適に過ごせるようにしなくちゃ!

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 そんな決意を決めながら歩みを進めていく。

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 途中で昼休憩を挟みつつ、しばらく川に沿って進んでいると、遠くに滝が見えてきた。

 かなり大きい滝で、その上に進むには崖を登っていかなくてはいけなそう。

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 他に進める道が無かったら人生初のロッククライミングになりそう。

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 腕だけ......いや、指だけ......違うな。

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 爪だけで登れそう。

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 楽しそう!オラワクワクすっぞ!とか思う前に、こんな感想が出てくる。

 人だった頃から大幅に感性がズレてきていて笑えてくる。

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 とりあえず今日はそろそろ夕方に差し掛かる。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 時間的に本日中の崖越えは無理そう。

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 とりあえず滝壺まで歩いていって休めそうな場所を探そうか。

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 二時間程で到着した。

 そう、到着したんだけど......水の音がやべぇ。


 すっげぇうるさい。

 日本じゃまずお目にかかれないバカデカい滝にテンションが上がっていた俺は、冷静になるまでその事を忘れていた。

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 大きな滝だもんね。そりゃうるさいわ。

 防音の膜を張らないと寝る事は不可能ですねぇ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 ......明日ゆっくりロッククライミングしようと考えていたけど、今日この崖を越えちゃおう。

 うるさい水はちょっと堰き止め......るのは無理そうだから、上の方で収納して、下の方で放水しよう。


 出来そうな気はするけど、ちゃんと出来るかな......?


 はい、上手に出来ました。

 これなら此処で一泊できるわ!と思ったけど、そこは叶わなかった。


 仕舞うのと放出するのを同時にやるのは、意識していないと無理。

 寝た瞬間に放出が止まって、下流に影響を出してしまう。


 うし!急いで崖を登ってしまおう。

 そう決めてからは行動は早かった。あんこをおんぶ、ピノちゃんには肩に乗ってもらって崖登りスタート。

 意外と凹凸がしっかりしているので登りやすくて、軽々と登っていける。


 ものの五分足らずで中腹に辿り着いた。

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 滝の水が顔にかかるのが鬱陶しかったので、先程の方法で水の流れをキャンセルさせる。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 下で一度試した時にキチンと見上げていれば、気付けていたと思う。

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 ......どうやらお約束の展開が待っていたみたいで、滝の裏の洞窟を発見してしまった。


 本当にこんな展開あるんだなぁ......


 お約束の展開ですよ感全開の怪しい洞窟。

 俺的にはちょっと気になるんだけど......どうしよう。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 お嬢様とピノちゃんに確認。


「この洞窟に入りたいと思う?それとも入りたくない?」


 お嬢様はどっちでもいいよーって意見で、ピノちゃんは入ってみよう!と乗り気だった。俺も入ってみたいと思っていたので、洞窟に入る事に決定。


「じゃあ俺も入ってみたかったし、此処に入る事にするね」


 そうお嬢様に伝えると、このまま抱っこしてて!と申し付けられる。


 もちろんでございます。


 とりあえず中に入るまでは背中で我慢しててね。

 さっきまで水が流れていた箇所は滑りやすくてちょっとヒヤヒヤしたけど、無事に洞窟まで到着。


 滝の流れを元に戻して奥に進もうと思ったけれど、滝の音が全然気にならなくて驚いた。


 どういった原理で静かになっているのかはわからないけれど、気にならないのなら一旦此処で休んで、明日から洞窟内を探索しようと思う。


 その事をお嬢様とピノちゃんに伝え、了承を得たので一泊することが決まる。


 中は少しだけ湿っていたので、レジャーシートを広げてその上にお嬢様とピノちゃんの寝床を作成していく。


 お嬢様とピノちゃんは完成した寝床の方には向かわずに、俺にくっついて離れようとしない。

 クッションを取り出してそこへ座る。右肩にピノちゃん、胡座をかく俺の足にすっぽり収まるあんこ。


 こうして甘えてくれるのが本当に嬉しい。


 そのままご飯をおねだりされたので、食べさせてあげる。

 俺の夕飯はこの子たちが寝た後だなぁと覚悟しながら、ご飯を与えていく。


 大きくなったピノちゃんの食べる量が倍近くまで増えている。


 細い体なのによく入るなぁ。ぽっこりお腹になったりするのかしら。


 そう思いながらどんどん追加していったけれど、途中でストップがかかる。

 こういった所の管理はしっかりしてるんだよねこの子......残念なり。


 満足したピノちゃんは肩の上でリラックスしだす。

 不安定な場所なのにリラックスできていて凄いと思う。


 お嬢様もご飯に満足したらしく、食べるのを止めて俺のお腹に頭を擦りつけている。嬉しいんだけどくすぐったいから早めに止まってほしい。


 慈しむように背中からお尻にかけてを撫でていく。

 空いているもう片方の手でピノちゃんも撫でる。体勢がキツいけどそんな事は些細なことだ。


 お嬢様とピノちゃんが寝るまでの間ずっとイチャイチャしながら過ごす。


 愛しい子どもたちが幸せそうに寝ている横で......暗い洞窟の中、俺は一人寂しくチ〇ンラーメンの煮卵トッピングを啜った。

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