第56話 捕獲と立て篭り犯

 俺の登場にびっくりしているが威勢のいいおっさん。

 威圧が弱かったのかなぁ。


「お、お前なんで生きている......生き延びていたのなら何故今頃になってやってくる......んだ」


 えぇぇ......第一声がソレなんですか。

 威圧に気付いたみたいでちょっと勢いが弱まる。


 驚くのは別にいいんだけど、俺の質問にはちゃんと答えてほしいわ。

 どんな風に俺の事を報告されたのかを先に知りたいのに。ゴミめ。



「......はぁ。んなもん敵やボスを全部倒してダンジョン攻略してきたから、今俺は生きているし帰還が遅くなったんだよ。俺を置いていったヤツらは、敵を見てすぐ魔道具を使って帰っていったからな。

 入口までどんだけかかるかわからないし、ダンジョンに入るのは初めてだった。それでなんとなく攻略しちゃおうと思っただけだ」


 あ、この部屋に入った瞬間からボイレコは起動させています。



「え!?はぁぁぁ!?あのダンジョンを攻略してきただとォォォォ!!」



 うるっせぇ!!叫ぶなクソが!!

 俺の質問に答えてくださいよ。早く。



「ちゃんと攻略してきたぞ。そんな事より俺の事はどう報告されてんの?」



 んー......証拠の品を出してあげたら信憑性出るかな。よし、大鎌を取り出そうっと。



「ほれ!これがダンジョンの最終階層ボスが使ってた大鎌だ。時間を無駄にしたくねぇから、早く俺の質問に答えてくれよ」



 収納から大鎌を取り出し、首筋に刃を添えながらそう言い放った。

 大鎌と言えばコレをしてるイメージだ。やっぱカッコイイな大鎌。



「.........は、はははは。ほ、本当に攻略したのか......どうやって......」



 ......チッ......んだよコイツ......現実逃避しちまった。

 くっそ使えねぇな!なんでこんな雑魚メンタルのヤツが出世できるんだよ......



「報告書くらいあるんだろ?どこにあるんだ?早く出せよクソ野郎。

 すぐに言わない場合、もしくは出さなかった場合はお前を拘束して痛めつけた後に探す」


 話が進まない現状がダルくなってきたので最後通告をした。時間は有限なんだから無駄にしないでほしい。


「わ、わかった......渡したら俺の無事は保証してくれるか?」



 お?話が進む気配。最初からそうしてほしい。


 自己保身に走るおっさんにニッコリ微笑んであげたら安心したらしく、すぐに頑丈そうな金庫から書類を出して渡してくれた。


 ボイレコあるから迂闊な事は何も言わない。ただ勝手に助かると勘違いしてくれただけだ。


 出すもんをしっかり出してくれたおっさん。その口と手足を縛って拘束をし、床に転がした。


 さて、証拠品を押収したことだし報告書を見てみましょうか。



 どれどれ......





 ~五分後~


 うっわぁ......


 依頼書と、報告書の無修正版があったんだけど......

 うん......やっぱり人間ってクソだわ。


 ・斧と狼は、学者達のパトロンの貴族の紐付きなので同行させる

 ・斧と狼は、初対面である風に装い仲が悪いように振舞え

 ・依頼人と同行パーティを守るために、使い捨て用の少人数パーティ、もしくはソロの冒険者を探して同行させろ

 ・その際には餌として、昇格や評価アップに必要だとでも言えばいい

 ・万が一何も起きずに生き残った場合は、事故や不意の襲撃に見せ掛けて処分しろ

 ・その際にはこちらの関与が疑われないよう細心の注意を払え



 これが依頼書に書かれていた。続いて報告書。


 ・火を操る巨大な白蛇モンスターを確認

 ・無数の火を繰り出し、プレッシャーが強く、気圧されてしまい何もできなかった

 ・手に負えないと判断をしたので、予定通りにソロの冒険者を囮にして帰還

 ・ソイツは不思議な技を使っていたが、戦闘では全く役に立っていなかったので死んでいる可能性大



 ざっくりと翻訳したけど、こんな事が書かれていた。


 あとギルド内の主犯格の名前と、醜く権力や地位にしがみつく老害の名前も書かれていたのはラッキーだった。


 まず、あの二組のパーティとその場にいた学者達はギルティ。


 ギルマスのおっさんは捕獲済で、他に副マス、受付嬢を纏めてるおばさん、俺の担当した受付嬢へこの依頼を渡して勧めた女。この四人はギルティ。


 担当の受付嬢は......悪意はなかったみたいだけど、結果として俺は罠に嵌められたからなぁ......

 会ってからの第一声が謝罪だったら、軽く脅すくらいに留めておこう。

 心配してました......とかの言い訳スタートはアウトだな。謝罪以外だった場合は、殺しはしないけど威圧をガッツリ浴びせよう。


 あとは学者達の所のトップ3はギルティ。以前から同じような事を繰り返していて、もうどうしようもない腐り具合。

 そいつらのパトロンになっていて、クソを派遣した貴族もギルティだ。


 今まで甘い汁を啜っていた老害達は、現世にはもう必要ないであろう。

 さぁてと......粗大ゴミが炙りだされたのでこの部屋にいる必要は無くなった。


 このおっさんの個人資産らしいモノだけは奪っておく。この後に幾らか使う予定だし。


 よし、ギルドのロビーまで戻ろう。


 主犯格のヤツらに協力者がいないなんて事は無いだろう。確認しないとなんだけど、結局人間なんて自分第一の生き物だから......簡単に炙り出せるだろう。



 大鎌の切っ先に襟を引っ掛けて、おっさんを担ぎあげようと試みてみる......

 だが、切れ味が良すぎて襟が切れただけだった。


 ちょっと悲しい気持ちになり、大鎌を収納。おっさんの襟を掴んで引き摺っていく。


 階段もそのまま引き摺って降りていった。呻いているが情けなんてかける必要がない。



 俺がおっさんを引き摺って現れると、ザワザワしていたギルド内がピタッと静かになった。

 うんうん、すぐ静かにできるのはとても良いことですよ皆さん。先生は嬉しいです。



 さぁやる事をやってしまおう。


 俺のすぐ近くに居た二つのパーティに依頼を出した。


 ・なんとかの狼と、なんとかの斧ってパーティをなるべく早くココへ連れてきて欲しい

 ・応じない場合はギルマスが呼んでいるとか......まぁ適当に何か言っておいてほしい

 ・依頼を受けてから逃げ出したり、連れて来れなかったらペナルティあり

 ・報酬は一人金貨2枚、無事に連れてきたのを確認したら依頼完了


 ペナルティと言った所でビクリとした彼らだったけれど、報酬の内容を聞いたら即決してくれた。

 こういう時に即断即決できるのは人生において良いことだよ。好機は逃しちゃダメ。


 これからも、怪しいお誘いと好機の違いはキチンと嗅ぎ分けられるようにね。



 依頼を出し終え、走って出ていった彼らを見送る。周りで呆然としている冒険者達に副マスと受付のババァ、それと受付の女の事を聞く。


 ソイツらはすぐに見つかった。

 うん......見つかったんだけどさぁ......はぁ。


 .........さっき俺の事をギルマスの部屋に案内した女が目的の女だった。



 ガタガタ震えているが気にしないで確保。


 近くにいたババアも確保した。


 副マスは今出かけているらしい。なのでまた冒険者に捕獲依頼を出した。




 騙した女は全てを諦めた顔をしている。


 ババアはみっともなく喚いている。


 ギルマスのおっさんは、自分がまだ助かると思っているらしくちょっと余裕そうにしている。




 ......助かる訳ねぇのにな。



 痛い槍を収納から取り出し、調子コイてるおっさんに突きつけながらちょっと大きめの声で話し出す。


「コイツら以外に俺をハメるのに協力していたヤツらがいるのならさっさと吐け。

 吐かない場合はこの槍でお前を刺していく。まだこの段階では喋っても喋らなくてもいいよ......痛いだけだから。

 ただし!槍の後には命を掛け金にした嘘発見器にかけるから気をつけてね。

 あー......それと!このギルド内に居る皆さんは、今から事が終わるまで誰も外に出ないでくださいねー!トラップを仕掛けてあるので外に出ようとしたら死にますよー」



 ちゃんと忠告したので後は自己責任でお願いします。

 戻って来る人がいるので、本当はまだ罠を張っていないが、逃げようとすれば撃つから死と隣り合わせなのは変わらん。



「さて、他に協力者はいるのかな?言うのであれば早くしたほうがいいよ。

 この槍は、あのダンジョンの90階層のボスから出たヤツだから、黙秘する場合は覚悟を決めておいてね」


 そう伝えてから口の拘束を解いてあげた。


 しかし何も喋ろうとしないおっさん。覚悟は決まってるみたいだね!えいっ!


 ブスリ...と肩を刺した。



 ここまで脅しても喋らないから根性あるのかと思ったのに......惨めに喚き出しやがった。


「煩わしいから黙れ。もう一度聞くぞ?今捕えられているお前ら以外に、この件に加担したヤツらはいるのか?」



 メガネを掛けたインテリぶってる野郎と、イケメン風の野郎を指差したギルマスのおっさん。




 素直になるの早かったな。この槍って結構使えるっぽいぞ。

 どれくらいの痛みなんだろう....

 試したくもないし知らなくていいか。敵対者にしか使う気ないし。


 まだ協力者は居そうだけど、嘘は吐いてなさそうなので今は放っておこう。

 まだ何かを隠しているのであったとしても、後で嘘発見器にかけるし、甘いと油断していればいい。


 協力者を糸を伸ばして拘束し、こちら側まで連れてきた。

 イケメン風のヤツは女の恋人だったらしい。インテリメガネはババアの協力者でした。


 まぁそんな情報どうでもいいか。


 恋人を拘束されても助けに来ようとしなかったイケメン風の男はクズ野郎だね。


 クズ......クズかぁ......

 ここで急に冷静になってしまった俺。


 これは完全に......テロリストが立て篭っているみたいな状態。

 迷惑かけまくってるなぁ。もっとスマートなやり方あっただろうけど、予想以上に多くの人が関わっていたから仕方ないじゃん......


 冷静になってこの事実に気付いたら悲しくなってきた。


 ギルド以外のヤツらはひっそりと消そう......



 とりあえず!!実行犯確保と恐怖のイメージ付けは済ませないと、今後の生活に支障が出てしまうからキッチリとやりますよ!変に手を出せば危ないってわからせてやる!



 無関係だった人達にはお詫びに金を渡そう。当初の予定より多く。


 なんか状況がイマイチ理解できていない方々が多く、申し訳なくなってきたので無関係なギャラリーに事情を説明。

 無関係だと判断されたら迷惑料をお渡しする旨をしっかり伝えた。


 憤る人も居たが、だいたいの人はお詫びで金が貰えるなら......と協力的になってくれた。


 協力的な人が多くてびっくりした。これがこの世界の感覚なのかな。

 聞けば斧と狼から結構被害受けてる人が多かったのもあるが。


 ちょうど皆が納得してくれて一段落した頃、被告人のゴリラ達と斧達、そして副マスが連れられてきた。


 出入口のドアに、立ち入り禁止と張り紙を糸で貼り付けてから糸のトラップを張る。

 これより先、この場所から逃げ出した場合は本当に切断されます。ご注意ください。


 今からコイツらの抱えている秘密を色々暴いていくんだけど、この腐ったゴミ共からどれだけの蛆が湧いてくるのだろうか。

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