第55話 実験と到着
とろっとろに蕩けたお嬢様を優しく寝かしつかせてあげる。
......まさかここまでの威力を発揮することになるとは思わなかったぜ。
目標をピノちゃんに移そうと思い、視線を向けた段階でガチ威嚇されてしまったので敢え無く断念した。
最初に会った時よりも本気で。
あんなにガチんなくてもいいじゃん......オレスゴクカナシイ。
なんか悔しいので一度だけ不意打ちでヤってやろうと思う。たくさんヤったら二度と触らせてくれなくなる可能性が高い......なので一度だけヤってやると心に誓う。
今日は遅い昼食で、しかもガッツリ食っちゃったのと、ゴロゴロしてただけだったのであまりお腹が減っていない。
結局夜飯は、枝豆と冷奴にビールの夜の三種の神器にした。
きっと冬以外のシーズンではクリーンナップ固定のメンバーだと思われる。
飲んでいたら復活してきたお嬢様に、たまにならしてもいいけど頻繁にやるのはだめ!と釘を刺されてしまった。
指先の魔術師は諸刃の剣だった模様......くそぅ。
そのあとは普通に、いつも通りの行動をしてからお風呂に入って寝た。
明日からめんどくさい事が起きるので、今日は寝る前に思いっきり甘えさせてもらった。
スキル使用は不可に設定されてしまったが......実に有意義な時間を過ごせた。
やっぱり心地良いなこの生活......早く自由の身になるぞー!!
◇◇◇
二日間のバケーションが、ついに終わってしまった。
おはようございます......
はぁぁぁぁぁ......めんどくせぇ......
夜特有のテンションを維持なんてできるわけない。朝はいつも憂鬱。
沈んだ気持ちを奮い立たせる為に甘いものでも食べよう......
決戦前なので、大好物の水ようかんをチョイス。
滑らかな舌触りとさっぱりした甘みが俺を癒してくれる。御中元とかで貰う水ようかん詰め合わせや、カル〇スのセットはガキの頃嬉しかったなぁ......
いつもじっくり味わおうと思っているけれど、すぐに無くなってしまう。
スプーンが止まる気配を見せない......人間版のチ〇ールなのではないだろうか。
結局六個入りの袋入りのヤツを全部食べてしまったが後悔は一切ない。
甘いもの食べた後の罪悪感が少ないのも水ようかんの魅力だろう。
あの子たちが起きてくるまでまだかかりそうだなぁ。
うーん......外に出て魔法の威力とかの検証でもしてみましょうか。
俺の根幹である闇魔法の特訓だ。いざという時には多分コレに頼るだろうし。
進化してどうなったのかちょっと楽しみなのである。
まずはしっかりしたイメージが湧かなくて一度断念したけど、ずっとやってみたいと思っていたアレをやってみようと思う。
少し大きい岩に手をつき、俺の手からジワジワと闇魔法で侵食していく......そんな感じのイメージで放ってみた。
そう。試してみたかったのは侵食だ。
どんな感じになるんだろう。なんちゃって炎と同じで黒くなるだけだったらガッカリする自信がある。
三十秒程で軽自動車くらいの大きさの岩が真っ黒になった。
......黒くなったな、見事に。まぁここまでは想定通りだ。
見た目には黒くなっただけにしか見えないが、闇御津羽さんを信じてみよう。
どうしようか迷ったけど、とりあえず押してみようと思い、黒くなった岩をグッと押してみる。
......やばかったわ。
押した瞬間にボロボロと崩れていった。触れた部分だけじゃなく全体が。
ちなみに、地面に落ちた残骸は砂に戻っていった。
......ぶ、武器破壊とか拠点破壊に効果がありそうだね。
他にも色々と試してみようと思ったけど、最初からやばかったので尻込みしてしまう。今の感じでデバフ掛けたら、人くらいなら余裕で土に還りそう。
うん、あの子たちの元へ帰ろう......なんかもう疲れちゃったわ。
戻ってからは体を拭いてから着替え。
そしてあの子たちが起きるのを、タバコを吸いながらコーヒーを飲んでゆっくりと待つ。
そこから三十分ほど待つと、お寝坊さんたちが起きてくる。寝起きでぽわぽわしてる姿は、実に良いものである。
おはようの触れ合いをする時に、最初の方は体が強ばっていたのがちょっと悲しかった。もうやんないよ......
寝起きでまだ頭が正常に働いていない子だったのに、ばっちり警戒されてしまった。
悲しさが限界値を超えそうだったので、もうアレは勝手にやらないから気を張らなくていいよと伝えたところ、お嬢様はすぐ安心してくれたが、ピノちゃんは完全にまだ疑っていた。疑いすぎるのよくない!
......不意打ちの計画は中止にしよう。たぶん不意打ちしたら二度と普通に触れさせてくれなくなる。
ご飯を食べ終えたお嬢様とピノちゃんに、今日の予定をざっくりと伝える。
あんこは『大人しくしてるから好きにしていいよ』とだけ言い、フードの中へ入っていく。
ピノちゃんは『ポケットの中で寝てる』と言い、そそくさとポケットに入っていった。
うん。
もうちょっと応援してくれてもいいと思うの。面倒臭い男心をわかって!!
......信頼の証だとポジティブに考える事にしようか。
終わった後は癒してね......と悲しそうに言ってみたら、しょうがないなぁって感じで両方のほっぺにチューをされてしまった。
それはもうチュッと。
オォォォォォォォォォォォォォォ!!俺は殺るぞぉぉぉぉ!!アイツらを殺って殺るぅぅぅぅぅぅ!!
危ない危ない......テンション上がりすぎて、モード反転しちゃう所だった。
報酬が前払いされたのでこれはもうサクサク終わらせて、出来高報酬をしっかり貰ってイチャイチャするしかない。
俺の準備は既に出来ているし、あの子たちも完璧なので即出発した。
テンションの上がりきった今の俺に、不可能と言う文字は存在していない。
俺に搭乗している方々には最高の乗り心地を提供しつつ、上から降ってくる使徒を受け止める為に走る初号機並みのスピードで必死に王都までの道のりを走リ抜ける。
......十分足らずで着いたわ。
ダブルエントリーシステムを搭載した俺に不可能は無い。シンクロ率400%を越えても自我を保つ俺であった。
残っていた依頼書を使って、行列に並ばずに王都に侵入した。結構前の書類なのにそんなサクッと通していいのだろうか?
まぁ俺には都合のいい展開なのでザル警備に感謝だ。
まだ朝も早いし、ヤツらも王都にいる事だろう。もし居なかったら......脅して受けている依頼や居る場所を聞き出しちゃえばいいか。
ギルドの場所が全然思い出せなかったので、前に書いてもらったメモを見ながらギルド方面へ向かっていく。
ギルドへと向かいながら、フードを被り顔を隠す。
フードにいたお嬢様には申し訳ないが、今目立つわけにはいかない。
中はスーツではなくシャツにしてあったので、定位置に移ってもらった。急に移動させてごめんね。
すぐにギルドへ着いた。
まだそんなに人がいなそうなので、ギルドの入り口が見える場所にある飲食店に入った。
食いたくもない飯を頼み、奴らが来るまで張り込み調査を開始。
幻影でローブをありふれたモノに見えるよう加工したので、見た目でバレる事はないだろう。あんこを移動させる必要なかった......悪いことしてしまったよ。ごめんね。
それにしても......此処のサンドウィッチくっそ不味いな。
あの劇物で不味さに耐性があるから、不味くても食えはするけど......
この世界来てから初めてのハズレ飯なので若干テンションが下がる。
ギルド前っていう、最高の好立地なんだからもっと努力すればいいのに。
サンドウィッチを不味く作れるのはある意味才能だろうか......切って塗って挟むだけなのに。
三十分くらいこの場所で時間を浪費したが、ヤツらが現れないので外に出ることにする。
決して店員からの、食い終わったんなら早く出ていけって視線に負けた訳ではない。
不味いモン食わされて長居できなかった......最悪だ。
もう待つのはいいや、ギルドに入っちおう。
殺らなきゃいけないヤツらは多いからね。サクサク殺るべきさ。
そんな訳でギルドまでやって参りましたよ。さぁ逝きましょう。
朝のギルドは、人が多くて煩かった。人によっては活気があるとか、賑わっていたとか言うんだろうけど。
犬を連れた冒険者って結構インパクトがあったらしい。
俺のことを覚えていたと思われるヤツ、生きとったんかワレェみたいな視線を向けてくるヤツ、ただただ好奇の視線をこちらへ向けてくる不快なヤツらがいる。
ちょっとだけ嫌になってきたので、威圧を出しながら受付へ向かう。
全然知らない受付嬢の顔が引き攣っているが気にしない。俺の中ではギルド関係者は、既に全員容疑者カテゴリー。
「お偉いさんの所へ案内してくれるかな?依頼を受けてダンジョンへ行ったら、見事なまでに囮にされて、ダンジョン内に置き去りにされちゃったんだよ。
今後の事を含めて話したいからすぐに案内して欲しいな」
ニッコリ笑顔でそう言い放つとギルド内がまたザワついた。うるさいなぁ......
「あーそうそう。アポを取ってないからとか、忙しいからすぐに会えないとかの言い訳は止めてね。
別に俺はそっちの都合に合わせるつもりなんて毛頭ないから」
んー......受付嬢はガタガタ震えていて役に立たなそう。バイブでも仕込んであんのかよ。
「......案内してくれないならこちらから出向くけどいいかな?探知すればすぐにわかるし」
「い、今すぐ案内致します......」
おっ再起動した。さぁ早く案内してちょうだいな。
フルフルしている受付嬢だったが、しっかり案内してくれるらしい。
お偉いさんがいると思われる場所まで受付嬢の後をついていった。
ちょっとだけ他より大きい扉の前で立ち止まり、「ここです」と一言だけ喋った受付嬢さん。
もう帰っていいよと告げたらすぐに戻っていった。そんなに怖かったのかね。
さぁこの中にいるヤツには、どうせだしガクブルな状態からスタートして貰おうかなと思う。
扉を侵食で真っ黒にしてからサラッサラの粉に変えてから入室。
「なんだ貴様は!ここがどこだかわかってんのか!」
神経質そうなおっさんが頑張って威嚇してきた。
さぁ
「犬を連れた冒険者、ダンジョン調査、囮......これだけ言えばわかるかな?俺の事はどう報告されているのか知りたいな」
威圧を出しながら、そう尋ねてみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます