第30話 依頼スタートと面倒なヤツら
はい、おはようございます。今日からダンジョンへ行く事になっております。
ちょうど宿屋の滞在期限も今日で終わりなので、女将さんに礼を言って長期の依頼に行く事を伝えた。
学者達と冒険者でダンジョンへ潜る依頼を今日から受ける訳でございますが、面倒事が起きないように祈るばかりです。
行くところは王都からそれほど離れた所ではないらしく、名前はタナトスダンジョンと呼ばれるところ。何階層まであるかは不明だけど、現在46階層まで攻略が進んでいるらしい。
それで、問題の未確認モンスターが出没したとされるのは30階層付近で、そのプラマイ5階層を虱潰しに調べあげる予定だそうだ。
移動に約一日使い、攻略に一週間以上、最長二週間を予定している。
目的の階層までは、ワープ出来るダンジョン産のアイテムを用いるとの事。
早い段階で見つかれば早く帰れるっぽいので、早く終わって欲しいと切に思う。
はい、門に到着ですよー。
ㅤ日本人の性で十分前に来たけれど、既に学者っぽいヤツらが六人と冒険者が五人居る。
多分この集団で合っているだろうけど、間違えていたら恥ずかしいので、とりあえず挨拶をしてみて反応を伺っておこう。
「おはようございます。ダンジョン調査のグループはここで合っていますか?私は依頼を受けた冒険者のシアンという者です」
「ソロで犬を連れた冒険者......貴方の事でしたか......若そうですねぇ。
私は調査団のリーダーで学者のダンテスといいます。どうぞお見知りおきを」
ニヤニヤとしながら舐め回すように見てくるおっさん。多分アラクネ産ってことに気付かれてる。
やばいなぁ......ファーストコンタクトから既に不快感が限界突破しそう。
他のオッサン共は遠慮なくガン見かよ......アラクネ装備に興味津々なご様子だ......
欲しいんなら頼んでみるか?メイドさん喚んであげるよ。礼儀と対価がしっかりしてればきっと作ってくれるよ。
......とか考えたけど、あの子たちに迷惑だろうから止める。
そして丁寧な態度もしなくていい気がしたからもうしない。敬語っぽいのは一応まだ継続しておく。
「どうも。まだ全員集まってないみたいなので待たせてもらいます」
そう告げてから、少し離れた場所に立って待つことにした。
あと冒険者が一組来る予定らしいのだ。
既に来ている冒険者にはチラッと視線を向けられたが、すぐ仲間の方に視線を戻してヒソヒソと話をしている。
冒険者同士なんて手の内を晒す訳はないし、無干渉が基本だろうからコイツらは今のところ気にしなくてもいいと思っておこう。
なんか企んでるなら真っ向から潰してやればいい。
今いる人は俺には無関心なのは嬉しい。
待っていると集合時間になった。
しかしもう一組がこない......
時間も守れないとかアホか。昇格用の依頼に使われるくらいの依頼なのにな。
結局三十分遅刻してきた。
冒険者というよりも、小汚い盗賊みたいと言った方が真実味のある汚い筋肉が六人。
ん?アイツこの前の間男じゃねぇか!クソみたいなヤツらだな。
悪びれる様子もないし不愉快だなぁ......
依頼人側が苦言を呈しても何処吹く風。
学者とゴリラ、どちらも不機嫌なまま出発となった。序盤からほんとに何してんだよ......
会話も特になく進んでいく。俺は馬車の後ろをちんたら歩きながら着いていった。
グループ毎に固まっている他のヤツら。筋肉共は俺の装備をチラチラ見てきた後にコソコソ話をしている。
視線が不快なので眼球に闇糸を突き刺してやろうかと思ってしまったが、すんでのところで踏み止まる。
ソロ参加の俺の事はぼっちだ......と思われるだろうが特に問題はない。
あんこがいるし他人なんていらないもの。
全然モンスターが出ない楽な道程を進んでいく。
今現在の評価は多少まともな方の冒険者と少し話す事にした。
連携とか役割とか決めとかないと、いざという時にどう動けばいいかわからないってのを、ついさっき気付いたからだ。
なんでこんなのを忘れてたのか......
あのバカ冒険者が作った空気のせいだと勝手に思っておこう。
先に来ていたまともな方は《雷の斧》というBランクパーティの冒険者達。
男三人、女二人の結成して六年目だって。
そのリーダーのコルトって人にバカどもの話と役割分担を聞いてみた。
パーティ名はそのままの呼び方で、厨二チックなルビは振られないらしい。
バカ冒険者達は《飢える狼》という名前でCランクらしい。
戦い方はゴリゴリの脳筋戦法しかしないらしい。めんどくせぇヤツらだ。
バカ共は前で脳筋して、雷の斧達は真ん中らへんで前と後ろを気にしながら戦うらしいので、俺は学者達を守るようにしてればいいと言われた。
野営については専用の魔物避け魔道具があるらしいので、人害だけ気を付ければいいとの事だ。
なので見張りの時間とかは個々人でやってくれ、朝は八時になる前までに起きてくれだって。
楽でいいわな。煩わしくないし、他人に起こされたらイラッとして瞬間的に何しちゃうかわかんないし。
聞きたいことは聞けたので、礼を言い馬車の近くへ戻る。
移動中は馬車付近、ダンジョンではおっさん達のお守り。
絡まれなければいいけど。そして近くに寄られたらボイレコをポチっとしとけばいいのだ。
考え事をしている間も、ゴリラ達は相変わらず前方でウホウホしている。このまま大人しくウホッててくれ。
脳筋ゴリラとは話ができないだろうからこのまま絡まないでね。
雷の斧さんはリーダーのみ話が出来るのを確認。他はまだ知らない。
対人関係で何かあれば、このリーダーに伝えたりすれば解決だな。
問題を丸投げしても問題無い人材は貴重だから、パーティメンバーの皆さまは壊れないように大事に扱ってくださいね。
モンスターがほとんど出なかったので、予定時刻よりも早い夕暮れ前に野営予定地へ到着した。
見張り等は各々立てるという事で夜は御役御免。ダンジョン内だけ守ればいいってのはすごい嬉しい。夜は学者を斧が守るらしい。
朝八時に出発するのでそれまでに用意を終わらせておくように伝えられて初日が終了した。
脳筋が余計なことをしなければ何事も無く過ごせるはずだ。
一応全員の前でトラップの説明をしておく。デモンストレーションで木を一本バラした。
これで説明責任は果たしたからね。
知らずにこっちへ近づいてバラバラになったら可哀想だから。一応説明してる所をボイレコで録音しておいた。
ゴリラ共と学者連中は半信半疑な感じだけど、信じるか信じないかはあなた達次第です。後は自己責任でお願いしますよ。
起きたら肉片が転がっていました......
お前のせいだ!お前が悪いんだ!みたいにならない事を祈っております。
しっかりトラップを張ってマイテリトリーの完成!
さてゆっくりしよう。初日から絡んでくるなんてないだろうきっと。
大方ダンジョン内や帰り際で油断した隙に......ってのが常套手段だろ、きっと。
天使と一緒にご飯を食べて、闇魔法でカーテンを貼って入浴。その後は普段通りに過ごして就寝。
◇◇◇
朝目が覚めて周りには死体が......という事は無かったので一安心。
時間を見てみると六時半だったので、ゆっくりとコーヒーを嗜みつつサンドウィッチを食べまったり。八時頃に出発と言っていたので余裕だろう。
八時になる十分前に皆の前に顔を出した。
脳筋ゴリラ達は八時キッカリに起きてきた。このクソゴリラ共早く準備しろや。
出発が遅れて学者達はまた怒っていたが、埒が明かないのでそのまま出発。斧が狼に注意してその場は終わりとなったが迷惑にも程がある。
真面目にやっている人間にいつだってしわ寄せがいくこの風潮は改善されるべき事だと思う。厳罰を与えるべきだろ。
バカどものゴネ得を許すな!!
はぁ......これから初めてのダンジョンだ。俺とあんこだけには危険な事がないようにしなきゃな。
ダンジョンに入ってすぐにワープの魔道具で25層に移動し、ダンジョン内での注意点と役割分担を明確にする。
昨日斧さんが言っていた通りの陣形で落ち着いた。
注意点としては......
・突出しすぎない
・単独行動はしない
・指示にはキチンと従う
・目当ての魔物はなるべく傷を付けすぎずに倒す
・誰が仕留めようと報酬に差は出ないので功をあせるな
と小学校低学年の子に言うような事を言われた。まぁ誰に向けて言ってるのかは猿でもわかる。
ダンジョンに入る前に説明すべき事だったが、入る前はそんな空気ではなく、ダンジョンに入り気が引き締まった時を見計らって言ってきたんですね。
そんなくだらない事を聞きながら探知や、魔力の動きなどを確認していく。
特に地上と変わらないので問題はないと思われる。
ダンジョンの中は洞窟の迷路みたいな感じの空間。
そんで、不思議な感じのする力の流れがあった。
これはダンジョン特有のナニかか?これが後で悪影響を及ぼさないといいな。気には掛けておこう。
未確認のモンスターは、小型で体色は白、不思議な技を使ってきて、誰も正体を掴めていないそうだ。
遭遇してみないとわからないけど糸で縛れば問題は無さそう。
さぁダンジョン調査を始めようか。
なるべく早く終わりますように!!
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