第45話 失敗と大技(笑)

 実験をするという事で、お外に出る事にしたんだけど、寒いのは嫌だということなのでピノちゃんはブランケットに包まってお留守番。


 雪の上で風景に溶け込むピノちゃんも見てみたかったけど、こんな寒い時にお外に出すなんて出来ない。



 お嬢様に扉を内開きに改装してもらって扉を開けてみたんだけど、扉の先には白い壁がありました。


 たった一晩でこんなに積もる異常気象。さすがダンジョンですわ......気候変動させる仕組みはどうしてるんだろう。


 泊まる準備完璧にしてても、寝て起きたら雪に生き埋めになるとか鬼畜だわ。

 こんなに降ったのに音が全然しなかったからね。気付いたら手遅れ。

 ふかふかの新雪なので真綿で首を絞めるかの如く、ゆっくりと低体温症と雪の重みで死に向かわせるダンジョン野郎の嫌がらせの極み。



 気を取り直して、目の前の雪の壁を糸で切り分け、ブロック状にして収納していく。

 これいいかもしれないな。ふかふかな雪を収納しまくっておこう!大量にあれば色々と使い道あるし、楽しめるよね。暑い日に雪まつり開催できる。


 酒呑みながらお湯に浸かる→逆上せてきたら雪ダイブ→またお湯に浸かって酒を呑む......こんな贅沢なループもできるやん。




 ガッツリと雪を収納して、道中でも雪を掻き集めようと心に決めた。


 そしてやっと雪の中から地上に出れたので、さぁ改造したアレを使うぞ!と意気込んで試したみた。






 走り出してすぐに先端が雪に刺さった。




 俺は慣性の法則に従って、そのまま吹っ飛び犬神家の一員になった。


 あんこは強制的に急ブレーキ掛けられてキャインと鳴いた。ごめんなさい。




 これはダメだよ。うん......これはダメだ。



 お嬢様に誠心誠意謝罪をして、諸悪の根源を消し飛ばした。俺には物を弄るスキルは無いとハッキリした。



 素人にどうにか出来るもんじゃなかった......エッジとかワックスとか色々あるんだろう。日本でなら調べれば出てくるので何とかなるんだろうけど......


 そして普通にスキー板を召喚して引いてもらうのを試してみるが、あんこのスピードに対応できずに俺が吹っ飛んだ。スノボでも同様の結果になってしまった。




 悲しそうにしているあんこをなでなでしながらカマクラへ戻り、今日もソリで愚かなわたくしめをお運び下さいませ......と誠心誠意頼みこんだ。




 今日も頑張るよ!とフンスッてしてるお嬢様が可愛すぎてやばい。さっきのは俺のミスだからね。

 先人の知恵の詰まったモノはやっぱ偉大だわ。


 抱き上げてお腹に顔面を押し付け、わんこ特有の不思議な感触のお腹を楽しんだ。

 昨日、顔面に張り付かれてから特殊性癖に目覚めてしまった俺です。


 さぁ出発いたしましょう。昨日と同じように装備を整え、ソリに乗り込んだ。




 昨日でコツを掴んだのか牽引が上手になっており、物凄く快適なソリの旅である。吹雪が凄い事を除けば。



 くそっ!吹雪のせいでお嬢様のお尻がはっきり見えないじゃないか!





 しばらく快適に進んでいたんだけど、前方にたくさんのモンスター反応がある。それはもうみっちりと。



 何がいるんだろう?と思って視力をガッツリ強化して見てみたら、白くて耳の長いのがたくさん集まり蠢いている。

 量の多さにはちょっとヒいてしまうが、それはそれ。




 ウサギさんだぁぁぁぁぁ!!!



 耳がピンとしてないロップイヤータイプだったらパーフェクトだったのに......と少し残念に思ったけどウサギは可愛かった。


 俺には無理だ。


 ここまで可愛いのは倒せないし、倒したくないので迂回することを決意。


 ただやけにお嬢様がピリピリしてるのが気になる。俺がウサギに目を奪われたからジェラっちゃったのかな?




 迂回してくださいと頼んでみたら、気付かれてるよと言われてしまった。なので確認してみる。




 あー......うん。見られてるわ。夥しい数のウサギが一斉に首をグリンってしてきている......こういう光景は本当にゾワッとする。



 とりあえず鑑定してみよう。



 ▼ルナティックラビィ

 最狂のラビィ種▼





 ............アッハイ。このダンジョンは俺を精神的に殺そうとしてきているわ。上げてから落とす落差がえげつない。

 最狂のウサギってなんだよ......最強ならば、まぁ理解できるけどさ。あとウサギはラビィって言うんだね。




 お嬢様を呼びよせて、一旦ローブの中へと避難してもらう。

 見た目だけは可愛い生物を、超絶プリティなこの子たちに殺らせる訳にはいかない。俺が殺るしかない。




 糸を張り巡らせて奇襲に備える。最狂のって言うくらいだから、きっと突拍子もない行動をしてくる可能性がある。


 虫もそうだけど、ワラワラとしているのを見るとゾワゾワする。


 少数だと可愛いんだけどなぁ......はぁ、悲しい。







 嘘ついた。全然可愛くなかったわ。




 アレ、ウサギの皮を被った化け物だ。


 口から触手っぽいのがハミでてるもん......そして牙に返しがついてるし、ノコギリみたいにもなっている。


 そして極めつけが、後ろ足がモンスター〇ァームに出てくる、腕が生えたスライムみたいなヤツの腕みたいにムッキムキになっていやがる。ねぇ、なんで急に肥大化したの?ねぇ......


 それでいて顔面の上半分だけは可愛いウサギのまんま。なにこれ、ガチで狂ってるよ。



 このダンジョンはとことん俺の精神を壊しにかかるんですね!!ちくしょう!!ウサギフェチの方だったらここで脱落ですよ!!




 いいよ!殺ってやんよ!!バカヤロォォォ!!返り討ちじゃぁぁぁ!!




 昨日ソリの上で考えた技を試してやる!いろんな所から怒られそうな技だけど......



 龍さんを顕現させて、なんちゃって黒火を纏わせる。



 それをただ撃ち出(した様に突撃してもらう)すだけの技。






 ぶっちゃけると、邪王炎〇黒龍波っぽく龍さんを放つだけです。



 いっけぇぇぇぇぇ!!



 そして俺は龍さんの活躍を見届けながら、龍さんの攻撃範囲外にいるパチモンウサギを斬り飛ばすだけのマシーンと化した。


 目標をセンターに入れてスイッチ......目標をセンターに入れてスイッチ......目標をセンターに入れてスイッチ......目標をセンターに入れてスイッチ..................






 心が死んだ俺を余所に、ピノちゃんがアレやってみたい!って仰ってるので、後で試そうねとだけ伝えた。

 中身が炎の方が本物っぽくなるだろうし、試してみる価値はあると思う。



 目標をセンターに入れてスイッチ......目標をセンターに入れてスイッチ......目標をセンターに入れてスイッチ......アハハハハハハハ......





 二分後、目標を殲滅した哀しきモンスターと、燃えてる様に見える龍、そしてそこら中に散らばっている元ウサギだったモノが残った。



 悪ふz......ゲフンゲフン......


 新技にご協力頂いた龍さんにお礼を言って、刀に戻ってもらってから先へと進んでいく。

 ウサギの残骸(ドロップ品)はこのまま冷凍保存されてくれ。



 あんなおぞましい生物のドロップなんていらねぇんだよ!ばぁぁぁぁか!!




◇◇◇




 現在、目的地まで残り一時間程度の場所を走っている。


 うちのお嬢様は、さっきのネタ技にインスピレーションを刺激されたらしく、走りながらキレイな氷の龍を作ってぶっ放して楽しんでいる。

 走りながらでもあんな緻密な作りの氷の龍を創り出せるのやべぇな......



 やっぱりウチの子たちは凄いな!賢いな!と感心する。


 バカ親モードになりながらソリに引かれて進んでいく。




 あのウサギ達がこの辺で幅を利かせていたのか、他には全然モンスターが出てこないのでその後の道中はとても快適だった。



 モンスターがいても、探知された瞬間にうちのお嬢様の氷龍の餌食になっていった。


 高速移動しつつ索敵即殲滅のスナイパーと化してますね。素晴らしいと思います!




 移動中はやる事が少ないので、ピノちゃんの新技開発を手伝ったり、闇っぽい技を考えたり、お尻を眺めたりして過ごした。





 ピノちゃんの新技はヤバいのが完成したので、俺の技を考える。


 しかし、これぞ闇っ!て感じのが全然思いつかない......

 デバフ、暗闇状態、侵食......これくらいしか思いつかない。そして暗闇状態以外やり方がわからない。


 諦めようか。こういうのは思いつきでやるものだ。勢いとノリが重要なのだ。

 まともに考えても無難なのしか出来ないだけだ。守りに入る必要なんてない!


 そんな風に言い訳しながら、ソリの旅は続いていった。



 諦めてボーッとしながら風景を眺めていたがスピードが落ちてきた。そろそろ目的地周辺ですかね。



 あと少しで着くようなので止めてもらってソリから降りる。


 今日もよく頑張ってくれたお嬢様へ感謝のもふもふを捧げて、小さくなってもらったら懐かしの定位置へと運ぶ。


 ダンジョンを進み始めてからはほとんどココに入れてなかったので、懐かしさと嬉しさが漏れだす。

 走りながら技を撃ちまくってたので魔力補給の為に吸われていくけど、それもまた心地良い。



 階段方面へ、周囲の雪を収納しながら歩いていく。

 この階層もそろそろバイバイなので、とりあえず手当り次第収納している。




 階段がある付近へとようやく辿りついた......はずなのに、急にクソデカい扉が出現した。



 このまま階段でいいじゃん!なんなんだよこのダンジョンほんと!!

 なんで近付かないと見えないように細工してあるんだよクソダンジョン!!


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