第23話 依頼終了と豚野郎

 裸マント姿の女性二人を連れた俺は、視線の暴力に晒されながらもギルドへ入っていった。


 依頼を受けた時にいた受付嬢が、俺と女性を見て驚いた顔をしているのを見つけたので、その子に依頼完了の報告と女の子を保護したのを伝える。



「オークの集落壊滅はちゃんとやってきた。この子達はそこで見つけた被害者だから保護をお願いしたい。この子達に何があったかは、保護した先の方で頼みたかったから俺は何も聞いてはいない。

 多分女性が相手の方が話しやすいだろうし」



 と小さな声で伝えた。気配りするのは少しめんどくさい。



 この子に呼ばれて来た女性職員なのか、受付嬢仲間かはわからないけど、連れてきた女性を別室に連れて行ったので、あとのケアはこのまま任せてもいいっぽいね。



「討伐証明の鼻はどこに出せばいいかな?」



「ではこちらでお願いします」



 そう促されて着いていった先は倉庫みたいな場所で、何体かの討伐された未解体のモンスターが置かれている場所。



「ここに討伐証明部位をお願いします」



 血に汚れた布が置かれた場所を指差していたので、そこにボトボトと収納から出していく。結構多いな......



「荷物が無いので収納持ちと思っていたのですが、普通の収納よりも高性能のような気がしますね......

 こちらをチェックしますので少々お待ちください」



 普通の収納を見た事がないからよくわからない。けど高性能であるならそれはいい事だろうな。




 こんな汚い場所なのは気になるけど、フードの中で大人しく待っててくれたあんこを膝の上に乗せて、こんな場所で出してごめんね......と謝りながら撫でていく。




 しっかしまぁ......こっちに来てから初めて女の裸体を見たなぁ。

 俺も男だ。いいお年頃でヤりたい盛りの。


 だけど、こっちに来てから全くと言っていい程性欲が湧かない。


 朝の起床はちゃんとしてるので機能不全ではない。

 しかし女の裸を見ても全くムラッと来なかった......あっちでは絶対に超美人と言える女の子の裸だったのに。


 これは......まさかとは思うが種族が変わった影響なのか?それとも俺の考え方が変わった影響か?


 この歳で枯れたとは言いたくないんだけど、俺にとって最も大切なのはこの子と触れ合っている時間の方なので、特に残念だとは思っていない。



 まぁそんな事は、深く考えなくてもいいかなぁ。

 別にする事しなきゃ死ぬって訳でも無いんだから気にしなくてもいいや。シたくなったらそん時はプロに処理してもらおう。




 お、ここかな?今日はここがいいのかなー。

 耳の付け根とマズルらへんをカリカリするのが気持ちいいらしく、溶けたようにグダーっとしてきて可愛い。



 んー......モンスターを狩ったり、人と触れ合ったり、人間社会に無理に溶け込もうとするよりも......やっぱり俺は、この子と触れ合えるこの時間の方が好きだから現状を無理に変えなくていいな。




 そういえば、盗賊の時のように功績さえあげれば飛び級で上がることもあるという事だし......

 他の人には強いであろうモンスターをこっちが勝手に狩ってきて、そのことを事後報告で提出すれば早く上がってくれるというのもあるのではないか。




 と思った考えはすぐに霧散した......


 だってモンスターたちは俺から逃げていくので全然遭遇しない。

 やろうとすれば遠隔からスナイプして殺れるけど、そこまでして狩ろうという気力はない。

 アホな事していない温厚なヤツは狩りたいと思えないしなぁ......




 あーごめんごめん。考え事しちゃってた......


 撫でる手が緩んでたね。ごめんってば。


 ほーらもっと撫でちゃうぞー。君の好きな箇所をいっぱい撫でちゃうよー。



 よーしよしよしよしよし......ここがいいんですねー。よーしよしよし......






「あ、あのー......そろそろよろしいでしょうか......」


 困惑した顔のお姉さんがいた。ごめんね。

 いいとこだったのに邪魔すんな......とは思ってないよ。




 くっ......殺せ......手を止めちゃった俺を......そんな、そんな悲しそうな目で俺を見つめないでくれ......



 この件を早く終わらせて部屋でイチャイチャしよう。だからちょっとまってて!!




 泣く泣く定位置に入ってもらい、受付嬢に話を進めてもらう。



「オーク六十二体、オークファイター三体、オークガード三体、オークプリンス一体の討伐を確認しました。

 ヤツらの巣はどうなされましたか?」



 よく鼻だけでわかるな......鑑定か?試してみよう。


 ......あれ?今、ちょっと言葉遣いがおかしくなかった?気のせいかな?



 ▼オークの鼻

 攫った男も女も食べてしまう股間が本体な種族の鼻▼



 ▼オークプリンスの鼻

 オークレイパーとでも名前を替えた方がいいと思われるヤツの鼻

 位が高いほど早く獲物にありつける▼



 鑑定できたわ......でもなんか言い方が怖い。鑑定さんまで怒っていらっしゃるんですか?



 オークやゴブリンという、ファンタジー界の女の敵筆頭はやっぱり嫌われてるんだなぁ......





 .........そしてあの死んでた男性三人は。



 ご冥福をお祈りします。えぇ......心から。




「巣があった場所は何も無い土地になってますよ。汚くて臭くて不快だったからストレスをぶつけましたね」




 そう言ったら笑顔を見せてきた。豚野郎がそんなに嫌いなのね。



「アレらは残していても害悪にしかならないので見かけたら排除を心掛けてください。ゴブリンも同様にお願いします。

 では精算を致しますのでカウンターへ行きましょう」



 この子の過去に何があったんだろうか。訊ねたらめっちゃ鬼気迫る顔で語ってきそうで怖いから聞かない。


 大人しく着いていった。



「依頼料が銀貨十枚、上位個体討伐と巣の破壊で追加で銀貨五枚、名前が気に食わないですが......プリンス討伐が金貨一枚になります」



 高いのか安いのか全然わからないけど、盗賊の方がよっぽどコスパよかった。



 助けた女のケア用に......と、報酬を宿賃分だけ抜いた額を渡しておこう。受付嬢やギルドからの評価を上げておけば良さげな依頼流してくれそうだし。



 早くランク上げする為なら善行をしたという雰囲気も大事だろうと思う。

 だが俺は決して善人ではない......打算塗れですまんな。



「じゃあ銀貨四枚だけ貰っておくよ。残りはあの女の子達に渡しておいて。

 持ち物や装備を全部壊されてたから色々と必要だろうし、現場で他に三人死んでたから精神的にキツいと思う。だからそれでお願いね」



 言ってて気持ち悪くなってきた。ゾワゾワする......心を無にしよう。



「本当にありがとうございます。あの子達のために使わせてもらいます。

 私はエミリーと言います。ランクを早く上げたいようにお見受けしますので良い依頼を選別してお待ちしております。

 次にギルドへ来る時も是非私のところに来てくださいね」



 そう目論んだのは確かだけどさ、目論見通りになりすぎだよ......

 ちょっとだけ好印象与えたつもりだったんだけど!?


 ゴロかポップフライ打たせようとしてたら強烈なライナーが来た気分だ。



 よし。思い通りになったということで......


 はい!もう考えるの終わり。

 もう暗くなってきているので、宿に帰って飯を食おう。




 宿に着いたので女将さんに宿を延長を伝えなきゃな。とりあえず四泊の延長を伝えて金を払う。


 依頼で稼ぐ金額と、宿の金額が合ってなくて結構シビアじゃね?と思って女将さんに質問してみた。


 宿は基本的に複数人で泊まるのを想定してるので部屋にベッドが何個か置かれているんだって。


 一泊一人いくらの計算ではなく、この部屋はこの値段ってなっているのでソロより複数人で泊まった方がお得らしい。


 さっきの報酬でパーティ単位だと金足りるのかな?と思ってたけどそう言う事だったのね。



 そんな話を聞いた後、やっと部屋に帰還したけどもうすぐご飯出来るよって言ってたからすぐ行けるようにしとこう。



 今日の夕飯なんだろなぁ......

 この後はすぐ飯を食べて、骨喰さんを拭いたあとに風呂入ってあんこを抱きしめてさっさと寝よう......





 あ、さっきの続きは忘れてないからね。たくさん撫でちゃうぞー。

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