第84話 VS大自然

 ゆったりと登山を......って言うよりは、ハイキングっぽい登り坂を楽しんでいる俺です。どうもこんにちは。

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 現在は山に入ってから一時間ほどが経過し、険しくも何ともないけれど、手付かずの荒れた道を進んでいる。

 少しずつ周囲が大自然の中ですよーってなってきていますね。

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 びっしりと苔が生えたロードローラーくらいの大きさの岩とか、よくわからない蔦が絡まりまくっている大きい木とかがあちらこちらに......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 一般的なペースよりかは、俺たちの移動スピードは早いと思うんだけれども、たった一時間程度でジャングルの奥地みたいな光景が広がっている事に驚きを隠せない。

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 山のクセにジャングルみたいになっているのは、ちょっと納得がいかねぇ。

 まだバリアフリーかよってくらいのなだらかな坂だから、標高的にはまだ全然高くないので仕方ないんだけどさぁ......

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 まぁ文句を言っても現実は変わらないので、大人しくジャングルの中を進んでいく。

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 歩いていると、森の中を進んでいるよりも色んな発見があった。意外と楽しいかもしれない。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 虫が多いのがかなりのマイナスポイントだけど。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 インパクトの強かった物をご紹介。


 先ずはラフレシアみたいなドデカい花......

 見た目ラフレシアのクセしてすっごい良い匂いを放っていた。虫が物凄く集っていて、ボトボト落ちていっていた。

 きっと毒香なので近寄らずに遠目で観察して終了。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 次に食虫植物のウツボカズラっぽいもの......

 寄ってきた羽虫を誘い込むツボみたいのはそのままだけど、トカゲや野ネズミを蔓で捕まえて、強制的に消化液にぶち込んで即消化しているのは見ていて怖かった。


 怖かったと言えば、地面に擬態していた巨大なハエトリソウっぽいヤツがダントツ。

 見た目の違和感は全然無かったのがまた恐ろしい。

 その上に乗ってしまった瞬間に噛まれる......人なんかは余裕、パーティ単位で食えるサイズ。

 宝箱に擬態しているミミックの、トラバサミ版みたいだと思った。

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 上からドスレーシア、ダイジェスポット、ミミクリィトラップと言う名前だった。

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 やべぇ植物ばかりだけど、見るだけだったら面白いんだけどね。

 ......ぶっちゃけ何かにつけて罠にかけようと狙ってくる植物しかなかった。


 そんな感じの、殺伐としすぎているジャングルとなっております。


 あの子たちはそれらを華麗に避けて進んでいるから、一番罠に引っかかりそうなカモは俺っていう悲しい現実。

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 そして、厄介なのはそれだけじゃなかった......

 下にばかり気を取られていると、上からも襲いかかってくる。

 大自然の恐ろしさは、こちらが油断しているとすぐ牙を剥いてきます。

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 御中元で貰うハムみたいなサイズのヒルが、頭上からボトボトと落ちてきた時は、このジャングルを消し飛ばそうかと思った。


 お嬢様が瞬時にそのヒルの大群を凍らせて対処してくれたお陰で、森林破壊は未遂で終わったけど心にトラウマを刻まれた......


 後は、熱を感知する木の実。

 頭上から酸液を撒き散らす果実の生った木は悪意しか感じられなかった......


 それと......ボッコボコにされた女性を中心に配置したさっきのハエトリグサモドキもいた。


 酸液はピノちゃんが蒸発させてくれて、女配置のハエトリグサは俺が冷めた目で見て終わった。

 正直ココはダンジョンよりもダンジョンしてるって思うの......

 あの女性を配置したハエトリグサモドキなんて、ジャングルっていう場所的な違和感を感じる以外は、クオリティとかやばかったもん。

 マトモな感性を持っていてオツムが足りない人間なら多分余裕で引っ掛かると思うし、野生動物とかでも弱っているエサと勘違いして襲いそう。

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 ヒルと酸液の木は、速攻で滅されたので鑑定はできなかった。

 女配置のハエトリグサモドキは鑑定できたけど......ミミクリィハニートラップっていうなんとも言えない名前だった。

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 これからも生存競争を勝ち抜いていってください。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 面白いんだけど、ストレスが溜まる。何も信じられなくなりそうな不思議ジャングルの中を進んでいった。


 こうして俺の疑心暗鬼のレベルが上昇していくんだなぁ。

 何事も先ずは疑ってかかるのが大事と、大自然が指南してくれている。



 二時間ほど早足で進んでいると、木の成分が薄くなってきて傾斜がキツくなってきた。


 ジャングルの中で一泊するという最悪の事態を免れた事にホッと一息。

 あんな場所で一泊したら気が休まらないなんてモンじゃないから助かった。


 ......絶対に、狡猾にこちらの寝込みを襲うヤツらがいるもん。360℃みっちりと罠を張らないと無理。

 それをしていたと想定して考えてみても、なんか得体の知れない不安が残った。


 お嬢様とピノちゃんも、ヒルが落ちてきたあたりから俺に引っ付いてきたからねぇ......

 ジャングル最後の罠があるかもしれないと気を張って進んだが、呆気なく抜けれた。


 ジャングルを抜けた先は、足場が最悪でアップダウンが激しい山道だった。

 ジャングルで精神を削って、この山道で体力を削る魂胆ですね。

 マジでダンジョンみたいな厭らしさ......フィールド型のダンジョンなのか?そう疑ってしまうけど、ジジイのダンジョンに入った時みたいな、それっぽい感じはしない。


 とすると、コレはガチの自然って事か......自然って恐ろしいなぁ。


 上がって下がってを繰り返しながら少しずつ山道を進んでいったけれども、終わりは見えずに夕日が沈んでいってタイムアップ。

 最高に休むのに適さないスポットでの一泊が決定してしまった。


 快適さは諦めて、斜面の少ない箇所を探して腰を下ろして火を熾す。

 あまり物を出せないから簡素になってしまうが、場所的に仕方ない。


 この子たちの休憩スペースだけはガッチリ確保しなければ!という使命感に駆られて、しっかりと整地してから寝床を整える。

 体の小さいこの子たちならば快適に過ごせるだろう。


 今日は二度も精神が殺される寸前で助けてもらったので、感謝の気持ちを存分に込めて作成した。


 焚き火を囲んでの夕食。

 お嬢様とピノちゃんのご飯はいつものジャーキーとお餅をリクエスト。


 あーんして食べさせてあげる。

 最近コレを望まれるのが多くなってきた。食べてる時に嬉しそうにしているのが可愛いからいつでもやりますよ!!


 俺は、竜田揚げと唐揚げを食パンに乗せただけの簡単な唐揚げサンドを食べた。


 夕飯を終え、風呂に入ってまったりしてから就寝。明日はもう少しまともな場所で野営できたらいいなぁ。




 ◇◇◇




 山生活二日目、視線を感じて目を覚ます。

 寝起きで上手く働かない頭を無理矢理に働かせて周囲を探知するも、それらしき反応は何もなかった。


 なんか一方的に見られていたって事実が気持ち悪い。

 しかし今回は相手が一枚上手だったと諦めて、次にまたやられたのならば許さん!とリベンジを誓い、二度寝しようと目を閉じる。


「寝れねぇ......」


 二度寝しようとしていた俺だけど、無理矢理頭を働かせた影響で寝れなかった。

 まだ陽も出ていない時間帯なのに......

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 何処の誰かは知らないけど、この恨みは絶対に忘れないからな。

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 眠れないので、この事を骨喰さんに相談してみる。この場所だと振れないので申し訳ないけど。


「骨喰さんは、俺に居場所を察知されずに観察する方法って何か思いつく?

 それと、こっちを覗かれていたのに骨喰さんは気付いてた?」

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 そう訊ねてみたけれど、知らんと返された。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 そっかぁ......知らないかぁ......

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 がっかりしていた俺だけど、遠見のスキルかそれに似たスキルを使ったんじゃないのかと追撃があった。

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 あー......自分のスペックだけで考えていた俺だったけど、スキルとかの可能性があるのを失念していた。

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 それさえ解れば対策の立てようがある。

 モヤモヤが解消したので、骨喰さんにお礼を言って魔力を大量に込めて刀身を拭いた。

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 さて......あの子たちが起きるまでの時間を、遠見とか千里眼系のスキルに対抗する策を考えながら時間を潰しましょう。

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