第46話 冬の終わりと殴打武器

 はい。こんなギミックがあって取り乱しました俺です。


 ウチの子たちはおねむらしく寝ておられる。本当めっちゃ寝るなこの子たち。


 俺一人で頑張れって無言のエールですね。




 これ人力で開くのかな?とりあえず押してみる。



 開かない。身体能力を上げて再トライ。





 ......ビクともしない。ふざけてんのか!?ノーヒントでこの一面の銀世界の中からキーアイテムor仕掛けを見つけろとでも言うつもりかい?限りなく不可能に近くないですかね。




 イラッとしたので強めに蹴ってみる。


 壊れたら儲けもんくらいの勢いで。







 そしたらちょっと開いた。前に......



 まさかの引くタイプの扉ですか...ほんと舐め腐ってやがりますね、ここの主は!!


 普通このタイプの扉は押す一択でしょうが!!もしくは近づいたら勝手に開くか。



 ここで手に入れたピーキーな武器や魔道具の類はココのラスボスさんに使えということですね......フフフフフフ。

 ストレスを溜め込ませるからイケないんですよ......絶対に瞬殺はしてあげない。




 まだ見ぬラスボスにヘイトを募らせながら部屋の中へ進んだ。





 手がいっぱい生えていて、顔面もいっぱい生えているデカい物体が鎮座しておられました。


 いやぁぁぁぁぁ気持ち悪いぃぃぃぃ!!!そんな目で私を見ないでっっ!!

 気持ち悪いデカブツの、ハイライトさん不在のたくさんの目がこちらを見ているぅぅぅぅ!!




 なんっっっで!!!こんなに精神攻撃を仕掛けてくるんですねぇぇぇぇぇ!!


 キモすぎるんですけど......なんなのさ、この化け物は......


 ドン引きしながらも鑑定してみる。



 ▼ヘカトンケイル

 98階層の番人▼



 ヘカトンケイルって巨人じゃなかった?こんなガチのモンスター枠だったの?



 なにかされる前に倒そう。もういやだよこのダンジョン......


 小型のブラックホールを撃ち込み、体内から吸引を開始。



 ク〇ームさんが口の中にボディを詰め込んでいくような感じで、ドンドン吸引されていく。


 デカいだけあって1分くらい掛かったが吸引が終わった。吸引力の変わらないただひとつのブラックホール......はい、すいません。



 ドロップ品と宝箱を収納して次の階にそそくさと進んだ。

 ウチの子たちは寝ていたおかげで、醜悪なモンスターを見る事はなかった。よかった。





 階段を降り終わる前に装備を変えなくてはと思ったけど無理だった......



 .........寝ているこの子たちを起こさなくちゃ着替えられない。やばい詰んだ。

 暑さで死ぬかもしれぬ。手足だけが。




 いや、次もまた極寒エリアな可能性もある。

 このまま進もう......こんな些細なことで、頑張ってくれたこの子たちの睡眠を邪魔する事は許されない。




 さぁ99階層を攻略しようではないか。


 あと少しで終わると思ったら気が緩む。どうせその隙を突いてくるんだろ。この厭らしいダンジョンは。



 いつ何が来てもいいように、色々と覚悟だけはしておこう。




 そう意気込んでいたものの、次の階層にはおどろおどろしい雰囲気の空間。そこに巨大な屋敷風のナニカがそびえ立っていた。




 これには思わず動揺してしまう俺。



 まさかの心臓に悪い系のフロアですか!?

 ホラーは嫌いじゃない。ただ驚かされる系が嫌いなんだ。


 急にガラスを突き破ってくるゾンビとかほんと嫌。


 屋敷ごと消そうかと考えてしまうが、ボス前のラストの階層っぽいのでキーアイテムごと消し去ったら詰むのでやめる。



 雪原が恋しくなり振り返ってみたけど、やっぱり階段消えているので戻れない......ゴミカス共が使っていたダンジョンから逃げる用の魔道具を俺によこせぇぇぇぇぇ!!






 ふわもこ装備で屋敷内に侵入する訳にはいかない。俺が屋敷の主で、変質者が不法侵入してきたと考えたら悲しい気持ちになってしまう。



 なので、あの子たちが起きるまで飯食ってダラダラしようと考え、すぐに実行。




 今日は何食おうかねぇ.....食いたいモンは沢山あるんだけど作るのが厳しい......



 はー......町中華のラーメン、レバニラ、餃子、そこに白飯or焼き飯のセレブリティなご飯が食べたい......


 豪勢なコースメニューより慣れ親しんだアノ味が食べたい......



 召喚能力はある意味万能だけど、ある意味不便だわ。完成品の食べ物を出してくれ!トッピング系は出てくるのに......


 アツアツの中華料理がたべたいでーす!




 中華鍋とお玉、中華包丁が出てきた。


 ......テメーで頑張れといいたいのかな?

 ウチの子たちが俺にくっついて寝てなかったら思いっきり地面に叩きつけてたわ。




 悲しくなったので、ちょっと贅沢して気分をあげようと試みる。黄身だけの卵かけご飯に角切りチャーシューと辛味ネギを混ぜて食べ始める。


ㅤ濃厚な黄身と白ご飯に、味の染みたチャーシューが卵かけご飯に深みを与える。そこにネギのシャキシャキ感と爽やかな風味、ラー油のピリ辛とごま油のコクが混ざる。

ㅤあぁぁぁぁぁ......美味しいよぉ。何杯でもイケそうだわ......

ㅤこのまま焼けばチャーハンになると思うけど、パラパラチャーハンにもしっとり系のチャーハンにもならない、油でベチャベチャになった焦げのあるチャーハンが出来上がるのは目に見えている。


ㅤ脱サラして町中華屋に弟子入りしておけばよかった......家庭中華、本格中華よりも、町中華が一番美味しいと心から思っている。


 美味しかったけどちょっと悲しくなった。そんな感じでちょっと遅めの昼飯が終わる。




 まだエンジェルたちは起きないし、ドロップ品の確認と、ボスドロップの宝箱を開けてみるか。

 先にこの......ミニサイズのヘカトンケイルらしき変なドロップ品から。




 ▼ヘカトンケイルの守護像

 普段は置物だが、テリトリー内に許可されていないモノが侵入したら攻撃を始める

 魔力で作動するのでこまめに魔力を充填させておきましょう

 小型では手に負えない相手の場合には肥大化もする▼




 ......えぇぇぇ......結構優秀やん......見た目以外は完璧やんけ。

 碌でもないモンだと思ってたから、拍子抜けしたし、ちょっとだけ見直した。



 見た目はグロいけど、かなり万能で優秀な狛犬&番犬みたいなもんとでも思っておこう。うん。



 次は宝箱を。



 ▼百腕巨人の篭手

 拳一振りで五十撃分の追加ダメージを与える

 防御力、攻撃力共に最高峰だが、魔力を多く吸収するので注意が必要

 魔力が足りない場合は重さで装備者の腕が折れる▼



 ......呪いの装備かなコレは?艶のない濃い灰色の篭手が出てきました。

 俺とは相性抜群だろうけど、使うような場面が想像できない。


 とりあえずコイツらはしまっておこう。置物に見られてる気がして落ち着かない。




 確認を終わらせてからは、暇を持て余して闇糸であやとりして遊んでいた。しばらくすると、よく寝るおふたりさんがようやく起きてくれた。



 寝起きでボケーッとしているお嬢様が体を擦り付けて来て幸せ。眠い時と寝起きの子犬の可愛さは犯罪的だぜ。


 ピノちゃんは何してるの?って、俺が闇糸で作った某畜生なペンギンと、よくバク転を失敗する某コアラを覗き込んできた。興味津々のご様子でちょっと嬉しい。



 これはペンギンって種族のツバメと、変な動きをして目立ちたがるコアラだよって教えてあげる。


 こんなの本当にいるの?と訝しげなピノちゃんがかわいい。


 こんなのが本当にいたんですよ。魔境ジャパンには。




 装備を変えながら気付く。


 よく考えたらふわもこ装備はすぐ外せてたわ。マフラーを外す時だけ慎重にならないとだめだったけど。




 着替えをしてスッキリした所で、お嬢様に練乳ミルクを飲ませてから定位置に戻し、立派な御屋敷に不法侵入を開始。


 お邪魔しまーす。




 あー......いるわ。


 いるいる。うん、めっちゃいるわ。


 お化け屋敷の中で客が来るのを待っているお化け役の人、どんな気持ちで待っているんだろうね。あんな不気味な空間で......



 魔力探知でバレバレです。それはもう、色んな所に潜んでいるのを確認している。


 おっきな音で驚かされるのが死ぬほど嫌いなので、闇の弾丸を飛ばし、職務を遂行される前にご退場してもらった。


 デカい音を出されて、この子たちがビクッとなったら許せないしね。




 かなりの数の隠れてるモンスターを倒した。不意打ち特化のモンスター嫌い。

 数段階に分けて奇襲をかけてこようとしてる箇所や、油断してる所に奇襲をかけてこようとしてる箇所が多々あった。

 ......ココを作ったヤツは本気で性格が破綻していやがる。



 モンスター狩りまくってるし、レベルとかもエグい事になってそう......


 き、気が向いた時に確認すればいいよね。気にしたら負けだよ。





 隠れていたり、潜んでいるモンスターは駆除し終えたと思う。探知にも反応はない。


 なのでここからは、ホラゲーごっこをしようと思っている。


 この屋敷の中には、ハンドガンやショットガン等は置いていない。

 ハーブや救急キット等もなければ鍵等もない。なのにゾンビ系モンスターは出る。



 なんか銃火器を出したら負けな気分になったので、次に出てきたモンスターは鉄パイプ装備して倒してやる。


 そう決意し、鉄パイプを召喚した。その場で軽く振ってみたりして感触を確認......


 素振りしただけで曲がってしまったので、鉄パイプはもう使えない......

ㅤなので、殴打武器の代表格、四天王のうちの一つバールのようなものを代替品として召喚。

 金属バットは同じ結果になりそうなので却下。木材は絶対耐えきれない。鉄パイプは言わずもがな。



 素の状態でもかなり頑丈なバールのようなものだけど、曲がらないように魔力を多めに込めて召喚してみる。



 見慣れたあのフォルムのモノが出てきた。

 ここまではいい。望んだ通りだ。



 だけど、なんだろ?......このバールのようなものなんか変な感じがする。魔力を多めに込めたのがいけなかったのか?


 ......か、鑑定。




 ▼バールのようなモノ

 釘抜きの部分は所持者の意思で大きさが変わり、棒状のモノなら殆ど引き抜ける

 刃の部分は隙間さえあれば、どんな隙間にも対応する

 決して折れず、曲がらない▼




 鉄パイプをそういう感じで召喚しとけばよかったと後悔した。



 使用に対しての選択肢が豊富すぎるなぁ......このバールのようなもの。



 曲がらない壊れないだけは嬉しいけど。

 開けれないモノなど無くなったし、この説明だと人の背骨とかでも引っこ抜けそうよね......



 とりあえずそんなスペックは活かす機会を与えずに、殴打専用の武器として使っていこう。



 なんかサイレン〇ヒルとバイ〇ハザードのコラボみたいな感じになったけど、このお化け屋敷の攻略を進めていきましょうか。

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