第31話 やべー物と問題の階層

 そんな不穏な雰囲気から始まったダンジョン調査依頼ですが、今現在かなり暇を持て余しております。



 なぜならモンスターを見つけると脳筋集団がウホウホ走って行き、タコ殴りして倒す。

 ヤツらが取り逃したモンスターが抜けてきても、雷の斧さん達がパーティ戦のお手本のように戦っているので全く危なくならない。



 なので俺は特に何もしない。することが無い。


 うん......しなくていいのは楽でいいけどね、すっごい暇なのです。


 片手で天使をなでなでして、もう片方の手はあけておく。ほんとは両手で撫でたり揉んだり触ったりしたいんだけど。



 脳筋ゴリラ共と堅実なパーティは、かなり相性がいいみたいで、全く危なくなりそうな場面がない。

 と言うか、こんな感じで何度か共闘してるっぽい息の合い方だ。



 まぁいいや。安心して暇してよう。


 25層を探知しながら進んでるけど、探知範囲内には謎のモンスターはいない。

 俺より鋭いあんこや骨喰さんも、全然反応しないのでそういう事だろう。



 このような感じで、全く危な気なく25、26層を探索し終えダンジョン初日は終了。




 2日目も27、28層を危な気なく探索して終了。

 特に何も起きることはなかったが、やけに冒険者共がこそこそしてる。めんどくさい事企んでないだろうな......



 3日目も29、30層を探索して終了。

 大きな扉付きの部屋にボスらしきモンスターが居たので10層毎になんかあるのだろう。

 時間はかかったけど無事に倒せたみたいだ。俺は飛んでくる石などを弾いていただけでした。

 鑑定したらボスはサイクロプスだった。



 4日目、31層からダンジョン内が広くなったので一日一層探索できたらいいなとの事。

 デカい虫系モンスターが多くて鳥肌がヤバかった。


 ゴリラ共と雷の斧達は、虫系が小さかった為、多少苦戦するも無事に乗り切れた。

 学者達からは、疲労感が見て取れるようになってきている。





 ◇◇◇





 ダンジョン調査5日目に入ったこの日、32層に足を踏み入れた瞬間から少し空気感が違った。



 空気感が変わるってこういうのを言うんだなぁって思い、ちょっと感動した。


 学者達は未確認モンスターが近いのを確信し、興奮で疲れを忘れたのか元気になっていた。好奇心と知識欲が刺激されまくったんだろう。


 でも危なくなるようなマネは止めてくださいね。



 出てくるモンスター達も、ピリピリしていてソコソコ凶暴になっている。

 ゴリラ共と斧達は苦戦しているので、そろそろ俺も出番が来そうな雰囲気を感じる。



 探知をしてみたんだけど、この階層に目標は居なさそうなんだよなぁ。

 俺とうちの子達はそう思っている。


 多分だけど、この下の階にいると思う。




 この探索中に暇な時間を持て余してた。

 モンスターや罠、隠し部屋や宝箱などの探知方法を色々考えて試していった結果、階層丸々一つを把握出来るようになった。



 やり方は簡単で、まず前方に探知を長く伸ばし、次にそれをぐるっと一周させるだけ。


 探知する道具を思い浮かべていた時に、ソナーを思い出した。

 そのソナーの画面にヒントを得て、それを試してみたらできちゃった。


 一方向への探知をぐるっと一周するやり方なので、全方位を一度に探知よりかは脳への負担は少ない。

 なのでソナーの訓練しているけど、モンスターが多いと情報量が多くなって頭が痛くなる......


 特に虫だ。


 数は多いわ小さいわで、この階層は地味に辛い。


 宝箱みたいなのもしっかり探知できたので、ヤツらが見つけられなかったらこっそり回収しようと思う。



 他の二パーティはそんな事を知らないので、警戒心を高めて緊張感バリバリのまま探索している。




 探索中のヤツらに着いていく。するとモンスターの群れとかち合った。




 いつも通りサーチ&突撃の脳筋ゴリラ達が、敵の赤いゴリラを見つけて戦いを始めた。


 汚ゴリラVS赤ゴリラ。


 青いゴリラの強化種でレッドゴリラという名前......というのを学者が勝手に話してきた。

 ソイツ仲間呼ぶらしいから気をつけてねー。




 あ、仲間呼ばれた。


 赤ゴリと青ゴリが、ウホウホしながら汚ゴリに向かっていってる。


 雷の斧が見かねて応援に行くのを見届けつつ、俺は待機している。



 学者達が待機って言うから仕方ないよね。



 十五分程、ヤツらがウホウホしてるのを生暖かく見守った。


 疲れきってはいるが、やり切った感のある汚ゴリラ共と、呆れている斧達が帰ってきた。



 しばらくその場で休憩となり、俺が警戒にあたる。というか、俺しか元気なのがいないので消去法。


 まぁ近くに何もいないけど、警戒してますよ!って雰囲気は出しておく。



 汚ゴリラ達から、お前サボりすぎだ!とか、お前何もしてねぇな!とか文句くるかな?と思っていたけどなんもアクションはない。

 きっとヤツらは、前線で肉体言語してないといけない病なんだろう。



 全員緊張感やらなにやらと、連日の疲れが重なったのか......なかなか回復する気配をみせない。


 残念だけど、今日はここまでらしい。

 学者共はしょうがないだろうが、冒険者共は情けねぇな!



 皆さんぐったり。仕方なくトラップを張ってあげてこの日は終了。








 ......と見せかけて、皆が寝静まったから宝箱を取りに行く。

 ここまで来る途中、明らかに隠し部屋っぽいところがあった。

 そこは、絶対ヤツらには見つけられないと思う。



 隠し部屋ってソソるよね?


 出てくるモンスターは、遠隔から狙撃して終了。倒すと素材になってドロップするという不思議空間なダンジョンさん。


 人体もしばらくすると装備品を残して消えるらしいので、日本にあればヤのつく人御用達スポットになりそう。




 隠し部屋に到着し、宝箱とご対面!

 人生初の宝箱ですよ!ドキドキしますね!!


 いざオープン!



 ......ん?.....宝箱の中に15センチ程の箱??



 鑑定さんお願いします。



 ▼転生の小箱


 この小箱に死したモノの一部を入れると新しい生を与えられる

 この小箱に入る大きさならどんなモノでも入れられるが一種類のみ

 転生の完了と共にこの小箱は壊れる▼



 oh......


 これ絶対やばい物やんけ。


 見なかったことにして、収納に死蔵しておくべきモノだと思う。



 うん。戻って寝よう。





 ◇◇◇





 翌朝、皆さまはそこそこ元気そうになっていた。

 ゴリラ達も今日は落ち着いているので、普通の盗賊に見える。



 トラップがあるから動き回れなかったらしい。


 申し訳ない......

 トイレ行きたいんだよね。ソワソワしてるから丸わかりですよ。



 挙動不審だった彼らは落ち着きを取り戻し、飯を食べた後に出発した。




 探索してない部分を探索するが、昨日俺がモンスターを間引いたせいもあって、この日はサクサクと進んでいった。



 そして、やっと本命と思われる33階層に進む。




 入った瞬間、おぉ!これは絶対居るな!と確信できた。

 とりあえず探知してみたら、奥の方に特殊な魔力の反応。当たりだろう。


 ......森から抜ける時くらいのウチの天使より少し小さい程度の魔力なんだけど、お前ら大丈夫か?



 その特殊な反応のする生物の近くに......なんだろコレ?落とし穴みたいのがある。


 ここから上へ登ってきたのかしら?


 明らかに敵の難易度がヘルモードだもん。トラップを利用して登ってくるとはやりよる。


 知能は高そうだから、俺は警戒度を少し高める。



 そんなこんなで陣形はそのまま。先へと進んでいく。

 ゴリラがゴリラ地獄を反省したらしく、ウホウホ感が減っている。

 ほんとに反省したのかね?君たちはもう少しマトモなゴリラになってくれ。



 学者達は緊張と好奇心で変なテンションになっているので、ウホウホの友にならないでおくれやす。



 モンスター達は......どういう状態なんだコレ?怯えている?


 まぁ明らかに、下層のモンスターがいたらビビるだろうな。不意打ちで視察にきたお偉いさんを相手取るヒラ社員みたいな心境であろう......どんまいモンスター達。




 探索を進めていくと、ストレスで発狂したモンスターが襲いに来る事が数回あった。

 戦ったり、緊張したりで疲れている皆様。本命前に小し休憩をとる。



 多分このペースだと、今日中には着かなそうだなと思いながら俺も休む。





 休憩中にガッツリともふもふして大満足な俺と、もふもふされて大満足なあんこ。


 お外に出たら一日中遊ぼうね。草原とかで。



 ゴリラ達は武器防具のチェックと手入れ、軽い食事をしていた。誰だお前ら。


 冒険者としての行動はしっかりやるんだな......と思ったけど第一印象が悪すぎたからイマイチ評価があがらない。



 雷の斧達も似たような事をしているけど、なんか学者達とコソコソやっている。

 ......まぁもういいや。今更だし別に放置しておいてもいいか。




 面白みの無い休憩だな。

 レポートみたいなのを書いてる人がいるのと、道具と魔法具をチェックしてる人がいるだけ。



 さぁこれからどうなるのか。

 俺とウチの子にだけは被害出さないでほしい......とだけ願っております。


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