第42話 困った時のアラクネとお餅
風呂からあがり、髪を乾かした後に部屋着に着替えて少し休憩。
あったまってホッと一息。暑いより寒い方が好きな俺だけど、限度ってモノがあると思うのよ。
少し休んだ後に、急遽開催する緊急クエストをこなそう。変なテンションになりつつカマクラの中でアラクネメイドを召喚した。
喚び出されたのは不思議な白い部屋の中で、困惑しているアラクネメイドさん。
だけど仕方ないんだよねこれは。カマクラって作らないのかなこっちだと。
まぁ俺だって困惑してるんですよ......だからね、許してください......
ちゃんと説明するんで。
・ここはタナトスダンジョンって場所の98階層
・外が猛吹雪&積雪がエグすぎて身動きが取れなくなり、どうしようもなくなって困った俺は、雪用の装備をお願いしたくて喚び出した
・とまぁこんな感じだからこの状況何とかなるモノ作れたりしない?
・それと、この白蛇ちゃんに似合うものなんか作れない?
・このダンジョンで手に入れた素材とお土産の羊羹渡すから
と、説明と要求をした。
困惑しつつも理解を示してくれたアラクネさんだけど、猛吹雪って所が信じられないみたいなのでソッと扉を開けて外に出してあげたらガクガクしながら戻ってきた。頭に雪が積もってますよ。
納得したみたいなのでファーと毛皮と羽毛等、このダンジョンで拾った服の素材になりそうなモノを渡して、ローブ以外の防寒装備と耐熱装備、耐水装備を作れそうかも聞いてみる。
それに加えて、移動時にピノちゃんが入れるスポットと雪上移動を補助出来る靴を頼んだ。
特に靴と雪用装備を最優先で。
この素材を使っていいなら出来ます。と頼もしいお返事をいただいた。ほんとありがたいです万能メイドさん!一家に一人欲しいっすわ。
ローブの加工と靴作成、あとマフラーを翌朝までには完成させられると言ってくれたので、毛皮とファーを先に渡し、あっちにいた頃にお気に入りだったマフラーと同じのを見本に渡した。
ほんとこのメイドさんの万能具合はファンタジーですわ。
カマクラの中は暖かいので、ローブが無くても平気だけど外に出れない......
そんな不安を抱えつつも、さっき渡した物に加えてローブを二着、羊羹と栗羊羹を多めに渡してバイバイする事に。
送り還す直前に思い出しやがったのか、この前こっそり忍び込ませた宝石の事を怒られてしまった。
確かに受け取らなかっただろうけど、せめて手渡しにしてください。知らないうちに高価なもの押し付けるな!ってさ。
ごめんなさい。でも受け取らないそっちが悪い。王族への貢物なのに。
俺は俺の価値観の中で自由に振る舞うのだ。
そんな事を言って反論したら呆れられた......解せぬ。
釈然としないまま、翌朝の九時頃に喚ぶ約束をして送還した。
ふぅ......まだ夕方にもなってないけど外に出たら死んでしまうので、もうこのままダラダラしようと思う。
メイドさんと話をしてる間、ピノちゃんは桶の中のお湯に浸かっていて、お嬢様は外に出て走り回っていた。
お外出るのはいいけど、怪我とかはしちゃダメだからね。
暇になったので、このカマクラを作った時から思っていた事を実行しよう。
カマクラ+七輪=餅!!
という訳で早速切り餅を喚ぶ。
切り餅って便利だよね......考えた人天才すぎる。
さぁここで問題発生。
焼き始めてから気付いてしまった......
焼いた餅に合うのは何?という日本人の永遠のテーマがある。
目玉焼きにかける調味料は?
好きなおにぎりの具は?
焼いた餅を何で食べるか?
......これは日本人が悩む物のベストスリーだと思っている。
そう。俺は今悩みまくっている。
・オーソドックスな磯辺焼き
・さっぱりの大根おろし
・餅や黒蜜と合わさった途端に中毒性のあるヤバい粉に変貌するきなこ
・永遠のパートナー餡子
・原材料が米だから合わないはずがない納豆
・鉄板の明太チーズ
・おせちに飽きたお正月の良心お雑煮
・餅が無くてもおいしいが、有ると嬉しいお汁粉
メジャーなとこだけでもこんなにある。
早く決めないと餅が焼けてしまう......
今日はしょっぱい物が食いたい気分なので......オーソドックスに磯辺焼きでいいか。
大根おろしのはめっちゃ好きだけど、大根をおろしてる間に餅が焦げちゃいそうなので今回は諦めよう。
海苔と醤油を出して、焼けた餅に醤油を塗って海苔を巻く。楽ちん。
砂糖醤油の甘辛より、醤油だけの方が好み。
餅いっぱい焼いて収納しておこう。大根おろしとかでも食いたいし、バター餅も食べたい。
収納すればよかったんだよなさっき......そうすればその隙に大根おろせたわ......
パリッとしてる海苔よりも、シナっとしてる海苔の方が好き。
おにぎりはパリパリ派だけど。
ちょっと間をあけてシナるのを待つ。その間に餅を追加で焼いておく。
さぁそろそろいいだろう。
いただきます......
あぁこれこれ......そう、これですよ。年に一回必ずブームがくるお餅の味ですよ。
餅を食べていたらピノちゃんが興味を持ったらしく近寄ってきた。珍しい!
ひとくちサイズにしたのをあげてみる。
海苔は日本人以外消化できない......的な事を聞いたことがあるので外しておいた。
パクッと食べてしばらくもぐもぐした後に、これ好き!とスリスリしてきたので、予期せぬタイミングで至福の時を味わってしまった。幸せ。
餅一個分食べて満足したのか、シャツの胸ポケットに収まって寝だした。
多分この子、白い物に醤油で味付けしたのが好きなんだろう。今度山芋の醤油漬けとかあげてみよう。
俺は餅を三つ食べて満足したので、今後は焼いて収納するマシーンになろう。
◇◇◇
結局五袋分焼いて作業を終えた。焼いてる最中にお嬢様が遊びから戻ってきたけど、餅には興味を示さず......残念だ。
眠いから寝ると言う天使に、俺の内ポケットですやすやしてるピノちゃんをお渡しして一緒に寝てあげてねと頼んだ。
餅タイムが終わって、あの子たちも寝てしまったのでやる事がない!!
もりもり溜まっていっていた最上級ポーションを思い出し、お高いポーションならば効くのか実験してみる事にした。
自傷するの嫌なんだけどなぁ......
人に傷付けられるのはもっと嫌だけど。
結果はまぁ予想通りダメだった。
効く気配すらない......エリクサーっぽいのを見つけて使ってみても、この分だと効果なさそう......
この体は傷の治り早いし、回復手段は諦めようかね......傷付けられる前に殺ればいいんだわ。
はぁ......今日の風呂は滲みるなぁ......
実験を終えた俺は、やっぱり暇を持て余しているので、寝てるあの子たちの撮影会を始めた。
これは盗撮じゃない。子どもの成長記録をとっているのだ。
何度か撮り直し、ベストショットが決まった。明日アラクネさんたちに見せて自慢してやろう。
本格的に暇だ......うん。もういいや。
あの子たちの近くへ行って今日はもう寝よう。
カマクラの外側を糸でコーティングして要塞化し、内側も崩れないように糸で補強したので天使たちの寝ている所へ突撃した。
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唐突にキャラ紹介パート2
ピノ
・ワインのピノ・ノワールを光に翳した時の色に似た宝石が額に付いている
・手のひらサイズの白蛇
・性格は臆病で用心深かったが、トラウマだった相手に圧勝したので子どもっぽさと元々の性格が出てきている
・主人公の事は最初怖かったがあんこの説得により、警戒しつつも歩み寄ってみる事に。
わりかしすぐに警戒なんてしないでいい相手と気付き、懐いていった。
・気質としては穏やかで争いを好まないが、襲われたら反撃はしっかりするので主人公と相性はいい
・好きな物は完熟の煮卵、醤油味の餅、アラクネ産のブランケット
・嫌いな物はうるさいヤツと飛ばない鳥類
・そう呼ぶ事はないが主人公をお兄ちゃん、あんこをお姉ちゃんと思っている(あんこがお姉ちゃんぶっているから)
アラクネメイドA
・主人公がよく喚び出す方で、マトモだから主人公がよく話してる
・主人公の事は美味しいお菓子をくれる神と思っていて、この縁は手放しちゃいけないと強く思っている
・布作りが得意
アラクネメイドB
・主人公がメイドAのおまけで喚び出す方
・あんこが大好きでうるさい
・戦っても瞬殺なので敵対しないで、仲良くしていた方が色々オイシイと思っている
・服飾が得意
アラクネ王女
・主人公の事を好ましく思っているが恋仲になりたいと言う訳では無い
・気楽に喚び出して欲しいと思っているが立場的に無理
・魔力が増えたおかげで出す糸のクオリティが上がり、特殊効果がよく付くようになった
・栗羊羹にどハマりし、こっそり自分用に隠して楽しんでいる
主人公
・爬虫類は苦手だったが小さい白蛇の可愛さと、死にかけまで追いやってしまった罪悪感にヤられ仲間になった今は溺愛
・ダンジョン内で情緒不安定だったのは、ダンジョンの魔力が知らず知らずのうちに、彼の大きすぎる魔力と同調しようとしていっていたので不快な気分が増し、ダンジョンの嫌がらせも相まって情緒がヤられた
・配線や整備が苦手なのと、ファンタジーには合わないと思ってセーブしているので、車類や家電製品などを召喚しないでいる
・尻フェチ
あんこ
・妹分が出来て喜んでいるが実は一番歳下
・ピノちゃんを守りたい者として認識していて、敵となる者には容赦しちゃいけないと考えている
・実はピノの事は倒しきろうと思えば倒せたが、直感めいた何かが働き無力化するに留めた
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