第85話 ちょっと寄り道

 特別ゲストに骨喰さん、明王さん、龍さんをご招待して魔法の出来具合いを見て判定をしてもらう事になりました。


 さて、では始めましょう。


 闇魔法のカーテンに幻影を重ねていたモノをベースにして、幻影を弄っていく。

 あんな事良いな、出来たら良いな筆頭の光学迷彩を試してみる......


 ダメでした......これは多分光魔法の領域。そちらを習得しないと無理っぽい。


 次に認識阻害......


 一応出来たけど、そこに何かが居るってのはわかるらしい。上手くいかないもんだ。


 次は違う映像を相手に見せるように......


 CGや合成を見ている感じになった。それもB級のパニック映画みたいなお粗末なヤツを。


 上手くいかない......


 いや、待て......そんな高クオリティな偽映像を求める必要はない。

 相手からこちらを見られなくすればいいだけなんだ。


 覗き見スキルを妨害するだけでいいんだから、寝る時にテントを張って、それに闇魔法のカーテン。

 仕上げにCGでB級映画並のクオリティで何かを上映すればいいんだ。


 出来る事なら逆探知とかをしたかったけど、原理がさっぱりわからずに断念。

 相手側の魔力さえわかれば逆探知できそうだけど......スキルを使ってくる相手だと無理そうです。


 残念でごわす。しかし覗き対策は立てられたから、一応は良しとしとこう。

 骨喰さん達からは多分大丈夫だと評価をもらえた。


 見たい物をピンポイントで見れる能力なら、コレで防げないだろうからね......

 コレを突破された時は、その時にもう一度考え直そう。


 付き合ってくれたお礼にと、上空へ向けて数発斬撃を飛ばしてから寝床まで戻り、目を閉じて休んだ。


 眠れなくても目を閉じて横になっていれば、一応体と頭を休められるからね。




 ◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ




 結局あの後は眠れなかったが、朝日が昇ってきたので動き出す。

 思っていたよりも休めた気がしているので、今日の移動には差し支えのないコンディション。


 朝飯の準備に取り掛かる。

 収納を漁ると最初の街で購入したフランスパンがまだ余っていたので、それを使ってあんバターフランスを量産していく。


 表面を軽く炙ったあとに、切り開いてバターとこしあんをたっぷりと挟んでいく。

 つぶあんとマーガリンを挟んだもの、こしあんと白玉を挟んだもの。

 そして......外側にもバターを染み込ませ、中に生クリームとバターとこしあんの背徳フランスも作った。


 こうなると、フレンチトーストも欲しくなるけど......収納は時間停止しているので、染み込ませる作業が出来ない。

 一日休みの日があったらフレンチトーストを浸けておこうと思っている。


 フランスパンver.と食パンver.の二種類を作って楽しんでやるぞ!


 その後は、起きてきたお嬢様とピノちゃんと一緒に朝ごはんを食べてから、今日も山道を進みだす。


 アップダウンを繰り返す道を、お散歩感覚でひたすら進んでいく。


 どんな異常気象や地殻変動が起きたら、ここまで不思議な道が出来上がるんだろうかねぇ。


 三時間ほど歩くと、ようやく待望の変化が訪れる。


 別れ道 が あらわれた▽


 右側は上り坂、左側はゆるやかな下り坂だった。


 俺一人で進むなら迷わず右を選ぶけど、一人じゃないのでお嬢様とピノちゃんに意見を聞いてみる。

 もしトラブルがありそうなら回避してくれると思うし。



 結果は二対一で左の下り坂が採用になりました。

 俺の感覚なんて全く当てにならないから、別に気にしてなんかいない。


 きっと左の道へ進めば、ココロオドル出来事が起きるんだろう。

 ここからはピノちゃんも自分で動くらしく、胸ポケットから出て行ってしまった。

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 ......ちょっと寂しい。

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 けど早く行こうと急かされてしまったので、諦めて俺も進み出す。

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 緩やかな下り坂をピノちゃんのペースに合わせて下っていく。

 水が流れる音が微かに聞こえてくるので、川がこの先にはあるみたい。

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 うん。川辺でキャンプも風情があっていいな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 多分川沿いに進んでいく事になると思うから、今日の夜が楽しみ。

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 思っていたよりも道がうねうねしていて長い。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 二時間くらいかけてようやく坂道が終わり、お次は平らな道が続いていた。

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 昨日から山登りしている気分に全くなっていない、不思議なハイキング。

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 30分程進むとようやく川へと辿り着けた。

 川幅は結構広くて、水深もかなりありそう。綺麗な水の流れる穏やかな川だった。

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 ......迅竜とか青熊獣とかが出てきそうな雰囲気の場所。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 この光景を見て感動している俺なぞ気にせずに、川上の方へと迷わず進んでいくピノちゃん。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 もう少し浸らせて欲しかった。まぁこれからいくらでも見れるので、景色を見ながら追いかける。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 途中であんこが抱っこをせがんできてくれたので、抱きしめながら川沿いを歩いた。

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 抱っこして移動が最近は少なかったので、これはかなり嬉しい。

 鼻歌を歌いながらスキップしてしまいそうなくらい舞い上がってしまっている俺......だが、全力でそれを堪える。

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 しばらくモフみを堪能する事に集中しながら歩いていたら、ようやくピノちゃんの歩みが止まった。

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 それは一本の大木の前。

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 日本ならばデカい神社の境内に鎮座し、注連縄が巻かれ、御神木と呼ばれていそうな木だった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 今日はここで泊まろう!!と、珍しく感情全開で鼻息を荒くして訴えてくるピノちゃんに戸惑う俺。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 あんこに確認を取ってみると、そうしてあげてーって言われた。

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 この前の泉のような事が起きないで欲しいなぁ......と思いながら、この場所で一泊する事を了承した。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ピノちゃんは、ありがとー!!って言いながら俺に飛びつき、ほっぺにチューをしてくれた。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 今すぐ喜びの声をあげてしまいそうな程にテンションは爆上がりしている俺だけれど、頑張ってそれを表に出さず「心配させるような事だけはしないでね......」と、ピノちゃんの頭を撫でながらそう告げた。

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 大丈夫だよ!と胸を張って言い放ったので、とりあえず信用する事に。

 この場所の何処にそこまで惹かれる物があるんだろか......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 その要因は、いつも通り俺にはわからなそうだ。

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 ロッキングチェアを収納から出して、お嬢様の休憩スペースを確保。

 ブランケットを敷いて、その上に乗せてあげる。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 ピノちゃんは大木の方を気にしながらも、あんこと一緒に椅子の上で寛ぎだした。

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 俺は川と大木の中間くらいの場所をキャンプ地と定めて準備を始める。

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 もうすぐ日が暮れてくる頃合いだから、たまには暗くなる前に準備を全て終わらせてしまおうって魂胆だ。

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 今日のテーマは川沿いのソロキャンプ。

 実際はお嬢様とピノちゃんがいるからソロじゃないんだけど、そういったテーマを掲げる気持ちが大事。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 黒のワンポールテントをお取り寄せして、糸を活用しながらサクサクと設営していく。

 大きさは、俺と大型犬サイズのお嬢様とピノちゃんが余裕で泊まれるサイズ。

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 最後にランタンを設置して完成。

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 ......うむ、これはいい雰囲気だ。寝る時は、今日の朝に練習した幻影を掛けておけば大丈夫だと思う。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 焚き火をしながら、初秋の夕暮れ川辺キャンプを堪能していきましょう。

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