第62話 倖時間とお勉強回

 俺の周囲をクルクルと回遊するのがかなり楽しかったのか、10分くらいそれを続けていたお嬢様。


 楽しそうにしているお姫様が可愛くて、満足するまでそれにずっと付き合っていた。

 ギリギリ逆上せずに済んだけどちょっとフラつく......

 お姫様に心配をさせる訳にはいかなかったので、平然を装い、抱っこして湯船からあがった。


 俺と一緒に過ごせたのが嬉しかったみたいで、ずっとしっぽをふりふりとしながらぴったりとくっ付いている。


 どのモードのあんこも甲乙付け難いほど可愛いが、敢えて選ばなきゃならないと言われたのなら、俺は甘えんぼモードが一番可愛いと思います。


 風呂上がりで暑いので、お嬢様に氷を頼んでから収納からある物を取り出そうとする。


 何をするかを即座に察したお嬢様は、俺の膝の上でお座りしながら氷を空中に待機させている。かわいいわぁ。


 さぁかき氷を作るよー。


 氷を貰って、マシンにセット。手動でシャリシャリと氷を削っていく。あんこの好きなブルー〇ワイ味のシロップを掛けてあげて完成。どうぞ召し上がれ。


 今日の俺は気分的に練乳小豆。


 火照った体に染み渡る氷の冷たさが気持ちいい。練乳の濃い甘みを小豆の食感と風味、そして氷の水分がまろやかにしていく。


 次にかき氷をやる時は宇治金時にしよう。白玉も乗せたい。

 白玉はなんとなくだけど、ピノちゃんが食いつきそうだな。


 ......それにしてもキーンってしないあんこが羨ましい。凄い勢いで食べている。




 俺はただいまキーンとしている。



 ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙頭痛いィィィィ......これはレジストしないのかよ......俺のスキルのバカ野郎ォォォォ!!


 突然頭を抑えて悶え始めた俺の事を、不思議そうに見つめてくるお嬢様。

 大丈夫、心配ないよ......これはただの試練だから......


 ぐぉぉぉぉ......


 体の芯まで暑くなっていたから今日はイケるだろうと、根拠の無い自信が主張してきやがったせいだ......



 少し経ってようやく苦しみから立ち直った俺。今度はゆっくりと食べ進めていく。

 先に食べ終わって満足そうにしているお嬢様の口に練乳小豆を運ぶ。


 嬉しそうに食べてくれたが、味はブルーハ〇イの方がお気に入りらしい。


 かき氷を食べる事より、俺の手で食べさせて貰う方に喜んでいた。

 最近は食べさせてあげてなかったからね......ごめんよ。


 俺の好みの品はこの子たちに刺さらないってのがちょっと寂しい。いつかピンズドなのを見つけてやる!!



 俺も食べ終わってからは、膝の上にお姫様を横たわらせて、新しく購入したユラユラと揺れる椅子に座ってまったり。

 椅子の揺れに合わせてしっぽも揺れているのがかわいい。


 お姫様はこの椅子が気に入ったみたいでかなり嬉しそう。


 揺らしてみたい!やらせて!とおねだりされたので、俺は椅子から降りてお姫様を椅子に座らせてあげる。


 椅子にお座りしているあんこは、大型犬サイズになって楽しそうに椅子を揺らしている。


 あー、この椅子を購入してよかった!!!

 満足そうにしているお嬢様を一枚撮ってから窓際に行ってタバコに火をつけた。


 これからいっぱい好きな物や楽しめる物を増やしていってほしい。でもこの子たちの一番は俺であってくれ。



 ピノちゃんはまだ寝ているし、朝飯はもうちょい後でいいか。

 コーヒーを用意して、窓際でゆっくりと過ごす事に。



 そこから30分程ダラダラとしていたらピノちゃんが起きてきた。

 寝起きでまだ覚醒しておらず、ふわふわしているピノちゃん。ポケーっとしていてかわいい。


 なんか危なっかしいので、手のひらの上に乗せて覚醒するまで撫でる。


 まだ眠いみたいでなかなか起きない。可愛いのでしばらくそのままでいてくれてもいいよ。


 そうして撫でていると、突然ピノちゃんが指に絡み付いてきた。

 ビジュアル系の人が装備してる指輪みたいになってる。なんか可愛い。


 こんな姿になっているのは初めて見たし、なんとなく外したくないのでそのまま起きるのを待つ。


 お嬢様は満足したようで、椅子から降りてこっちに向かってくる。小さくなって俺の膝に飛び乗ってきてゴロンと転がる。

 ピノちゃんが絡み付いていない方の手で背中を撫でてあげると、嬉しそうに一鳴きしてしっぽをユラユラさせている。


 蛇のこの行動は何か意味があるんだろうか。あっちにいる時にキチンと調べておけばよかった。



 そこから十分くらいしたらシャキッとしたピノちゃん。寝惚けていた時の事は聞いていない。寝惚けていた時の行動を俺が聞いて、もしそれを恥ずかしがって俺に素っ気ない態度をとるようになったら悲しすぎて泣く。


 それと完全に二度寝モードに入った時に、絡んでいる力が緩んでしまい、指から離れてしまったのは残念だった。


 皆しっかり覚醒したので朝食を頼み、食事しながら今日の予定を話す。



「今日の俺は調べ物をするから多分ずっと暇にさせちゃうと思うんだけど、どうする?この部屋に残って自由に過ごしてもいいけど」



 ポケットで寝てるよ。とピノちゃん。

 一緒に行くよ!とあんこが言った。


 ゆらゆらする椅子を気に入ってたし、ここで寝てるとか言うと思っていたけど、一緒に来てくれるみたいで嬉しい。

 今日一日窮屈な思いさせると思うけどよろしくね!と抱きついて頬ずりした。


 ホテルの朝食バイキングにありそうなメニューの朝食を食べ、出発の準備をする。



 早く窮屈な人間界から抜け出そう!頑張ろー!珍しくポジティブになって宿を出た。

 ピノちゃんはいつものポケットの中。終わったら起こしてねーと言って入っていった。


 お姫様の事は抱っこして外を歩く。ギュッとしがみついてきているのがとても嬉しい。


 うちの子がかわいい以外に何もイベントはなく、すんなりとギルドに到着した。



 ギルドに入って昨日の職員と軽く話しをした後、資料室まで案内してもらう。

 全ての資料が閲覧許可になっていたので、約束はしっかり守られたようだった。



 あんまり時間かけてもアレなので、早速調べ始める。

 あんこは定位置に収まり、顔だけ出しているので撫でてあげた。



 調べたい事は大まかに三つ。


 一つ目は、俺が住んでも平気そうな人里から離れた場所を探す事


 二つ目は、ミートブルの生態、生息場所、飼育方法


 三つ目は、エリクサーみたいなポジションの回復薬と回復魔法について



 世界地図みたいなのと魔物図鑑、アイテム図鑑、魔法の事が纏めてある本を探す。


 ......お目当ての本を探すだけで一時間くらい掛かってしまったが、ちゃんと本は見つけられた。



 先ずは世界地図みたいのを開く。


 えーっと、なになに......


 五大国は五角形の形になっていて、皇国が先端に位置する。

 先端の帝国から時計回りに帝国、連邦国、教国、王国の形になっている。


 その五角形の中心には難攻不落のダンジョンがある。極稀に中からモンスターが氾濫することがあり、その際には五大国が結束して事に対応する決まりになっているらしい。


 難攻不落のダンジョンからスタンピードが発生したとして、人間如きに対処できるのかね?

 あの性格クソ悪ダンジョンですら半分も攻略出来てないのに......

 もし最狂ウサギの群れが出てきてしまったら、王都は為す術もなく滅ぼされる未来しかないだろうな。


 魔物の領域に一番近いのは皇国で、亜人の領域に一番近いのは連邦国。

 どちらの国も防衛を任されているって建前らしいけど、厄介事の押し付けか自国を強化する為の隠れ蓑ってとこだろうなー。


 魔物の領域からの侵攻があった場合は、皇国が矢面に立ち、帝国と王国で援護。それでも厳しかったら連邦国と教国に応援を要請。


 亜人の領域からの侵攻の場合には、連邦国を先頭に、帝国、教国で対処。これも厳しかったら皇国と王国へ応援要請。

 帝国ってめんどくせぇ立ち位置にいるんだな。その分色々と利益もありそうだけど。


 案外しっかりとしていて、周囲には協力的で対等な関係と思わせられるような仕組みになっていた。

 実際には侵攻なんてされる事はほぼ無いだろうし、侵攻があったとしても、人側からちょっかいを出された事への報復の為の行動だと思うわ。


 多分コイツらは、三竦みならぬ五竦みの関係なんでしょうね。出過ぎた真似や勝手な行動はすんなよ!と監視し合ってるっぽいなー。


 まぁいい、勝手にやってろ。さぁ続きだ。


 教国から更に先に進むと海っぽいのがあるらしく、海の向こう側はまだ未開の領域。


 王国の先には森林地帯があり、半分も攻略出来ていないらしく未開の地となっている。

 どうやら俺が森から抜けた所がその森だったみたいだね。ややこしいな。

 帝国の先には広大な山岳地帯があるらしく、魔物と亜人の領域を分断する壁みたいになっている。


 皇国の先は魔物の領域、連邦国の先は亜人の領域だ。


 ......王国から先に進むのは却下だな。森なんか行けるか!!自然は壊したくないけど、ダンジョンでやった事をしてしまいそうだから絶対行かない。


 そして海は魅力的なんだけども、一番近い国が教国なのは無理だ。なのでこれも却下。


 亜人とは全然馴染めなさそうだから遠慮しておこう。完全な偏見だけど、引きこもりコミュ障の亜人達に頼み事をしても絶対聞く耳を持たないだろうし。


 そうなると残りは帝国と皇国の先の二つ。


 山岳地帯がどれほどのモノかはわからないけど、山岳地帯方面から進んで魔物の領域へ降りていくのが良さそうな気がする。


 皇国から魔物の領域へ直行したら、なんかゴタゴタに巻き込まれそうだし......


 よし。最終目標は魔物の領域近辺にして、山からそちらへと移動しながら良さそうな土地を探していこう。

 それと一度アラクネ達の国にも行ってみたいな。


 目的が一つ済んだので、次にミートブル関連の事を。


 これの生態や飼育方法みたいのは書かれていなかった。最初から躓く......

 こんな情報を隠す意味がわからん。さっさと全員に開示すればいいのに。

 もっと食に対して貪欲になれと言いたい。テイマーならどうにか出来そうじゃんか!


 愛着が湧いてしまったら、一気に絶望的になるけど。


 生息地は山岳地帯で、中腹くらいの草が豊富な土地らしいから、二度手間にならなそうでそこは嬉しい。

 あの肉は絶対に確保しておきたい。ミルクもどんな味か気になる。


 次にエリクサー的な物について。

 錬金術師が偶然生み出したーとか、ダンジョンで偶然手に入れたーなどのお伽噺の領域みたい。

 でも記録に残っているということは実現出来る可能性があるっぽい。偶然手に入ればいいや......くらいに思っておこう。


 回復魔法については、教国が独占しているみたいで情報が全然無かった。

 ざっくりとした説明で、こんな感じのがあるよ......としか書かれていない。

 宗教国家は何処も厄介だなぁ......神よりも金を信仰していやがる。


 油断さえしなければ怪我なんてしなさそうだし、これについてはもう諦めようかね......


 テンプレなら聖女の危機を救って仲間にする......なんて事がありそうだけど、俺には無理だ。


 宗教の中でも、上の方に近いヤツなんかと知り合い以上の関係になりたいとか思わない。回復魔法が高レベルで扱える魔物とかが仲間になってくれた方が嬉しいわ。



 おっ!それがいいな。回復魔法が使えて、見た目も可愛い子がいないかなぁ。


 まぁ絶対に仲間にするって訳ではないけど、うちの子たちが仲良くしたいって思える子なら仲間にしたいかも。



 ちょっと知識だけでも頭に入れておこう。一応魔物図鑑を隅々まで調べてみようかね。






 ───────────────────────────────────

 ※簡単な位置情報を。


          魔

ㅤㅤㅤㅤㅤ森ㅤㅤㅤㅤㅤ皇ㅤㅤㅤㅤㅤ山

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ王ㅤㅤㅤㅤㅤ帝

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ   ダ

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 教ㅤㅤㅤㅤㅤ連

ㅤㅤㅤㅤㅤ海ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ亜ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


 分かりにくいかもしれないですけど、ざっくりした位置関係はこんな感じです。


 それより先は人間にとっては未開の地となっており、それ以上の情報はありません。


 ※こちらからは思っているような感じで表示されているので載せましたが、ズレてたり、意味不明だったらすみません。

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