第20話 変質者とエンジェル
本日は早起きすることも無く、いつもと同じような時間に起床。
それから30分くらい体を動かした後に、朝食を食べる。
今日の朝飯は桜餅と緑茶。
おやつではない。朝飯の時間に食えばそれは朝飯だ。餅は米が原材料なので、全く問題はない。
あの塩っ気と桜の葉の独特の風味と香りが餅に移って、餅と餡の味を引き立てている。
これがまた緑茶に合うんだよね......あー素晴らしい。
間食用に大福を召喚しておこう。豆大福と草餅もついでに。今日は和菓子オンリーでいこう。
団子もいいなぁ......
山道+休憩=茶屋で団子。
よし、団子も追加だ。今日は餡子ばっかりのラインナップだったからミタラシを召喚。
甘味王のおやつの貯蔵がバッチリになったので、下山を開始する。
今日のお嬢様は、はしゃぎながら俺の後ろをついてくる。相変わらずとても可愛い。
足元には気をつけるんだよ!ケガだけはしないでね、ほんとに。
大きめ石を見つけては、その上をぴょんぴょんと跳ねながら進んでる。昨日の俺の動きを見ていてやりたくなったらしい。
よーし、この調子で張り切って進むぞー!ついておいでー!
山道をはしゃぎながら一緒に進んでいく。
途中で休憩を挟みつつも、下山するのに慣れたおかげでハイスピードで進んでいけたので、14時になる前に山の時間が終わった。
山に向かって一礼をしてから、久しぶりの平野へ。このまま荒らされずに綺麗な山のままでいてほしい。
突っ切るのと迂回するの......どっちが早く済んだのかはわからないけど、とても良い体験ができたので登山をしてよかったと思っている。
またこれからエンドレス平原だけど、腐らず進んで行こう。しっかり気を張ってないと死に繋がる可能性もあるし。
何かしらを練習しながら進めば、そこまで苦痛を感じる事は無いはずだ。たぶんきっと。
まぁ苦痛だったんだけどね。わかりきってた事でしたよ。
平原って景色も環境も変わらないから、すぐに飽きてしまうってことを.....
北海道をドライブしていると眠くなっちゃう原理と一緒だね。
そして飽きてくると、刺激を求めてリミッターが壊れるというかなんて言うか......うん。
深く考えるのをやめた人間が思いつく事ってまぁマトモじゃないよね☆
二徹、三徹後の根拠の無い無敵感と一緒だと思う。
まぁ......うん。俺に二つの新技が完成した。
一つ目......ク〇ームの暗黒空間みたいな技が完成した。
まぁそのまんま【暗黒空間】でいいだろう......大丈夫だよね?
自由自在に動かせて、ソレが当たった場所以外のモノは勝手に吸引しないブラックホール的なもの。
ちなみに吸引力は、俺の意思一つでオンオフ可能。吸引力の変わらないただ一つのブラックホールもどき。ちなみに複数個出しても操れる。
まぁ暗黒空間の中には入る事はできないが......入れたとしたら、まぁ攻防共に敵無しになる、油断して顔を出したところを狙われなければ。
それでコイツがまぁ削る削る。
草原を削ってミステリーサークルっぽいのを作ってしまった。
あのクルクル回って追い込んでいくヤツをやりたくなったんだもの。
この技に飛び込んだのならば、俺でも消滅できそう。
万能だし、使い勝手も最高。そして自決用に取っておこう。
長生き出来る様に人の精神は出来てないからね、寿命無しみたいになった俺はいつか死を望むと思う。
仮に死ねたとしても、俺の死体が残っていたら内包してる魔力で問題が起きる可能性もあるし。
やべぇ技が出来た衝撃で変にしんみりしたテンションになってしまったが、もうひとつ変な技が出来た。
こっちは凶悪ではない。ただひたすら変質者っぽいだけだ。
二つ目は【犯人スーツ】。反省も後悔もしていない。変なテンションが突き抜けただけや。
名前はいいものが思いつかなかっただけです。特に候補も無いし、もうコレでいいかってなった。
これはまぁ......コ〇ンに出てくる犯人みたいになれるだけだ。体のシルエットに沿って闇を塗るだけ。
副次効果として、ちょっと気配とか足音とかが消えて、光の反射をしないだけだ。
......やっぱり多少の反省と後悔が生じてきたので、身体を強化し自然破壊の痕の残る犯行現場から逃げだした。
犯人スーツを発動して。
目撃者がいたのなら、きっとUMAを発見したと思ってくれるだろう。
ここを発見されたら、またギルドが騒ぎになるかもだろうが......近場に人の反応はなかったのできっと平気。あと逃げ足も強化MAXにしたので視認なんて出来ないだろう。
よし。ここまで来れれば問題はなさそう。周囲に目撃者の反応はなし!
変なテンションって怖い......そう思いました。
たまにっていうか、結構使いそうだな犯人スーツ......俺よくやらかすと思うし。
まぁいいや。
真実はいつもひとつとは言えないんだ。すぐ捏造されるんだ。大人はね......汚いんだよ。
全力ダッシュを抱っこされながら楽しんでいたお姫様を、わしゃわしゃもふもふして心を落ち着かせる。
ここからは暗くなるまでゆっくりと進みましょう。もう変な気は起こさずに。
◇◇◇
新技を開発した日から七日間......
自重を覚えた俺は特にやらかす事もなく、平和に草原を進み続けた。
人を感知したらソレを避けて進んだし、相変わらずモンスターは俺の前に出てこようとしない。
ほんと何故なんだろう。
ここ数日モンスター同士や、モンスター対人間で争ってるのは何度か見かけた......遠目でだけど。
ほんとなんでなんですかね!?
小石を投げて挑発したり、食べ物とかも見せてみたけど、俺から離れていって襲ってくることは無かった。
あー、あとはハッタリ技を一つ作った。闇属性の魔力を火が燃えてるようにするだけ。
闇魔法で火を出せないかなーって、薪を相手に試してたら熱がない黒い火が出た。
もちろん薪は燃える事はない......燃えてる風味。
ただひたすら燃えてる風に見せるだけ......
それを刀に付与して飛ぶ斬撃を視認できるようにしたり、黒く燃える刀にしたり......
うん。厨二病チックだけど、技がかっこよくなった。これに骨喰さんは結構喜んでいたのが意外だった。
それは、かっこよくなったとか、必殺技にエフェクトが付いたようなものが完成したのに対して喜んでいたんじゃなくて、ただ魔力を纏えて吸収できることに喜んでいた。
犯人スーツを黒い火が揺らめく仕様にしたらどうなるだろうか......
うん。ただの変質者が、燃えてる変質者にジョブチェンジするだけだな。
やめておこう......気付いたらギルドで未確認モンスターの討伐依頼とか出ちゃったら嫌だし。
そんなアホな事をやってる俺の事はさておき、ウチのお姫様が素晴らしい技を発現させたのである。
お姫様は飛んでる鳥を見て、氷で羽根を真似したものを生やして動かしたりできるようになった。
飛ぶ事は頑張ってもできなかったけど......
だが生やした翼をパタパタ動かしてご満悦な姿はまさしく天使だった。......いや、天使が天使を名乗るのはもう辞めておいたほうがいい。
ウチの子の方が天使だった。正真正銘本物の天使がいた。
可愛く上目使いでおねだりされたので、俺のはったり黒火を氷の羽根につけてあげたら堕天使になった。小悪魔な堕天使が爆誕。
そんな風にアホな事をしたり、目で幸せを感じたりして、生きてる幸せを味わっていたら七日間があっという間に過ぎていった。
そしてとうとう、後半日くらいで王都まで到着できそうな位置にまでこれた。
今日はもうちょっとだけ進んでから休もう。また明日から人間社会に適応しなきゃいけなくなるから、残りの時間をあんこと一緒に過ごそう......
と、ここでテンプレが発生!
襲われてる馬車がいる......
なんて事は全然なく、暗くなるまで進んでから、人に見つからないような場所を探して本日のお泊まり場所が決定した。
そこで本日、対鳥戦から高まっていたの欲求がココで弾けた......
どうしても焼き鳥が食いたくなったので焼き鳥用の鶏肉を召喚してみる。
もも、かわ、レバー、ねぎま、砂肝、手羽、ハツとなぜかシロが二本ずつ串に刺さった状態で出てきた......あと小さい瓶に入った焼き鳥のタレも。
なんで!?さすがにコレはご都合主義が振り切れてない?
仕込みしてた店からパクってきたのかな......
なんだろうか......怖いよこの能力。
いやまぁ、こっちは嬉しいからいいんだけど。
火を熾して、焼き台みたいにする為に石を積んでいく。
もも、手羽、ハツ、砂肝は塩。
ねぎま、レバー、かわ、シロはタレが好きなのでその通りに準備していく。
こんな事言ってるけど、タレ塩論争は永遠に終わらないからやるだけ無駄だ。個人個人で好きな味の好きな串を頼めばいいと思う。
どうせなら焼きたてで出てきてくれればよかったのになぁ......俺に焼きの技術なんてねぇよ......
焦がさずにしっかりと火を通すのって難しいんだよ......
確か隙間を作らずに焼くんだったっけか?
焼き台も準備出来たので、焼き始めていった。
まぁ焼けたには焼けたよ......
すっげー疲れた割には、上手に焼けましたーとはならなかったのが辛い。
まぁいいや食べよう......とした所で悲劇が起きてしまった。
もう嫌だ......鬱だ......
夏場、火、周りには木......
糸のトラップを張ってなかったのが本当に悔やまれる......
飛んで火に入る夏の虫がリアルで起こってしまいました......
しかも異世界サイズの昆虫が。
網とか食材を気にせずに火を目掛けて突っ込んでいって焼き鳥をぶちまけながらスタイリッシュな焼身自殺をしやがったよ......ハハッ
くそがァァァァ!!
【暗黒空間】を発動し、焼き鳥の残骸を含めて全て削り取った......
悲しい事件だった......これからはこまめに、そしてしっかりとトラップを仕掛けよう......
どうしても焼き鳥が食べたかった俺だけど、同じ事をもう一度する元気が起きず、やきとり缶を召喚しておにぎりと一緒に寂しく食べましたよ......
はぁ......
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます