第49話 可愛いお叱りとがっかり
宝箱のキラキラ具合にちょっと目を奪われてしまったけれど、そんな物よりも大事なあんことピノをしゃがんで迎えいれる。
お疲れ様!って感じなのかな?真っ直ぐこっちへ向かってきたお嬢様に肉球パンチを頂戴しました。
あぁんっ!魔力がほぼ空っぽで、気怠い体へ最高のご褒美ですぅ!
あんこに遅れる事少々、ピノちゃんには跳躍からのしっぽビンタを頂戴いたしました。あんな動きも出来るのね!かわいかったですよ!!
お疲れ様のハイタッチみたいなモノかなぁ♪かわいくて幸せだったなぁ......またやって欲しいわ。
ハイパーご機嫌になって嬉しそうにしていた俺だったけど、顔面に冷気をぶつけられてしまった。
なんか対応間違えた?え?どうしよ......まずは謝るとこから始めなくては。
ごめんなさい。はしゃぎすぎましたね......え、違う?離されてて寂しかった?......そうですか。
あーいや......でもね?全魔力を解放しての攻撃だったから、君たちに悪影響があったら嫌だし、そんなことが起きてしまったら悔やんでも悔やみきれないので、これは当然の処置だったんですよ。
あっはい。すいません。
直接当たらなければ影響は無いんですね。......あぁー。いつも俺の魔力をチューチュー吸ってるから体に馴染んでるんですね。
俺が心配しすぎでした。ほんとーにごめんなさい。
仲直りのハグを長めにして元通りになりましたよ。さっきのはハイタッチではなくて、お怒りですよって意思表示でした。
でもね、例えおこだったとしても可愛いとか反則だと思います!幸せでございました!
なんとも締まらないグダグダした戦闘終了後のやり取りになってしまったけど、気を取り直して戦利品の確認。
あんこは定位置に自分から入っていき、ピノちゃんは頭の上に乗ってきてくれた。生きてて良かったと思う。
まずは、奪った鎌からチェックしていこうと思います。
▼魂奪のデスサイズ
殺した者の魂を奪い成長していく大鎌
殺した者が強ければ強いほど、この大鎌装備時に身体能力があがる▼
うーん......確かに強いっちゃ強いんだけどねぇ。
大鎌使わないわ。大鎌使いって少し憧れはするけど。
骨喰さんがなかったら、この大鎌をきっと愛用していたと思うけど。
次はクリスタル的なヤツを。
▼スキルクリスタル
魔力を注ぐと使用者にスキルがランダム付与される
何が付与されるかは使用してからのお楽しみ
一度使用すると壊れる▼
ほほぅ......ランダムスキルガチャチケットですか。
しかし、何が来るのかわからないのはちょっと嫌だな。せめて選択式にしてほしいと思うのは贅沢だろうか。
まぁいいか。さぁ、本日の目玉ですよ!
ラストはめっちゃキラキラしてる宝箱さんに、多大な期待を込めながらオープン。
......うん。
何だこれ......粉薬みたいのが五つ出てきた。
残念な気持ちが溢れ出てきてるけど、とりあえず全部見てからガッカリしよう。
▼若返りの粉
肉体が今までで最高のコンディションの状態を保持しつつ、成人年齢まで若返る
使用できるのは一生に一度のみで、二度使用した場合身体が崩壊する▼
▼魔樹の葉の粉末
あらゆる病気を治す
苦味が奇跡的に抑えられており、飲みやすい味に変化している▼
▼長寿の粉
自身の寿命が倍になる
何度でも使用できるが、増えるのは最初に増えた寿命分が加算されるのみ
肉体の老化スピードは、残りの寿命に合わせて変化する▼
▼魔樹の実の粉末
飲めば魔力が増える
奇跡的に加工できた品で無味無臭になっているので、本物を知っている人でも安心して服用できます▼
▼奇跡の粉
どんな惨状であったとしても、生命反応が僅かでも残ってさえいれば元通りに修復される奇跡の粉末
修復される際、身体の悪い所が全て治る
瀕死の人以外には効果が無い▼
......他人からしたらまぁ、喉から腕が複数本生えてくるほど欲しい物だとは思うんだけどねぇ
......正直がっかりですよ。最後の粉末以外、全部いらねぇ。
最後の粉末も俺には効くかわからないし、瀕死じゃなきゃ使えないとか使い勝手が悪すぎ。
そしてあんまり知りたくなかった事実。
よっぽどの奇跡が起きなきゃあの劇物は味変できないのか!!そして味変できる可能性あんのか!!
全部の味を変えれるなら魔法少女になってもいいよ!
さあ!叶えてよ!イン〇ュベーター!
あなたたちの祈りを、絶望で終わらせたりしない!!
まぁそんなに上手く世の中は進まないんだけどね。味を変えたいです。
防御チートの野郎を倒した結果が、ランダムスキルガチャと粉薬×5、そして劇物の見せた希望、それも可能性のみって正直すっごい微妙。
ほんとこのダンジョンの主らしいがっかり具合だよ!
神の名を冠してんだからもっと頑張れよ......
この空間にはもう、大穴と空の宝箱以外何も無いので、奥に見える小部屋らしき場所へ進んでみる。
中に入ってみたけど、変な宝石みたいのが六個、それに魔法陣が一つあるだけで他には何も無かった。階段も、コアらしき物も。
お約束らしきコアが無いとはどういう事ですか!!
どっかに隠してたりすんのかな?まぁ探さなくてもいいか。二度と来ねぇし。
見つけたとしても、うっかり触ったりしたりして何か起こっても嫌だから、このままスルーが正解でいい気がしてきた。
ダンジョンってホントなんなんだろうか。攻略しにくる人に対しての嫌がらせの為のモノでしかないだろ......という俺の経験談。
来た道を戻るのはめんどくさいので、魔法陣に乗ることに。
外に出るのか、入口付近へ飛ぶのか、はたまた別のエリアに飛んで、このダンジョンが続くのか知らないけど、まぁここは行くしかないだろう。
98階層から一方通行だったし。帰り道が例え復活していたとしても、アレをもう一度は絶対嫌だ。
何が起こってもいいようにあんことピノを抱きしめて魔法陣へ。あ、しっかり変な宝石は回収したので暇な時に鑑定しようと思っております。
うぷっ......気持ち悪っ......
魔法陣が光を放ったと思ったら、すぐに上下が反転する感覚がした。その後に、内臓がシェイクされる感覚がキた。
あーもうっ、最後の最後までこんなんなるんかよ......
クソダンジョンがっっ!!
目を閉じたつもりは無かったけど、目が閉じられていたので目を開ける。
少しの眩しさのあとに、見覚えのあるダンジョンの入口が見えた。
外だァァァ!!帰れたァァァ!!
天使たちもしっかり一緒にいたので一安心。最後の嫌がらせ行為は内臓シェイクだけで済んだらしい。
しかし、そのせいであんこもピノちゃんもぐったりしている。あの謎の感覚はあの子たちにもキたらしい。
大丈夫か聞いてみたけど、気持ち悪い......と言うだけで元気がなかった。あのジジイもし次があったらガッツリ滅してやるからな!
俺も気持ち悪いので休憩することに。
久しぶりの普通の地面にちょっと感動しながら木を背もたれにして座る。
膝の上にあんこ、あんこの上にピノを乗せる鏡餅スタイルで休憩。
周囲に糸を張り巡らせ、天使たちを撫でていたらいつの間にか眠りに落ちていた。
◇◇◇
目が覚めると辺りは真っ暗になっていた。
魔法陣酔いはすっかり良くなっていたので飯を食べようと動き出す。
あんことピノちゃんはまだ寝ていたので、ソーッと起こさないようにブランケットに移した。
めんどくさいのは今日は遠慮したい気分だったから、冷凍うどんを茹でて、それを豚汁にぶち込むだけの簡単な作業。
こんだけでもうまいから、うどんって本当に素晴らしい食べ物。
あーコレコレ......コレだよ。
あっちで時間が無い時によくやってたわ。
豚汁うどんに七味を振りかけ、ネギを散らす。
これだけでもいいんだけど、今日はちょっと贅沢な気持ちになりたくなった。なので追加で温泉卵を乗せる。
雑なぶっかけ飯や丼モノでも、半熟の目玉焼きや温泉卵が乗っていると、かなり豪華に見えるから不思議だよね。
麺を半分程食べた後に黄身をぶち破り、麺にたっぷり黄身を絡ませてから啜る。
あぁ、やっぱり卵黄は素晴らしい......洗い物がめんどくさくなるというデメリットはあるが、それでもやらずにはいられない!
一玉じゃ足りなかったので、うどんをもう一玉追加する。魔法陣酔いのせいで食欲ないと思っていたけど、案外腹が減っていたみたい。
二玉目はつけ麺スタイルで食べよう。
夕飯を食べ終えた俺は、そのまま風呂に入るべく準備を開始。
徳利とお猪口、木桶を出して湯船に浮かべ、このまま月見酒と洒落込むつもりだ。
今日はダンジョン脱出記念。
お風呂の準備中に起きてきたウチの子たち、一緒に入浴しながら酒を楽しみ、その日は終了。
いっぱい寝た後だから、ちゃんと寝付けるかな?と心配したが、それは杞憂だった。
◇◇◇
朝。早めに目が覚める。
昨日はかなり寝たので、体はスッキリしている。地上はいいなぁやっぱり。
卵かけご飯に塩昆布のトッピングと、豚汁の和朝食を食べてから、あの子たちが起きるまでチャクラムの練習でもしようと思いつく。
俺の行動って結構行き当たりばったりだな......と思い、苦笑い。
服を焦がしたり、切ったりしたら嫌なので、上半身は裸、下は安物のスウェットを着用。
持ってみて改めて思う。怖い。
円形のデカい刃物だからまぁ怖いのは当たり前か。
振るう時に体に当たりそう。しかも投げたら燃えながら戻ってくる。
......一度だけ試してみて、ダメそうなら封印しておこう。
べ、別にチキった訳では無い。難しそうだなと思っただけだ。
投擲スキルのおかげで投げ方はわかる。木に狙いを定め、いざ投擲!
弧を描きながら飛び、炎を纏いながら分裂。かっこいいなおい。
木に切り口が焼けた傷が五つ付き、木を薙ぎ倒した後はチャクラムさんのご帰還。
こえぇぇぇぇぇぇ!!!
戻る寸前に一つに戻り鎮火。ヒヤヒヤしつつも無事にキャッチする事ができた。
結論。
遊びでなら出来るが、戦闘中しながらのキャッチは無理。
カッコイイんだけどコレは諦めようか。人には向き不向きがある。
シャツとズボンのラフな格好に着替え、大鎌を装備。
使いにくそうと思っていたけど、薙刀術の応用でこれが結構しっかり扱えた。
楽しくなり、ブンブンぶん回していたら視線を感じる。
中堅らへん位の見た目の冒険者が一組こちらを見ていた。
恥ずかしっっ。
苦笑いを浮かべながら会釈をし、逃げるようにその場を離れる。
長いこと一人と二匹だったから、他に人が居る可能性を完全に失念していた。
そう言えばココは外で、ダンジョンの入口付近だったわ。
逃げ帰ると天使たちがお出迎えしてくれた。おはようの触れ合いにより、羞恥心で傷付いた心が修復されたので、ご飯を食べさせてあげる。
これから人里へ向かわなければならない、そして面倒なヤツらと絡まないといけないと思うと......気持ちが萎えてくる。
しかしこれからする事は、俺の今後の為の必要なプロセスなので、覚悟を決めて出発した。
でもやっぱり今日は王都に突入しないで、この子たちといっぱい遊ぼうと思う。
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