第25話 猿退治と昇格

 実験をして色々な事がわかった。


 結果、やっぱり俺は人里には馴染めないし、無理をしてまでそこに馴染もうとも思っていない自分がいる。


 永住できるひっそりとした場所の発見が最終目標なのは、これから先もう変わることはない。


 フラフラと根無し草な生活をするよりかは、どこか一箇所に腰を据えたいと思うことは別におかしい事ではないでしょ。



 そしてもう一つの目標というか願望。


 回復手段の検証として、出来ることならエリクサー的な位置付けの最上級のポーション系を二本と、聖女的なポジションの人から回復魔法を受けてみたい。


 この二つの回復手段への体の反応がわかれば、怪我に対する考え方が変わる。



 あ、あとは闇魔法使いの扱いもか......


 旅をしているうちに問題は他にも浮上するかもだけど、今重要と思えるのはこれだけかな。



 よし。シンキングタイムはここらで止めて、猿を殺ってさっさと帰ろう。





 五分程探知をしながら走っていると複数の反応があった。

 十数体の反応があるけど、これは猿で合ってるかな?向かってみよう。


 間違えていても、そいつらを狩ってストックしておけば、依頼が出てるのを見つけた時に即提出してしまえばいいでしょ。




 おっ!見つけた!

 お猿さんが十二匹...あと青毛のゴリラ?が三体いる。


 ......これが青毛のクマだったらなぁと思わなくもないが、今のところもう試したい事もないので即狙撃っ!




 はい終わりました。


 猿は確か尻尾だったな。残りの残骸は消し飛ばす。ゴリラは回収しといて名前を聞こう......

 あ、あの回収したまま忘れてた鳥さんも。



 予想外にサクッと終われたし、やる事もないので雨が降ってくる前に走って帰ろう。濡れるのは嫌だしね。





 帰るために走っていると骨喰さんがカタカタとしだす。はい、注意しときます。


 感知しときますねー。

 骨喰さんの悪意感知センサーみたいのが有能すぎる。




 森の出口付近に着いた。俺も探知できていますよ。


 あー複数の冒険者がいてなんか話をしてるわ......めんどくさっ......


 明らかに俺ら狙いのクズ共が五人いる。


 会話を聞く限り......



 ・犬を連れたガキを殺す


 ・犬と武器、衣服は高く売れそう


 ・報酬を寄付してたから金もかなり持ってるだろう


 ・あの子掘りたい


 ・俺は掘られたい





 .........ほぅ、実に不愉快だ。

 特に二番目と最後の二人。個人的な事で怒りを感じるのは久しぶりな気がする。



 ハッタリの黒い火出して、そっちに目線を向けた瞬間全員の膝から下を片側落とそう。後はその時の気分次第だ。

 背後になんかいたら面倒だし、尋問はしっかりしておくべきだな。



 ギャハギャハと下品な笑い声が煩い。ゴブリンみたいなヤツらだな。


 黒い火を放ち、そちらの方に目線を固定させて膝をスパッと切断。

 そこからの闇糸で縛って止血......どうせだし闇糸から火を出す演出をしておこう。

 誰かの命令で来たのなら全面戦争だ。与した者は全滅させてやる。



 あー......今度は悲鳴が煩い。



「やぁ!こんにちは。

 なにやら楽しそうにお話してましたね。どうして俺を襲いにきたのかな?

 さて......さっき話してた事をもう一度話してください」



 ......誰か喋れや。さっきまでギャーギャー騒いでただろ。

 アシガァァァァとギャァァァァしか言わない。



「なんで誰もお話が出来ないんですかね。じゃあ一番端っこのあなた。なんてお話してましたか?......ねぇダイン君」



 鑑定して名前を見ておいた。こいつらの名前はこんな感じ。


 ▼ダイン

 人族 17歳

 職業:冒険者▼


 ▼ゲイル

 人族 26歳

 職業:冒険者▼


 ▼ジャック

 人族 20歳

 職業:冒険者▼


 ▼カマー

 人族 21歳

 職業:冒険者▼


 ▼ゴルド

 人族 28歳

 職業:冒険者▼



 鑑定結果はコレだ......下2つの発言したやつは丸わかりだった。


「言語が理解出来ないんでしょうかね......

 じゃあ2人程消えて貰いましょう。ゆっくりと」



 ゲイルとカマーをゆっくり暗黒空間で削っていく。



「はい。喋ってくれるならコイツらみたいにはしないよ。喋る気になったかな?ダイン君」



 ブルブルするだけのマナーモードになっているので、これ以上は何しようが無理そう。



「んー喋れないみたいだね、じゃあジャック君はどうかな?何をお話してたの?」



 そう言ってダインをブラックホールにゆっくり吸わせていく。



「ぼ、僕は......か、金を持ってそう......と」



 ちゃんと喋れたね。



「なるほど。確かにお金は持ってるね俺は。でもどうせ襲うなら盗賊の方が健全だったかもね。じゃあ次はゴルド君どうぞ」



 ビクッとした後に話し出した。



「おおおお......俺は......ほ、掘られたい......と......」




 てめぇぇぇぇぇ!!!じゃあさっき消したどっちかは名前負けしてたんかい!!

 でも発言は許せないから順番が変わっただけだ。



「そっか」



 そう一言だけ発してから【呪骨喰】を強めに発動させて斬りつける。



 後は残った彼に背後関係を聞こう。誰かに狙われ続けるとかだるい。


 ヤツに目線を合わせつつ、ちょっと威圧を漏らしながら聞いてみる。



「この集まりはなんだったのかな?

 ......あのバカ共の独断?......それとも誰かが背後にいる?素直に話してくれ」


 独断っポイ反応だったけど、どうなのかな?



「ぼ、僕達は二つのパーティで、あと三人いましたが話しを持ちかけたら逃げました。この計画は金欲しさにやりました......」



 威圧を強めて最後の質問。



「嘘は吐いていないな?」



「はいぃぃぃ」



「わかった。それじゃあお疲れ様」



 コイツはあの中じゃまだマシな発言してたんだよな......

 でも狙われたからには生かしとくのは無理だわ。なので一瞬で消してあげた。



 心は痛まなくても心が疲れるんだよ......


 二度としないでほしい。



 はぁ、帰ろう......




 テンションだだ下がりのまま門を通過する。


 もふもふしながらギルド到着して、エミリーさんに討伐の完了を報告。



 なでなでしながら場所を移動して、そこで討伐部位証明を提出して確認をしてもらう。



 肉球をもみもみしていたら、やっと気持ちが落ち着いてきた。



 確認中のお姉さんに、青ゴリラと素早い蛇について聞いてみる。



 蛇はBランクでミラージュバイパーと言う名前。幻影と思えるくらいの素早さで襲ったり、逃げたりする蛇らしい。発見も討伐も難しくて、その蛇革は高級品として扱われている。

ㅤ強さ的にはCランクだけど、早すぎてCランクだと難しいのでBランクらしい。


 革製品ってなんか無性に憧れるな。



 アラクネさん達にこの革でブーツとか作って欲しいかも。あの人達の万能さなら革製品作れるよね?きっと。



 青ゴリラはCランクでそのまんまブルーゴリラ。群れていると、とても面倒くさい相手で、すぐ猿とゴリラを呼ぶらしい。



 青ゴリラも提出していいか聞いたら大丈夫らしいので、証明部位の右手だけ三本収納から出し切り落として収納を閉じる。



 後ろを向いてやったので何をしたのかは見えてないだろう。血が飛び散っているけど。



 オーガと猿を確認し終えたエミリーさんに、ゴリラの討伐証明部位を提出した。





 そのあとは報酬を貰いに受付へ戻り、Cランクに上がったと報告を受けた。



 実力は確認したし、規定ラインの評価までは達していたが、ギルドに加入して間もないので様子見をしていたらしい。


 ソロで、しかも短時間であの数を討伐してくる様なヤツがDランクでシコシコしてるのはギルドの損失だ!そんなんやるよりBランクの依頼処理してくれ!って理由でスピーディなこの昇格になったらしい。



 俺は昇格がありがたい、ギルドは上のランクの依頼をサクサク終えれる......うん。Win-Winな関係は嫌いじゃあない。



 Bランクの依頼受けれる立場にするんなら早くBまで上げろや!と言いたいけど、実質上から二番目のランクだから簡単に上げるのは厳しいらしく、試験とか面接を突破しないといけないらしい。めんどい......


 教養や礼儀、協調性が必要なんだとか。

 元だけど日本人の教育と、社会の歯車能力なめんな!ちゃんと出来るわ!


 そんな事を言うのなら、ランク下位のクソ共を最初からしっかり調教しとけよって思うんですよ。



 資料室の閲覧許可さえ貰えればなんでもいいのに、なんでこんなに色々やんなきゃいけないのだろうか!!


 はぁぁぁぁ......郷に入っては郷に従えと言うけど、これはかなり面倒くさいなぁ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る