第32話 予想できていた事と戦い
問題のモンスターに近づくにつれて、罠が多くなってくる。やっぱりこの未確認のモンスターは知能高いなぁと感心する。
罠の多いところでは、警戒をさせて疲れさせようとしている。
いざ戦闘を開始したとしても、戦いにくい位置取りになっている。
脳筋ゴリラ達は罠に四苦八苦しているので、雷の斧達が、ゴリラ共に代わり罠を解除している。
脳筋に罠の対処は厳しいみたいですね。
未確認のモンスターが、この罠を張っていると思えてきたんだろう。
雷の斧達は警戒心を高めていき、学者達はメモを熱心に取っている。
ゴリラ達はウホウホしながら舌打ちしていた。
それでも進み続ようとした皆様だけど、時間的に厳しいので今日はおしまいになった。まぁなんだ、ゆっくり休んでくれ。
◇◇◇
朝になりました。
今日がラストっぽいので、俺はちょっとご機嫌。お嬢様も嬉しそうにしている。
皆さまも普通に緊張していらっしゃるので、今日がメインイベントとわかってる模様。
さぁサクサク進んじゃいましょう!今日中にカタをつけてね!
そろそろ終わらせて帰りたいですし。
昨日と同じような感じで進んでいき、もうすぐ目的のモンスターがお目見えになる所まで来た。
そんな時、急に骨喰さんがカタカタしだす。
あっはい。
何かありそうだから用心しとけ......と仰っておられる。
なのでローブの中に三つ仕込んでるボイレコをポチり、ローブに魔力を込める。
念の為に定位置の天使を、糸を使って優しくふんわりと固定。
さぁなんでも来やがれ!!
と、意気込んでいた俺。
しかし突撃前に最終確認があった。
まぁ......今まで通りの事を再確認しただけなので、完全に無駄な時間だった。
そしてようやくご対面のお時間。
白くて小柄なモンスターとの事だったけど、俺らの前に現れたのは白くて巨大な大蛇だった。
なんか魔力が揺らめいている?そんな不思議な感覚があったので鑑定してみた。
▼妖魔蛇
もっと下の階層にいるべき魔物▼
おおっと!かなり特殊なモンスターでございました。
種族名が......俺やあんこに親近感のありまくる名前だ。備考欄みたいのは雑ですね。
とぐろを巻いてるこの段階で、明王さんくらいの大きさがあるから相当デカい......
そんな大蛇が、張り切って威圧を出しているので皆さま気圧されていますねー。
とりあえず学者達と大蛇の間に立ち、守っていますよ感を出しておく事に。
明らかにオーバースペックな敵だけど、お前らはコイツに対してどう対応するつもりなの。
チラ見してみたけど、カオスだった。
もうおしまいだぁ......助けてくれぇ......と、絶望した野菜の王子みたいな雰囲気になっている脳筋ゴリラ達。
青い顔になりながら、ブツブツと独り言を呟いている学者達。
ビビりつつも、小声でコソコソと相談をしている雷の斧の皆さま。
ここからコイツらがどんな事をするのでしょうかね......
戦力差は歴然、そしてみんなビビっている。
こういう場面をどう乗り切ろうとするのか、観察させて貰います。
この無駄な時間に焦れた蛇が、シャァァァァァと威嚇。
炎で壁を作って俺らの退路を断った。
それから大きい炎の球を複数生成して、自分の背後に浮かべている。
俺らを歓迎する為に用意してくれたのだろうなぁ。派手な歓迎ですよ。
あ、やべ。撃ってくる。
叩き落とそうと身構えていたら、学者達に思いっきり後ろから押されてしまい、白蛇の眼前に立たされる。
嘘だろ?諦めるのが早すぎるぞ。
お前ら全然抗おうとする姿勢すら見せてないやん......
わざとらしくよろけながら、後ろを振り向く。
最初に見た時のようにニタニタした顔をした学者の......名前忘れたヤツが突っ立っていた。
そしてなんかハンドサインを出している。
「どういうつもりだ?」
その顔に凄くイラッとしたので、怒ってますって感じを出しながら聞いてみる。
「戦っても勝てないだろう?それに、あまり被害を大きくすると責任問題になる!だからソロのお前がここに残って皆の為に時間を稼いでくれ!
その装備たちは惜しいですが......私達の為に役に立ってください......」
そう学者が言い放った後、二組のパーティが学者達の元へ走っていく。
あー......あのハンドサインは元から決めたあったのね。
驚きと呆れでボーッとしてしまった俺。
あ、攻撃飛んできた......
とりあえずヒョイッと避ける。
そういう事なのね......
元々こういう場面も想定して、コソコソ話し合いでもしてたんだろう。
ニヤニヤしながら「ごめんねーアレは手に負えないわ」と言ってくる雷の斧のメンバーと、申し訳なさそうに「すまない......」と漏らしたリーダー。
比較的マトモな冒険者達だと思っていたけど、コイツらも普通にクソだった。
苦渋の決断感を出してるけど、そういうのはもっと抗ってからするもんだぞリーダー野郎......
そしてごめんなさいね。お前らの発言は全部録音済みなのだよ。
脳筋ゴリラ共は「これで俺らは助かる!わりぃな!」とか、「お前のそのいい装備俺らが欲しかったぜ!」と笑顔で走っていく。
そうだね助かるね。この場だけは。
攻撃されている俺をチラ見しながら、ニヤニヤした皆さまが集まっている。
想定の範囲内だったけども、実際にやられてみるとかなりイライラした。
転移の魔道具を壊してやろうか......とも思ったけど、そのまま帰してあげることにした。
時間制限付きだけど、生きている喜びを噛み締めてね。
手に負える範囲だからまだいいけど......
俺にも手に負えない敵だったら、この子を危険に晒す事になっていた。
そこだけは絶対に許さないからな。
人間のクソさは理解しているので、囮にして見捨てて逃げる......
そこにはそれほど怒ってないよ。
「貴方のおかげで私達は助かりますよ。ありがとうございます。
ソロの冒険者は死んでも悲しむ人は少ないですし、ギルドが推してきたのでメンバーに加えましたが、ここまで大して役に立っていないですし最後に役に立ってください」
と言ってから、転移して逃げていった。
清々しい程のクズだなぁ。大蛇の炎を避けながらヤツらの口上を聞いていた。
ギルドと学者がグルで、万が一の時の囮用に俺を送り込んだんだろうな。
そうするとあの受付嬢も?
うーん......それは違うっぽいけど、どうだろう......
ギルドのヤツらの好感度は、高くも低くもしてなかったハズなのになぁ......
まぁいいか。多分始めからこうする気だったんだろう。
ギルド側もコレを知っていて斡旋してきているし、俺が無害だと思われて変なのに巻き込まれるのも面倒だ。
そうすると、アンタッチャブルな存在として認知させるのが一番いいな。
泣き寝入りなんて絶対にしないからな。
いつまでも安全な場所でふんぞり返って居れると思うなよ......
クソゴリラとクソ斧の面々には、ヤベー存在だと認知させる人柱になってもらう。
不必要にこいつと関わるな!というメッセンジャーとして。
ギルドのメンツが襲ってきたら、遠慮なく返り討ちにする。上層部が出てきた時には、威圧を垂れ流しながら
考えが纏まったので、録音を終わらせて大蛇に向き合う。
知性がここまで高いモンスターは初めてだ。
脳筋よりよっぽど賢そうだし、初手は威圧を出してみようと思う。
こちらの手札に対して、どんな対応をして立ち向かってくるのか楽しみだ。
ちょっとずつ威圧を漏らしていく。
ピクッと反応を示した後、魔法の数を増やして応戦してくる大蛇さん。
そういえば【魔力掌握】をしっかり試せていなかったので、一度ここで試してみることにする。
魔力を意のままに操る......って説明だったから、待機させている魔法の魔力を霧散させてみる......
ちゃんと出来ました!
今から射出するよって時に魔法が霧散しちゃったので、ポカーンとしている大蛇がちょっとかわいい。
次は......出してきた魔法の支配権を奪ってみようと思う。
掌握できると言う説明通りなら、それも問題なく出来ると思うのですよ。
うん、バッチリ出来ましたね。よかったよかった。
俺に向けて放とうとしていた魔法が、自分に向かって放たれて大混乱している大蛇。
でも......んー?なんだろう。
ダメージを受けてないというか、当たってる雰囲気じゃないというか......
すり抜けてるのか?
爆煙でハッキリと見えていないけど、あの大蛇には当たっていないみたいだ。
デカい図体だし、避けてるような雰囲気はない......どうやってるんだアレ。
タネがちょっとよくわからないので、次はこっちから仕掛けてみる。
骨喰さんの【空断】だけを発動させて、尻尾を切り落としてやろうと試みる。
不可視の斬撃が見事尻尾に......当たらなかった。
本当になんだこれ?ぜんっぜんわからん。
物理と魔法を透過する大蛇......無敵じゃねーか!!
どうすればいいのか......全然思いつかないわ。
相手も俺も手詰まり。さて、どうしましょう?
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