第44話 エグい罪悪感と野郎料理
一面の銀世界を、楽しく犬ぞりで進むこと二時間。そろそろお昼の時間なので、ここら辺で一度休憩をとることに。
このフロアもまた広すぎですよ......クソダンジョンお前嫌いだ!!
探知を持ってても、寒さと雪の量&質で足止め間違いなし。強引に進んだとしても、広さに体力を奪われる最悪のエリアだ。
探知持ってなかったり、精度がイマイチだと遭難待ったナシなのに......帰り道が消失しているというエグさよ。
テンション上がりまくっててまだまだ走れるお嬢様だけど、走らせっぱなしは俺の精神衛生上よろしくないので休憩にします。
優秀で可愛いこの子のおかげで、楽々雪道を進める幸せを噛み締めよう。
念願叶って夢の犬ぞりに乗れたけど......俺の心がすげぇ痛むんだよ......
せめて複数のわんこがいればまだいいんだけど、ソロでの牽引だし......
一番の理由はゼロ歳児に走らせて運んでもらってるって事......字面がやばいです。
謝りながらモフり倒すという変な休憩になってしまった。
罪悪感に負け、休憩終わりに「これからは俺も走るよ!」と伝えたら悲しそうな顔をされてしまった......
良心の呵責VSお嬢様の悲しい顔
ファイッ!!
カーン
カンカンカンカーン(ゴングの音)
1Rㅤ00分01秒︎︎ 一撃ノックアウトでお嬢の勝利!!
良心なんて俺には元々存在してなかったんや!
この子に悲しい顔をさせるくらいなら俺の良心なんていくらでもくれてやるさ!!さぁ早く俺を殺せぇぇぇぇぇ!
ということで犬ぞり続行が決定。
さっきの発言は気の迷いで、本当は続行だよ......と伝えたところ、めっちゃ嬉しそうにぺろぺろしてきたのでこれが最適解だったのであろう。
ビーフジャーキーを与えながら、心の中でまた存分に謝り倒した。
そんな休憩を終えて、また犬ぞりで進む。
めっちゃ嬉しそうに犬ぞりを引いて進むあんこのバックショットを眺める。
この子が楽しんでるならもういいか......と俺も楽しむ事に集中する。
今日中に階段の位置にまで着きそうにないので、ある程度進んだら今日は早めに休もうと思う。決してブラック労働はさせぬ!
うちはホワイトさに定評があるのでございます。ダークサイドには絶対行かせないわよ!
今日のこのエリアの様子は、吹雪ではなく降雪って雰囲気。なので風景を楽しめている。
また俺を引いて走れる事を喜び、めっちゃ楽しそうに尻尾をブンブンしているお嬢様を、ピノちゃんと眺めながら進んでいく。
寒いのが苦手なピノちゃんも、安全な場所から眺められる雪景色に嬉しそう。
一面の銀世界に、樹氷や氷柱。
映像や画像でしか見た事のない世界を見れて感動している......ダンジョンってすごいね。
ダンジョン内じゃなきゃもっと感動したんだろうけど。
とにかく全てを楽しむ事に決めた俺は吹っ切れた。
風景とお嬢様、俺からひょっこり顔を出すピノちゃんなどをパシャパシャしながら、三時間半程進んだところで、本日の行軍は終わりにする事に。
このままのペースで進めば、明日の昼頃にはこの階層の主の元へ辿り着けると思う。
ソリで走っている時に思いついたので、明日は水上スキーみたいなのを召喚して引っ張って貰って楽しもうとも思っている。
雪上移動できるように自分で加工してみよう。
ダメならソリに戻すか、魔力を纏わせておけば何とかなりそうだし。多分。
カマクラをまた作ってもらって本日の行軍は終了。この階層はお嬢様大活躍ですね。
頑張ったよ!と俺の顔にベッタリ貼り付いてきたお嬢様を撫で回しながら、ピノちゃんと共に感謝を伝える。
顔面が幸せです......ありがとうございます。ありがとうございます!!
ピノちゃんにも感謝されて嬉しそうにしてるのを眺めて思う。
ピノちゃん来てからお姉ちゃんをするようになったなぁ......と娘の成長を喜び、楽しむ。
そんなパパ目線になりつつ、頭の上に移動させてから風呂の準備を始めた。
お風呂の用意をしながら、そういえば入浴剤系は一回も試した事なかったなと思い、バスボムを召喚。
何それ?とお嬢様とピノちゃんが興味津々で近付いきてくれて嬉しい。お風呂に入る時の楽しみの一つだよと伝えて入浴準備。
本日の猛打賞(移動、戦闘、カマクラ)のお嬢様に、お風呂に投入してもらおうと口に咥えさせる。
コレは舐めちゃダメだよと伝えるのは忘れない。
よくわからない顔をしているお嬢様が、口に咥えたバスボムをお風呂に入れた。
泡がぶくぶくと湧いてくるのに驚いているお嬢様とピノちゃんに思わず笑みがこぼれる。
フハハハハ!この顔が見たかったのだよ!
掛け湯をしてから抱き上げてお湯に浸かる。
ボコボコ湧いてくる泡と、お湯に広がる色と香り。
それが楽しいらしくテンションぶち上がっているおふたりさん。水面に上がってくる泡をパチャパチャと迎撃して遊んでいる。
今日は珍しくどっちも水面にぷかぷか浮かんでいる。蛇がその場で浮かんでるのはどういう原理なのだろうか。
......かわいいからどうでもいいか!
また頑張った日や、特別な日になんか新しいの出してあげよう。僕は君を喜ばせるために生まれてきたのかもしれない。
そんな感じで楽しく過ごした入浴タイムを終えて、ご飯を食べながらまったり。
あんこちゃんにはビーフジャーキーの炙りを、ピノちゃんには焼いたお餅に醤油をかけた物、俺は力うどんを食べた。
炙りは嫌がるかな?と思ったけど普通に食べていた。
でもそのまま食べる方が好きだったみたいなので謝る。次からは変な事しないでそのまま渡すねって伝えた。
食後にもう一つプレゼント。
頑張った子にはご褒美、ご褒美と言えば甘いもの。子どもはみんな大好きなアレを食べさせてあげよう。
食後には異世界物の定番のプリンを......
その中でも俺の好きなプッ〇ンプリンをチョイスして召喚。それをウチの子たちに与えてみた。
どちらも興味を示さずに完全敗北......
とっても美味しいのに......悲しい。
この子たちの趣味嗜好を、もっとちゃんと理解しなくてはならない。
色んなプリン食べたけど結局アレが一番なんだよね。個人的に焼きプリンは邪道と考えている。
結局俺が全部食べておやつタイム終了......
次こそはなんか刺さるオヤツを......!!
その日は水上スキーを雪上移動用に、自分なりのカスタマイズを施した後全員で密集して寝た。触れ合いは大切です。
◇◇◇
翌朝、俺は凄い風の音で目を覚ました。
え?なに?今日は悪天候なの?
お外の様子が気になったので、俺の上で眠る天使とピノちゃんを泣く泣くどかし、外を確認しに行く。
......ドアがあかない。
なんでや......まさか積もりまくってるのか?
ドアを内側に開くように作らなかった俺のミスですね。
うん。外に出て確認するのはお嬢様が起きてからにしよう......
ドア破壊して外に出たとしても、俺には元に戻せない。
しっかりと目が覚めてしまった。
あの子たちが起きるまで暇なので、朝飯を作ろうか。
なんとなく豚汁が食いたくなったので、そのまま調理に取り掛かる。
簡単でおいしく栄養も摂れるし、大量に作れて食べれば暖まる。そんな万能な汁物だ。
冬になると絶対何度か作ってしまうし、冬じゃなくても定期的に食いたくなる。
まずはゴボウをささがきにし、水にさらす。
火の通りを早くする為に、人参は薄めにカット。
大根はいちょう切りに。
なんとなく好きなので俺はざく切りにしたキャベツを入れる。
切るのは闇糸で簡単にできるからとても楽ちん。
肉はバラ肉が最適だろうが俺は肩ロースの薄切り。
鍋にごま油を少し多めに入れ、すりおろしの生姜を軽く炒めた後、ゴボウと人参、肉を入れて炒める。
肉に焼き色が付いたら、大根、水、酒を目分量で入れて顆粒出汁を投入して煮る。
野郎飯なんてもんはきっちり計量とかしない!濃かったら薄めて、薄かったら足せばいいんだ!
後は大根に火が通ったらキャベツと味噌をぶち込んでキャベツがクタっとすれば完成。
白飯と目玉焼き、漬物を用意したのでパーフェクトな朝ごはんだ。
完成したけどまだあの子たちは寝てる。それはもうとても気持ちよさそうに。
ㅤ「ご飯できたわよー起きてー♪」ってオカンごっこしようかなぁと、馬鹿な事を一瞬考える。
でも無理やり起こすのはあの子たちに悪いので、なんとか思いとどまり起きてくるのを大人しく待った。
寂しいので焼き鮭も朝ごはんに追加する事にした。さっきまでの完成度がパーフェクトなら、これでアルティメットだ。
それから15分ほど待ってたら起きてきたので、朝の触れ合いをしてから朝ご飯を一緒に食べた。
あの子たちは豚汁にはまったく興味を示してくれませんでした。
こういう場合手作り料理に喜んだりしてくれたら嬉しいんだけどなぁ......
知ってたけどね......うん。
ウチの子たちは良くも悪くも我が道を進んでください。
でもたまには興味持ってくれたら泣いて喜ぶからね!
多めに作れば余りを収納しとけばいつでも楽しめるし、具材を追加しながら長く楽しめばいい。
収納しとけば腐らないし。
さぁ出発前に、お外の確認と改造した水上スキーの試し運転をしてみよう。
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