第35話 初心と自然破壊

 癒された俺は気分があがり、御二方も上機嫌になる。この時間は俺にとってなによりも大事でございます。



 骨喰さんは使われなくてちょっと不機嫌......あ、うん。ごめんなさい。

 でもさ、ほら、もっと強そうなのが出た時に使うから......ね?許してくださいませ。



 まだ今日の探索を終えるには早い時間だったので、このまま51階層に進んで探索を続けてみましょう。





 はい。森でございますね。




 あぁ......なんか懐かしさを感じる。


 あんこも懐かしいと思ったらしく、ちょっとだけテンションが上がっている。自然好きなんだねぇ......俺は口の中がキュッとしてるけど。

 ピノちゃんは......この場所は隠れやすくて助かったと感慨深げにしていた。



 少し居るだけならいいけれども、まだまだこの森エリアが続くっぽいのでサクサク進まないとね......



 心がザワつき、何かを思い出して口の中がさっきよりもキュッとした気がするけど気のせいであろう。うん、気のせいだ。



 あらかじめ目的地の大まかな位置を伝えてあるので、あんこは大型犬サイズになり、ピノちゃんを乗せて俺の前を楽しそうに走っている。



 活き活きしてて可愛いなぁ......おっきいサイズもたまらんですよ!白い蛇とのコラボもキュートでございます!




 犬蛇コンビは、移動しながらも攻撃を忘れない。

 ピット機関をフル活用し、熱感知で敵の居る場所を遠くから感知し、その情報をあんこに伝える。その場所目掛けて氷の弾を撃ち出してヘッドショット。

 とても効率的で、華麗で無駄のない倒し方をしていく。


 ドヤ顔をキメるお嬢様と、誇らしげなピノちゃんを父性溢れる視線で眺める。


 ウチの子は賢くて、可愛くて、強くて......すっごく優秀だなぁ!!と誇らしく思いながら進んでいく。

 親バカとか言われそうだが実際そうなので甘んじて受け入れよう!ウチの子たちは最強にクールでプリティなんですよ!




 それにしてもここ......タナトスダンジョンとか言いながら、ボス以外はほのぼのしたダンジョンである。



 もっと下に行けば冥界チックになってくるのかな?

 ケルベロス......居るんなら是非見てみたい!絶対に懐いてはくれなさそうだけど。

 ファンシーでふわもこなケルベロスだったらいいな。三つ首でじゃれついてきたり、ぺろぺろしてほしい。



 しばらく先導してもらいながら走っていると、下の階層に続く階段発見。

 ちょうど夜になる時間なので今日はここで休む事に決めた。



 森と言えば虫......ここに来るまでもよく見たし。特にダンジョン内なので、変な毒とか特性を持った虫が来たら嫌だから蚊帳をイメージし、一軒家くらいの大きさのトラップを作成した。



 洞窟みたいな階層より気分的に閉塞感を感じない。

 そして、この明るくも暗くもない雰囲気は最初のあの森に似ている。


 今日も一日頑張ったね、お疲れ様......と、あんことピノを順に撫でてからご飯の時間にした。





 色々与えてみたけど、この子達は好物以外の物にあまり食い付きがよろしくない。

 栄養バランスとか関係ないから嗜好品なんだろうけど。もっと色々と食べて、食べる事の楽しさを覚えて欲しい。


 他にも食い付いてくるものを見つけたいものである!と目標を決めた。



 風呂に入り、骨喰さんのお世話をして後は寝るだけになった。

 お嬢様とピノちゃんは既におねむらしく寝床で目を閉じている。





 さて、やってやろうじゃないの。




 なんか懐かしさを感じる森だったので、初心を忘れない為に全力でコーティングしてから劇物を摂取し、無事に不味さで意識を飛ばした。

 レインボー加工が施されたキラキラを吐瀉するマーライオンにならないのだけはよかったと思います。


 気絶する前に思った。なんでコレを強化して食べたんだろう。俺の精神状態、どこかおかしくね?




 ◇◇◇




 懐かしさすら感じるこの寝起き......おはよう。

 守りたい子......いや、守るべき子が増えたのでより一層頑張って行こうと思えた。



 口の中がやばいのでM〇Xコーヒーを召喚して飲んでいく。アンまあ~いっ。


 甘い物で口内リセット&誤魔化し。

 たまーに飲むと美味しいんだよなぁ......このコーヒー風味の練乳ミルク。常飲してると体がカロリーにすぐ反応してくれるのでお気をつけください。


 朝食を食べ終えた俺らはそのまま次の階層へと出発した。




 ~ここからはダイジェストでお送りします~




 次の52階層も森です。予想通りなのでこの時点では、まだ精神も平穏を保っている。




 その次の53階層もやっぱり森でございます。階段を降りたらまた同じ光景が広がっていて気が狂いそうになる。でもまだ平気。




 次54階層。

 森を進んだ。

 次の階層への階段の前で一泊。



 また森ですよ55階層さん。本日も森です。




 はい56階森です。




 57層森 この日ここ で終わり。




 58......かゆ...... 森......うま......




 森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森......




 フハハハハハ!!あはははははは!!



 ~終了~




 森を進むこと合計3日、やっとのことで60階層へ到着しました。


 この世界に来た当時の最初の方の事を思い出してしまったのがよくなかった気がする。ヤバい精神状態になってしまった。


 まぁね?起こってしまった事は仕方ないよ。後悔はしているが反省はしない。

 ......と容疑者が供述しております。




 58階層は闇糸で自然破壊しながら最短距離で突き進んだ。ダンジョンなので再生される事でしょう。



 59階層は暗黒空間で削りながら進んだ。倒れた木を避ける必要なかったので、直進するのがとても楽でよかったです。

 階段前でピノちゃんとあんこに心配されてしまい、ここで正気に戻った。



 60階層のボス部屋までは近かったので糸で破壊しながら進み、その最中にはピノちゃんの炎に闇魔法をコーティングする練習をした。

 黒く燃える炎がかっこよく、ピノちゃんもあんこも楽しそうだった。


 その後は、ソレを羨ましく思った小悪魔ちゃんに可愛くおねだりされて氷の弾にも付与してあげた。

 せっかく作ってくれた氷が見えなくなってしまうのが嫌だったので、弾道がわかるように黒い残像を残してあげた。飛行機雲をイメージして。



 水に付与したら火の着いたタールみたいになったので水には今後やらない。




 そんな事があったのですよ。僕は今ボス部屋の前に着いて休憩中でございますですよ。





 もう森はコリゴリだよ......ほんとに。


 なんか情緒がおかしくなってる気がしている。

 これから住む場所だったら、絶対に近くには森が無い場所がいいな。林なら可。



 次の階層からの景色に期待してボス部屋へと進んでいく。


 出てきたモンスターは......



 なんだこれ?だった。


 鑑定さんお願いします。



 ▼ブエル

 60階層の守護者▼



 頭はライオン、体はライオン?で足が車輪のようにぐるっと五本生えていて二本足で立っている。


 ほんとなんなんだこいつ......



 火車みたいなもん?と思えばいいのかな?火を足先に纏ってるし......





 うん......

 全然わかんない。なんだよあの不気味なモンスターは。


 そしてアイツは動きがとても気持ち悪いです......

 頭はそのまま固定されたように動かないくせに、5本の足が火を纏いつつ車輪のように回転して背後を狙って移動してくる......

 しかも素早い......気持ち悪い。



「あんこちゃん、あいつの事を水魔法か氷魔法でサクッと殺っちゃっえませんか?」


 と聞いてみた。



「くぅん」



 と、とても可愛い(頼もしい)お返事を頂いたのでお任せする。


 ブエルというヤツを氷の箱で囲い、その中を水で充たした。



 おう......超効率的......


 反応が消えるまでそのまま待機。右手でもふもふ、左手では蛇肌をサワサワしながら待った。



 反応が消えたので箱を消してもらうと、バシャァって音と共に中の水が流れ出し、たてがみとチャクラムが残っていた。



 ▼ブエルファー

 ブエルのたてがみ

 最上級の品質のファー▼



 ▼炎舞戦輪

 投擲すると火炎を纏い5本に分裂し襲いかかる

 この武器に慣れていないと、投擲した後に戻ってくる戦輪に切り裂かれる▼



 おおっ!ファーはありがたい。アラクネさん達に加工してもらおう。


 そしてチャクラムかぁ......カッコイイんだけどさ......まーた扱いづらいモノを......



 さぁ次の階層に向かおう!もう森は勘弁っ!!



 景色が変わることを祈りながら進むと、次の階層は岩がゴロゴロした山道っぽいところだった。



 よしっ!!やったぜ!!



 そう喜んでいた俺だったけど、ピノちゃんの落ち着きが無くなっているのに気付いた。


 聞けばこの岩場エリアの次のエリア......

 70層からがこの子の生まれた階層らしい。山岳エリア?の次は湿原だと教えてくれた。



 俺達と一緒なら安心だよ、信用していいからね。

 と言いながら、この子が落ち着くまで撫でてあげた。


 お嬢様も心配そうにしている。優しい子に育ってくれて俺は嬉しいよ。



 その日はもう進むことを止めて、皆一緒に朝までくっついて過ごした。


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