第83話 いざ登山

 あぁ......今日の夕飯の時間はとても素晴らしかったなぁ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 俺が食べていると、お嬢様とピノちゃんの両方が、俺に甘えてきてくれてヤバかった。

 料理が乗ったお皿を俺の前まで持ってきて、目をキラッキラさせながら口を開けて待機している姿とか......アレは鼻血モノでしたよ。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 料理を食べ終わった後は、俺の膝の上で眠りだしたお嬢様と、一緒に晩酌をしてくれたピノちゃん。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 至福な時間をありがとうございました。


 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 人間でも同じ事ができると思うけど、圧倒的に癒しの力が足りない。

 家族を作れば似たような幸せを得られるとは思うよ?でもこんな感性の俺が、夫婦関係や子育てとかを上手に出来る気がしない。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 そして良い人間......いや、好きな人だったとしても一緒に生活をしていくうちに、どんどん悪い面が見えてくる。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 慣れてくると良い面を見なくなり、悪い面ばかりを見るようになるって云う人間の習性が悪いんだけどね。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 そんな事で不和になったり、生活リズムや環境を乱されるのならば、最初から求めなければいい。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 ずっと一緒に、それも仲睦まじく生涯を送れる人間は幻想だと俺は思っている。そんな人たちもいるのはわかっているんだけど、俺には無理だ。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 今の俺には幸せしかない。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 俺の傍には、この子たちだけ居てくれれば幸せだ......。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 わざわざ異物なんかを求める必要がない。入り込む余地もないのだから。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ピノちゃんもお眠になった後は、寝床に運んで料理のストックに精を出した。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 揚げ物が充実してきているから、今度料理ストックタイムではさっぱり系のおつまみメニューや、一品料理系を充実させなきゃなぁと考えながら揚げ物を続けていく。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 肌に当たる秋の空気が、揚げ物をして火照った体に気持ちいい。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 揚げたての唐揚げの誘惑に負けてつまみ食いをしてしまう。


 ......そこからなし崩し的に、揚げ物パーティー延長戦をソロ開催。


 全てを揚げ終わるまでに、全種類つまみ食いをしてしまった。

 そこにビールを追加して、普通に一人で居酒屋風に晩酌をしてしまう。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ......タコの唐揚げがイケない。アレのせいでブレーキが吹き飛んで止まれなくなった。

 明日胸焼けしないことを祈ろう......

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 油臭い体をシャワーで流して、愛すべき天使たちの近くで眠りについた。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 ◇◇◇




 朝になり、スッキリとしたお目覚め。

 胃もたれや胸焼けはしていなかったので安心する。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 身体をほぐす為に伸びをしてから火を熾してお湯を沸かす。


 コーヒーを煎れて飲みながら、川魚を焼いていく。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 お嬢様の好きな物を、望んだ時にいつでも食べさせてあげられるよう、今のうちに準備しておこうという魂胆だ。



 量が多いので、急いで焚き火をもう一つ追加。

 朝っぱらから大忙しだけれど、こんな忙しさなら大歓迎。


 自分の愛する者の為に働くのなら全然苦にならない。

 生活する金を稼ぐ為に、イヤイヤ働く機械になんて......もう二度となりたくない。


 ヤリ甲斐のある仕事に就けていたのなら、気の持ちようもまた違ったかもしれないけどね。


 第一陣が焼きあがったので収納に入れて、また新しい魚を焼いていく。



 第三陣が焼きあがったところで、ウチの天使たちがお目覚め。


 目が覚めてすぐに鼻をヒクヒクさせた後、俺が何をしているのか理解したんだろう。

 焼いている俺の背中に飛びついてきて、焼き魚に視点を固定しているお嬢様。


 お魚が嫌いじゃなければ、魚の焼ける匂いって暴力的に感じるし、耐えるのが難しいよねー。


 お嬢様とピノちゃんに朝の挨拶をした後、朝ごはんにする事に。


 お嬢様には焼き魚を二匹、ピノちゃんには煮卵と焼き魚を四分の一、俺は焼き魚の残り四分の三と白米に味噌汁。



 やっぱり焼き魚は美味しいわ。こうなるとこっちの海の魚も気になってくるなぁ......


 魔族領域の方にも海とか無いかしら。

 川魚は日本に居たヤツに似てたから、きっと海の幸も似ている物が手に入るかもしれない。


 お取り寄せも出来るけどやっぱり気になるじゃん?もしかしたら異世界効果であっちの物よりも美味しかったりする可能性もあるし!


 よし、また楽しみが増えた!もし無かったのならそん時はそん時で。


 朝からテンションが上がった。今日はいい日になりそうだ。



 お嬢様とピノちゃんは満足そうに寛いでいて可愛い。

 俺もご飯を食べ終えて後片付けを始める。


 タープをそのまま収納するってのを試してみると、ありがたい事にそのまま収納された。


 もう一度出してみる......



 もう一度ペグ打ちからやらないとダメだった。まぁそりゃそうだよね。


 もう一度収納して片付けは終わり。後は準備するだけだ。

 準備をしているとお嬢様から服を着せてとリクエスト。


 久しぶりにあのエンジェルフォルムが見れるぞ!!

 服はあまり着たがらないから、お嬢様の自主性に任せた。嫌がっているのに無理矢理とかは鬼畜の所業だ。


 バッチリおめかししたお嬢様はとても愛らしい。

 あぁ......エクセレントですよ!アラクネメイド(煩)はいい仕事してくれたわマジで。


 ピノちゃんの首にもリボンを付けてあげる。

 めっちゃ可愛いよ!とべた褒めしたら、お嬢様は誇らしげにしていて、ピノちゃんは珍しく嬉しそうにしていた。


 心が洗われるようだ......汚い俺を浄化してくれてありがとう。


 記念に皆で記念撮影をしてから出発した。



 ◇◇◇



 人間側から見えないように森の中を進んで山の方へと向かう。


 楽しいハイキングのお時間です。前方に見える山の方を向いてしっぽブンブンなお嬢様。


 はいはい、わかってますよ。さぁ行きましょうねー!



 そう言うやいなや、駆け出していくお嬢様。元気だなー。


 ピノちゃんは地面を這って進んでいく。

 俺はゆっくりと、その後を着いて歩いていく。



 その道中、色々と試したい事があるので大きめな木を選び、十本ほど伐採して収納に入れていく。


 その際に使用したのは大鎌。コイツにはまだ魂吸わせてないのに、既に異常な斬れ味をしている。


 あのジジィが使っていたのをそのまま引き継いでいるのかな?

 そこらへんはよくわからないけど、斬れ味がいいって事だけはわかった。


 大鎌を振るっているとピノちゃんから熱視線を送られる。どうやらこの子は大鎌を使っているのを見るのが好きらしい。


 ......その事は嬉しかったんだけど、骨喰さんが少し不機嫌になって怖かった。


 大丈夫、ちゃんと君も使うから安心してください。

 というか君がメインで大鎌がサブだから。


 なんとか宥める事に成功。

 落ち着いてくれたので、森歩きを続けていく。


 まぁね、うん。いつも通り。

 そのまま何事もなく森を抜けて山に到着。


 整備も何もされていない山なので最後まで自然たっぷり。



 山登りになるけど移動方法をどうするかの確認を取る。

 お嬢様はそのまま歩いて登って行くと言い、ピノちゃんは疲れるまでは自分で進むと言ったので、その通りに進むことに決まった。


 ピノちゃんのペースに合わせながら山登りを開始する。

 急ぐ必要なんてないから、楽しんで進んでくれていいんだからねと声をかける。


 スルスルと進みながらコクッと頷いたピノちゃん。


 お嬢様は俺の隣を歩いている。前回の山登りが楽しかったのか、山登りに対して最初っからテンションが高い。


 前回の山もかなり高かったも思うけど、今回の山はそれの比じゃない大きさだ......


 どれだけ掛かるかわからないけれど、冬になる前までには抜けよう。

 2ヶ月半くらいで、あのめっちゃ美味しい牛をどうにかできればミッションクリアとなる今回の山登り。



 まぁ真冬でも余裕で生き残れるのは、ジジイのダンジョンで立証している。

 でも冬はまったり過ごしたいからなるべく早く終わらせられたらいいなぁ。


 頑張ろうねーとあんこに声をかけて、ピノちゃんを追って山を登っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る