第29話 依頼受注と下準備

 二日間しっかりと休みを挟んだお陰で精神もばっちり回復したので、今日からランク上げを再開していくとします。



 飯を食った後に宿を出る。


 今日はピンク色のリボンをつけてご機嫌なお嬢様。可愛さが限界を突き抜けている。



 肩に乗って、俺にぺったり貼り付いた格好でリボンを誇らしそうにしてドヤっている。

 この子がキュートすぎて部屋に戻って触れ合いたくなるぅぅぅぅ!



 このままお部屋デートかお散歩デートに移行したい......けど昨日しちゃったしな。

 諦めてギルドへ行きますか......




 ギルドに着いたので、エミリーさんの所へと真っ直ぐ向かう。

 なんかいい依頼があるかなー?



 二日間空けたけれど、なにも言われず笑顔で対応される。自営業みたいなもんだしね。

 元気さと笑顔に、毒針でちくちくされるようなダメージを受けつつも、依頼を物色していく。



 おっと、私のオススメ!と書かれてるのがある......あざといなぁ......



 なになに......?ダンジョン内の異変調査へ同行し護衛する......と。

 怪しいけど、ちょっと気になったので依頼の内容を聞く。



「このダンジョン調査班への同行って、これは何をすれば依頼成功と判断されるの?」



「これはですね、ダンジョン内で新種の魔物が発見されたという情報を受けて調査に向かう学者様達の護衛ですね。

 魔物を見たと言われる30階層付近へ無事に送り届け、調査中の護衛、ギルドへの帰還までの依頼です」



 オススメに食いついた俺を見て笑顔の圧力があがる。そろそろ急所に当たって即死するよ?


 そして、これはかなーりめんどくさそうな依頼だった。


 よし。



「じゃあこれは無しで」



 釣り餌に興味を持っていたので、後は食いついた瞬間に合わせるだけ......とでも思っていたのだろうが、釣りとはシビアなモノなのです。諦めてください。



「ちょっとお待ちください!護衛、複数人との連携や協調性、礼儀などの三つの確認がいっぺんに出来るので、シアンさんにはこの依頼がお勧めなんですよ」



 いやぁ、だって......ねぇ?

 学者って絶対俺の装備や、ウチの天使に突っ込んでくるの目に見えてますやん......


 この依頼が俺にピンズドなのはわかるんだけど......

 撒き餌が多すぎて水が濁ってますよ。



「俺の物とこの子に対しての詮索禁止、俺に対して不利益になる行動を行なった時の反撃の許可をください。それなら考えます。

 珍しいこの子や、俺の装備類に対して興味を持たれるのは確定してるようなものなので」



「詮索禁止は多分大丈夫ですけど......反撃とはどれくらいの事を?」



 あ、詮索禁止はイケるっぽいのね。ならばいいかも。



「威圧をぶっぱなすだけです。あまり酷いことをされなければ怪我をさせるつもりはありません」



 考え込んだ後に「少しお待ちください」と言って席を離れて行った。


 相談でもしてるのかな?是非とも意見が通ってほしいところですわ。




 ~十五分後~




「お待たせいたしました」


 と息を切らしたエミリーさんが登場。

 結構待たされたのでござる。さて、どういう結果に落ち着いたのでしょうかね。



「お互いに不干渉で......となりました。自分の仕事を全うしてくれれば問題は起きないだろうと。

 ですが、個人的な付き合いはしても問題はありません。ただし、大きな問題が起きたとしてもギルドからの擁護はあまり期待できませんのでご了承ください。反撃の許可と言ってしまいましたので......。

 この件を通して起きた問題は、あちら側の管轄下になってしまいます」



 なるほど、そう来ますか。


 自己保身に走りまくっておりますね。

 ある程度こちらに都合を合わせるように見せかけておいて、実際に何か問題を起こそうともあちら側の意見をごり押せるのか。


 これくらいならボイレコでも持っていけばそうそう窮地には陥らないだろう。


 水掛け論ならこっちが不利になるだけだろうが、音声という明確な証拠さえ示しておけば、嘘発見器持ちの審議官を引っ張りだせるだろう。

 ボイレコの事は魔道具と言って誤魔化せばいいし、信じないのならその場で録音したものを聞かせてやればいい。



 それさえ通らないクソみたいな団体や国ならば、そのまま敵に回してしまえばいいや。

 同じ土俵に立つことさえ許さずに上から圧力かけて封殺しようとするのなら、こっちも力を振るうことになんら躊躇いなんてない。


 為政者が居なくなろうが、民にはなにも影響は起きないだろうし。すぐには。


 それにああいう輩はすぐにニョキニョキ生えてくる。もっと真面なヤツが生えてくる可能性もあるしね。



「了解です。それと聞いておきたいのですが、ギルドとしては問題が起きた時にこちら側に非がなく、こういう事があったので問題が起きました......という証拠があればどう動きますか?」



「明確な証拠があるのでしたらこちらとしても助かります。味方になる事ができますね」



「それが聞けたならよかったよ。じゃあこの依頼受けさせてもらうね」



「ではこちらが資料になります。出発は明日です。

 今日来てくれなかったらどうしようかと思っていましたよ。顔合わせは集合時に、集合場所は王都の正門前になります」



 なるほど、こちらの情報は既に流されていると思っていいな。俺がこの依頼を断固拒否していたらどうしたんだろうか。

 それに普通は前日に顔合わせとかするもんだろう。


 対応と根回しが完璧だったな。きな臭いっすよ。


 まぁいいか。明日からの為に買い出しでもしとこう。

 ポーション類を仕入れとけば、何かあった時に恩を売れるかも。






 さぁやってまいりましたよポーション屋。

 上級~下級を五本ずつ、状態異常回復を五本、洗浄と再生を三本ずつを購入した。


 予想外の売上で無駄に上機嫌になったポーション屋から、爆破ポーションEXという危険物をオマケに貰った。



 きっと置いておくと危ないから押し付けたんだろう。だって効果こんなんだし。



 ▼爆破ポーションEX

 瓶が割れると起爆し大爆発を起こす

 EXの名に恥じぬ爆発力と破壊力を秘めている▼



 ね?厄介払いにしか思えないでしょ?

 ダンジョンという閉鎖空間で使ったら無事ではいられないはずなんですけどねぇ......

 買ったポーションを収納した所を見られてからオマケがついたので、きっとそういう事だろう。



 他にやる事と言えば......召喚能力がおかしいのを見られない為に、ご飯ものや飲料をあらかじめ準備してから収納に入れておく事くらいかな。



 戦闘能力は戦闘になった時に見せていいかもな。俺に手を出すな的な牽制の意味を込めて。



 ここまでは問題ないな。

 他になにか気をつける事があるだろうか?



 罠は実際に感知した事がないから現状はよくわからない。解き方もわからない。


 だがそれは糸でぶち壊せばいいし、スカウトみたいな役どころのポジションの人はいるだろう。



 対人は......俺がストレスを我慢すればいい。

 明らかに頭のおかしいヤツがいれば、威圧して黙らせればいいだろう。

 方向性を持たせた威圧をできるようになったので、ピンポイントで脅せる。


 あとは、ボイレコを数個、ずっと懐とかに忍ばせておけば、必要な時に録音しておけて証拠として使えるだろう。


 寝込みを襲われない為に、寝る時には糸を仕掛けておけばいいし、トラップ仕掛けておきますよ!と宣言しておけば、俺を狙ってきた奴がバレバレで、尚且つバラバラに散らばるだろう。


 あんこは肌身離さずべったりくっついてもらっておけば、危険な目に遭う事はないと思う。俺も幸せだし、あんこも嬉しいと思う。



 裏切りっぽいのに遭ったらわざと引っ掛かった後でギルドに戻り、はーいこんにちは!裏切ってくれてどうもありがとう!って感じのをやればいいだろう。


 その後の展開は見せしめ感を強めるか、残酷感を強めるか、追い込みまくった挙句襲わせてから殺るか......それはその時次第でいいか。



 アラクネ産の装備さえあればダンジョン内でも防御面、快適さは申し分無し。

 骨喰さんには斬れぬものなどある気がしない。つまらぬ物などもスパスパ斬ってしまうだろう。



 ダンジョン内には入るのが初めてだから、入ったらすぐに探知と感知を試しておけば対策も立てられるな。



 よし。問題は無いな!



 なんかあれば、その都度落ち着いて対応すればいいだろう。いつでもクールにいられるかは謎だけど。



 さぁもう考え事は終わり!サンドウィッチを量産しておくとしよう。



 メイドインジャパンのレタス、トマト、オニオン、チーズ、ハムと調味料をバターとマスタードを塗ったパンに挟むだけの簡単な作業だ。


 ハムの代わりに焼いたベーコンや目玉焼きのサンドウィッチも用意。


 これなら片手で食べられるし、不味いもんを食う必要も無くなる。


 最悪の場合はあの劇物を食えば生き残れるし......食糧難は俺とは無縁なのだよ。



 よし。とりあえずこれで準備は終わったし、ギルドから貰った資料を読んでから、明日に備えてゆっくり休もう。


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