第43話 雪用装備と長年の夢
一夜明けて翌日になった。
カマクラの崩壊や、溶けて大惨事などといった事は起きずに、快適にカマクラ内で過ごす事ができた。
ピノちゃんは暖を求めていたのか、くっついていたかったのかはわからない。
だけど俺にぺったりと張り付いて、ぐっすり眠っている姿に萌えた。
ふわもこのあんこちゃんにくっつかないの?と思うかもしれないけど、たまに寝ぼけて冷気を放出するので三回目くらいから寝る時だけはくっつかなくなった。
俺もたまに冷気を出されて、ヒャンッてなって起こされる時があるけど、それもまた一興。
寝ぼけてちょっとお漏らし(冷気を)しちゃうあんこちゃんが可愛すぎるからやめられない。
起きてきたお嬢様はいつも通りのビーフジャーキー、ピノちゃんは迷った挙句に醤油味のお餅を選択した。
真剣にお餅か卵か考えているのを微笑ましく眺めていた。この子可愛すぎる。
お餅と煮卵を一日置きに食べる事にしたらしくて、それを俺に伝えてきた。
それなら食事毎に別のにすれば?と言ったけど、その日一日は同じのがいいらしい。謎のこだわりだけど自分の意志をしっかり伝えてくれて嬉しく思う。
今日は雪の中を進む予定なので、お嬢様には今日エンジェルフォームになってもらった。まだ屋内なので羽根は無し。
ピノちゃんは俺の首に張り付いてる。蛇ってどうやって平坦じゃないところにいれるんだろうか。
楽しい触れ合いの時間を過ごしていたら、約束の時間がきてしまったのでアラクネメイドを喚んだ。
天使フォルムのあんこを見て嬉しそうにしながら、完成した品を渡してきた。
ちゃんと出来上がっていたので一安心。なのだが......ちょっと待って欲しい。
愛用してたマフラーにそっくりなマフラー。これは慣れ親しんだデザインのモノをファンタジー仕様にしただけなのだから凄くいい。
しかしお前ら......モコモコなブーツ、ふわもこの手袋......マフラー以外はファンシーな装備だった......
性能だけはバツグンにいいので、絶対に一人でいる時にしか使えないけど、しっかりした装備だった。
特に雪の上では破格の性能を発揮しすぎるので、実は手放せない。
モコモコブーツは【雪上歩行】と【雪路補正】と【保温】という能力が有り難すぎる。
【雪上歩行】はふかふかな雪だろうが、カチカチの雪だろうが、何も問題にせずに歩けるそう。かんじきの超強化版だね。
【雪路補正】は、ただのチート。垂直は無理だけど、一度でも角度と雪があれば道と判断されて通行可能になる。雪山も安心だね。
手袋は普通に【保温】と【吸着】と【汚れ除去】。
いや......普通ではないな。
ㅤこれを普通と言えちゃうくらいに感覚が麻痺ってる俺にちょっとヒいた。
【吸着】は手に吸い付く。壁に貼り付けたり、手に持った物を手放さない為の物。ロッククライミングも余裕だね。
他はその名の通り。
マフラーは【耐塵】と【防風】と【顔面保護】と【温度調節】だ。
【耐塵】、【防風】、【顔面保護】で吹雪いても視界が遮られたり、体が煽られたりしないで歩ける。
首に巻いただけで顔面が保護される謎のマフラーさん。首に巻くだけなのにフェイスガードしてる感じか......このご時世には欲しがる人多いだろうな。
砂漠とかでも巻けるように適温を付けてくれたらしい。謝謝。
ローブにはよーく見ないと全然気付けないような胸ポケットが胸元のワンポイントの所に追加されていた。
内ポケットから胸ポケットへ移動出来るように作ったらしく、試してみたら内ポケットから移動したピノちゃんが胸ポケットからヒョッコリ頭を出してるのを見てキュンキュンした。
なんていう物を生み出してしまったんだ君たちは!グレイトだ!
ちなみに、その光景を見ていたアラクネメイドもハートをブチ抜かれたらしく、「かわいい......」と声を漏らしていた。
そしてなんと!ローブの胸のワンポイントには白蛇も追加で描かれており大変素晴らしい仕上がりでした!!
お礼にオルトロスの毛皮と、泡でモコモコなあんこの写真を封筒に入れて、いつものメンツで見てねと言って渡したあとに送還した。
まったく......いい仕事してくれたぜ。
ただ、人前には絶対出られない格好になってしまった。
スーツでビシッとキめた姿に、ふわもこの手袋、もっこもこなブーツ、それにマフラーとローブ。
完全に精神異常者です。変質者です。
こんなファンシーなのはあっちでは絶対着用しない、出来ない。
ただ、このモコモコじゃないとあの万能スキルが付かなかったと言われて諦めた。
どうせなら着ぐるみっぽいの作って貰えばよかった......ハスキータイプの。
まぁ見た目をちょっとだけ我慢すれば快適に進めるので......
ウチの子たちに見られるのは恥ずかしいけど、この装備外したら死ぬので仕方ない。
変質者を見るような目をしない優しいウチの子たちにありがとうと言いたい。
ピノちゃんはポケットに入っていき、あんこちゃんは羽根を生やしたガチ天使になり準備万端。
カマクラを壊して出発した。
恐る恐る昨日沈んだ辺りに一歩踏み出してみる......
お、おぉぉぉ!!!
サクッとした雪の感触と共に、何とも言えない感覚がして、そのまま沈むこと無く普通に雪の上に立てていた。
雪の上に立ったんですよ!!感動した。
そのまま歩き出してみても余裕で歩けたので一安心。
こんなスキルだよ!って言われても、実際試してみるまでイマイチ信用出来ない俺は、まだ異世界に染まりきれてないのだろう。
信用して裏切られたら命の危機だし。
ちゃんと顔面も守られているし、顔や首、手足も暖かい。
アラクネさんありがとう。これからも頼むよ。
俺とこの雪の中を走れるのが嬉しいみたいで、めっちゃテンションの高いあんこが大型犬サイズになって走り回っている。
先導してくれるようなので、ぷりぷりなお尻を眺めながら着いていく。
あの天使フォルムになれる服は伸縮自在なのか、サイズ調整が付いているのか知らないけど、大きくなっても全然問題なかった。
芸が細かいぜ......ナイスだアラクネメイドのあんま喚ばない方!
......ただしっかりと説明をしとけや!
さて......どうしよう。気が付いてしまった。
......このシチュエーションは長年の夢だったアレを試せるのではないだろうか。
............いやほんと、これはアレをやるチャンスなのではないだろうか。
しかし嫌がられる可能性がある......
......ダメもとで頼んでみるか。悲しいけど嫌がられてしまったら、謝り倒して許してもらおう。
楽しそうな天使を呼び止めて、とあるものを見てもらう。
ソリだ。
この雪の中を走ってる天使のバックショットを視姦してて思ってしまった。
......いや、悪魔が囁いてきたんだ。
犬ぞりがやりたいと。
あの大型犬特有のムチムチのお尻を!もっと低い目線で眺めながら!進みたいと思ってしまったら......もうその欲求に抗えないじゃないか!
コレに俺を乗せて、コレを引いて走って欲しい。これは俺が生まれた土地での移動手段のひとつで、夢だったんだ......と説明。
やりたい!やる!と快諾してくれた。
ほんとは邪な思いが大いに混じっていたけれど、OKしてもらえてよかったッッ......!!!
大型犬を多頭飼いしなきゃできないし、スキー場じゃない雪山とか雪原とかある場所へ移住しなきゃ出来なかったからね。
どっかで金を払えば乗せては貰えるだろうけど、自分のわんこに引いてもらって走りたいじゃないか!!
闇糸であんこの体にソリをしっかり固定して、こっそりスノーゴーグルを召喚して装着。マフラーのおかげでこれをする必要は無い。これはただの気分。
さぁ準備は出来た......ソリに乗っていざ!!あんこ、発進!!
うぉぉぉぉぉ!!!
すげぇぇぇ!!
ぷりぷり揺れるお尻とふさふさな尻尾を眺めつつ、長年の夢が叶った喜びを味わう。
あっちの大型犬のパワーやスピードをぶっちぎるウチの天使の爆走。
ピノちゃんはマフラーの部分からこっそり顔を出して外を眺めてる。
マフラーに巻かれていれば、風や寒さが無い事に気付いたらしい。
俺は気付いてなかったのに凄いな。
俺やピノちゃんに頼まれ事をしたり、甘えられると張り切っちゃうウチの天使が可愛すぎて......たまらん!!
可愛さにヤられしばらく悶えていた。ソリに引かれながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます