第50話 オフの日と焼きそば

 今日はピノちゃんの初めてのお外という事と、ダンジョンでも頑張ってくれたお嬢様の為に、丸一日遊びに使うことを決めた。



 その事を伝えたところ、速攻であんこが大型犬サイズになり、ピノちゃんを頭に乗せてスタンバっている。


 しっぽはふりふりでお座りしながら。



 めっちゃウキウキでしっぽふりふりしているので、あまりの可愛さに目が幸せだ。

 ピノちゃんもお外に興奮してソワソワしてる珍しい光景。




 ダンジョンで鍛えた俺らの脚力を使えば、来るまでに一日掛かった王都からここまでの距離も一時間くらい。

 なので、王都から程よく離れた場所にある川の近くに行くことに決める。


 大まかな方向だけを伝えて、一緒に走り始める。


 三十分程度で目的の川まで到着した。


 先を走るあんこが、俺に追いつかれる度にスピードアップするのを繰り返していたから当然っちゃ当然だけど、想定よりも早く着いた。


 到着してすぐに、あんことピノちゃんは川の方へ突撃していったので、俺はパラソルを設置して、ローチェアとテーブルを置く。


 そして海パンに着替え、薄手のパーカーを羽織った。川辺で遊ぶ気満々のスタイルにモデルチェンジ。



 俺が準備したり設置してる間に、お嬢様は穴を何個もほりほりしていた。

 なんで俺は即パラソル設置なんて選択をしてしまったんだっっ!!



 見逃した分を後で眺めて補う為に写真をパシャリパシャリ。


 あんこの掘った穴の中でだらけてるピノちゃんも可愛いからパシャリ。


 俺のアルバムが潤っていきます。ありがとうございます......ありがとうございます!!



 俺の準備が終わった事に気付くと、駆け寄ってきて飛びついてくるあんこが可愛い。


 抱っこして思いっきりわしゃわしゃ。そしてわしゃわしゃしながら川に飛び込んだ。




 やっぱりこの子は水が好きみたい。楽しそうに水遊びをしている。

 俺と一緒に水へダイブしたのが楽しかったみたいで、もう1回!とせがんでくる姿に癒される。


 ただ思ったより川が深くてびっくりした。水深を調べてからやるべきだったわ。



 高めに跳躍して飛び込んでも大丈夫そうな深さだったので、俺は調子に乗ってみる。


 あんこを抱っこしたまま高く跳んでから、回転したり捻りを加えながら落下するスタイルに切り替える。



 今やった飛び込みがお気に召したみたいで、今度は1人でやってみたいから上に投げて!とおねだりされてしまった。


 ケガしないかな?大丈夫かな?と、ちょっと心配になりつつも、おねだりされてしまったからにはやらない訳にはいかない。



 さっき跳んだ時と同じくらいの高さへドキドキしながら放る。投げられる前のお嬢様は、それはもう全力でウキウキしてました。



 投げられてテンション高いお嬢様。


 お座りしているような体勢のまま体をクルクル回転させてキレイに着水する。そしてドヤ顔で犬かきをしながら戻ってきた。



 なんて可愛い生き物なのでしょうかこの子は......ブルブルして水を飛ばしてから、もう1回!今度はもっと高く!とねだられるので素直に従った。



 空中での姿勢がいつもお座りの状態だったのは、あの子のこだわりなのかね?

 すげぇ可愛いから全然問題ないんだけど。



 その後三回放り投げたら満足したらしく、俺に抱っこをせがんできた。今日は触れ合いの時間が多くて幸せです。


 優しく抱きしめ、なでなでしながら一度ピノちゃんの元へと戻る。



 穴にフィットしているピノちゃんに、一緒に水辺に来ないか誘いをかけてみるが、この穴のフィット感がかなりイイ感じらしく、まだここにいるとの事。



 それなら仕方ないな。




 ジャストフィットするポジションを見つけてしまったら、動きたくなくなる気持ちは痛いほど理解できるもの。

 出勤前にだらけてる時とか異様にベストポジションが発見できてたなぁ......



 ピノちゃんが穴を満喫しているので、まだ二人だけの時間を過ごせるようだ。

 今度はビーチバレーもどきをやろう。



 糸で地面に線を引き、ちょっとだけ糸でネットを張る。高さは中型犬サイズが隠れるくらいの高さ。



 ビーチボールを召喚し、膨らましたのを軽くポンポンと手の上で跳ねさせてからお嬢様に向けて投げる。



 どうすればいいのか、その動きだけで理解出来た賢いあんこちゃん。



 見事なヘディングで俺にボールをリターン。それをまた軽く打ち返し、ポンポンと玉遊びを続けていく。


 そのまま単純なやりとりが続くと思いきや、フェイントを織り交ぜたりして仕掛けてくる。



 ヘディングと見せかけて、急に体を捻りしっぽでスパイクを繰り出してきたり、見事な肉球ジャブで打ち返したりと多彩な攻撃をしてくる。


 ビーチボールなので威力は全然無いが、俺だけに破壊力抜群の攻撃を仕掛けてくるのでポイントを取られてしまう。

 まぁポイントとかカウントしてないけど。


 悔しい......とは全く思わず、顔を緩めながら遊び続けた。


 結果?惨敗だよ。当たり前じゃん。



 しばらくビーチボール遊びを続けて満足したらしく、今度は普通のボールを要求してきた。次はキャッチボールをご所望ですか。


 という事で、今度は最初の草原以来やっていなかったボール投げをすることに。




 ふふふふふふ。

 あの頃の俺とはひと味もふた味も違う。今はダイ〇ョーブ博士イベントを2回成功させた選手みたいなもんだ。

 きっとNPBやMLBも真っ青な変化球や剛速球を投げてやるぜ!!


 変なことを考えていたけど、お嬢様がワクワクした目でこちらを見つめながら待機していらっしゃるので、これ以上待たせてはいけない。



 ピッチャーシアン......第一球振りかぶって......投げましたッッ。



 レーザービームのように発射された第一球に俺はびっくりしたけど、あんこはそれを確認してから飛び出していった。

 硬球でやったらもっと綺麗な球筋になるだろう。



 あんこは剛速球に見事に追いつき、華麗に空中キャッチを決めるナイスプレー。うーん熱盛っ!!


 どう?すごいでしょ!とドヤりながらボールを俺に渡してきて、第二球が投げられるのを待つお嬢様を撫で回す。


 早く投げて!と叱られたので二投目を放る。


 今度はスライダーを投げてみた。まるでパ〇プロのスライダーのように途中から直角に横変化。驚異の切れ味の金特持ちだな俺。


 ていうか縫い目なんて無くても、球の回転だけで曲げられる異世界クオリティな俺の身体能力。



 初めて見る変化球に面食らっていたが、見事な反応で方向転換をキめ、しっかりキャッチして戻ってきた。


 びっくりだよ。


 何あの動きは......初見で対応されるとは思わなかったし、あんな変化球投げれた俺にもびっくりしている。


 落ちる球を投げたら、ノーバンキャッチ至上主義のお嬢様に悲しい思いさせるのでやらないでおく。



 でもチェンジアップだけは面白そうなので次に投げてみよう。


 そして三投目......見事な腕の振りから繰り出されるチェンジアップ。

 飛び出していったあんこが、ボールが前に無い事に慌てていて凄い可愛い。


 こっちをチラッと見てボールを確認。さすがにもう遅いだろうと思っていたが、本気を出したあんこは凄かったっす。


 弾丸のようにボールまで飛んでいきキャッチした。


 そしてキャッチした勢いそのまま、俺に向かってロケット頭突き。


 直線上にいた俺が悪いな。という事で甘んじて受ける。まぁね......勢いがやばくて吹っ飛んだ。


 そのまま押し倒されて、大型犬サイズに変化したお嬢様にぺろぺろと顔面を舐め回される。ご褒美ありがとうございます!

 犬が顔を、特に口を舐めるのは愛情表現ですよね。無抵抗で受け止めるのは常識ですよ。



 アレはズルい!ダメ!と言われて反省。

 完全な初見殺しだもんねアレ。申し訳ございません。


 謝罪の意味を込めて撫でくりまわし、ピノちゃんの元へ戻っていった。



 ピノちゃんが収まっている穴の方へ戻っていくと、穴から顔をピョコッと出して迎えてくれた。


 もういいのか聞いたら、満足した!と誇らしげに言い放ったマイペースなピノちゃん。



 それはよかったと撫でてあげると、嬉しそうに目を細めて撫でられていた。愛らしさにキュンキュンしたのは言うまでもない。



 俺はお腹がすいてきたのでご飯にするけど、君たちはどうする?と聞いたら、一緒に遊んでくる!と言われたのでぼっち飯確定。




 行ってらっしゃいと見送り、ご飯の準備を始める。寂しい。

 こういったシチュエーションの時、何を食おうかな?と普段の俺なら迷う。しかし今日は既に決めてあるのだ。


 焼きそばが食いたかったんです。ものすごく。


 という訳で、巨大な鉄板と誰もが知っているであろうオリエンタルな水産の焼きそばの麺を大量に召喚。



 鉄板を熱している間に野菜をカット。


 鉄板が温まったらキャベツ、人参、玉ねぎ、豚コマを油で炒め、野菜の上に麺を大量に投入。

 水をかけてから蓋をして、しばらく蒸し焼きにする。


 後は大量の粉と少しの醤油をかけて、全力で混ぜるだけだ。


 大量に用意しておけば食いたくなった時に食えるので、こういった機会に作っておく。

 調味料で味変すれば飽きることも無いし。


 粉末ソースの絡んだ麺が焼けてきて、香ばしい匂いという名の暴力が俺を襲う。


 空腹時にやるもんじゃなかったわ......何かしらを軽く腹にいれとくべきだった。



 鉄板で調理する系の飯はなんでこんなに暴力的なのだろうか......特に醤油やソースの焦げる匂い。


 お好み焼きやたこ焼きも食べたくなってきた。ステーキと共にガーリックバターライスも食いたい。あぁ......腹が減った。


 さて、そろそろいい頃合だろう。


 鰹節と青のりをかけ、からしマヨを添えていざ実食。

 久しぶりに食べた出来たてアツアツの焼きそばは、懐かしくてとても美味しかった。



 久しぶりの焼きそばを食べて満足したので、遊んでいるあの子たちを見てみる。




 川の比較的浅い所で遊んでいるようだ。

 あんこが水流を操作して小さい流れるプールみたいにしている所を、気持ちよさそうにぷかぷか浮いて流れているピノちゃん。それを慈しむように見てるあんこ。



 俺も一緒になってぷかぷかしたいと乱入しそうになるが、あんこがピノちゃんの為にやっているので保護者モードで静観する。


 しっかりお姉ちゃんして、妹?を楽しませているのを嬉しく思う。

 ピノちゃんはハートマークを浮かべて感情を表現していて楽しそう。


 あー......やっぱ俺はこんな時間が好きだわ。いっぱい楽しんでね。



 このまま好きにさせておいても問題は無いと判断したので、俺は前に捕獲して食べたロックフィッシュを集めに向かう事にした。


 あの魚美味しかったし、あんこも珍しく好んで食べていたからある程度の数を確保しておこうと思う。俺個人としても焼き魚食べたいし。


 という事だから楽しみにしててね!ピノちゃんは魚に食いつくかわからないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る