第14話 お散歩デートと選択肢

 さてさて、外に出たのはいいけど......どうしようかな。


 このまま適当に周辺をブラついて、気になったところに寄りながら情報を集めるしかないのかな?まぁそれが一番現実的かなとは思うけど......それでいいか。ノープランもまたいい物よ。



 今日のお姫様は抱っこがいいと可愛くおねだりをしてきたので抱っこでお出かけ。お尻を抑える抱っこよりも、下半身をぶらーんとする抱っこの方がお好みのようです。



 街中を歩いていると青果店を見つけた。果物がいい匂いを放っている。




 だが俺は信じない。信じれない。

 売り物になるような商品だったとしても、きっと裏切られるんだ。

 どうせあれも激マズなんだよ......



 仮にもし、アレが美味かったとしよう。そうだったら俺はもうヤツを食えなくなる。内面と外面が一致しない奴は信用ならん。



 最近一日一個にしているけど、日課として今も食い続けている。今の魔力量からしたら増加量は微々たるものなんだろうけど、増やしといて悪い事はないと思っている。





 うん。果物はスルーしよう。


 果物はだいたい銅貨一~五枚の値段だった。しかし銀貨二枚のもあったり、この世界でも果物の値段はピンキリなんだね。




 あ、今度はちゃんといい匂いがする。

 パン屋を発見!パンを焼いてる匂い好き。


 中へ入ってみると、外国の映画で見るような長いフランスパンを発見した。出来て間もないとの事なので、銅貨三枚だったしお試しに一本購入。


 美味しかったら街を出る前にまた買いに来よう。出来たてや温かいのは、召喚で出てこないからな......常に常温のものか若干冷たい物のみ。


 冷やして食うような物は冷やしてもらえるから、そっちはそんなに問題はない。




 後でカットして、こしあんとバター挟んで食べようかな。

 バタークリーム&レーズンとかフレンチトーストにしてもいいかも。



 普通のパンを美味しく食べる為にホットサンドメーカーを後で召喚しておこうっと。


 大体何を挟んでも美味くなる素敵な調理器具だからねアレ。ピザまんを挟んで焼いた時は幸せになれた。




 あー......そういやカフェみたいのってないのかな?こっちのスイーツやお茶事情は結構気になる......


 やっぱ紅茶文化で、アフタヌーンティーとかするオホホな感じなのかね?




 おっ、今度は魔道具屋発見。気になるから見に行こっ!



 初めて入る食品以外を取り扱う店って無駄に緊張するけども、覚悟を決めて入店。




 鑑定しながら眺めていくけど、そんな大したモンは売っていなかった。


 このローブがオーバースペックすぎるし、俺の基準がおかしくなってる......国宝級を越えたスペックだもんなぁ。

 100均みたいな便利グッズが、銀貨数枚から金貨くらいの値段だ......買う気が全く起きない。


 あんこサーチにも引っ掛かるモンが無かったので素早く撤収。長居しようとも思えなかったし、これでいい。


 見るだけ見て知識を溜めておけば、後々召喚でどうにかなると思うし、無駄な時間ではなかったと思っておく。




 しっかし服も飯も、それに道具も買う必要無いし、宿泊費用と通行料くらいしか使わんな......でも、あって困るもんじゃないしいいか。


 ......このセリフは日本に居た時に言いたかった言葉でござる。





 魔道具屋を出て、気を取り直して次の店を探していく。


 貴金属系のお店を見つけた。


 買取もやってるみたいなので、盗賊から徴収したヤツを数点換金してみよう。相場のチェックは大事。




 ......こういった物の知識は全然無いし、ボラれるのは嫌だから、少しだけだよ?ほんとに少しだけ威圧を出しながら入店。



 換金を頼んだら丁寧に対応をしてくれた。


 デカめの宝石の指輪を五点と、ネックレス五点で金貨が二十八枚になった。金貨一枚分を銀貨で頼んだ。


 銀貨二十枚と金貨が七枚、おっきい金貨......大金貨が一枚を渡される。十枚で繰り上げにして欲しい......慣れるまで計算がめんどいやんけ!




 でもこの情報は助かったわ。


 買取が終わったので、ちょっと店内を物色していると、魔銀の懐中時計が目に入った。



 三日月を背景に遠吠えしている狼が掘られているヤツで、大人フォルムのあんこにほんのちょっとだけ似てたいから金貨二枚を支払って購入。


 こっちの世界の時間に合った時計欲しかったしちょうどよかった。


 ちなみに魔銀とは銀が魔力を取り込んで出来た素材で、ミスリルの廉価版みたいな扱いらしい。



 ちょっと高かったが、思いがけずいい品が手に入った。内ポケットにしまっておこう。


 ここまで楽しそうにしながらも、大人しくしてくれていたあんこをわしゃわしゃしながら散策を続けていく。


 この子が欲しがる物が何かしら見つかるといいなぁ。観察するだけで今のとこ満足してるし。



 次はどうしよう......情報を集めるにしても図書館的なところは、動物を入れるの拒否しそうだし......



 それならギルドで聞けばいいかな?

 でもなぁ、受付嬢にちょっかい出すんじゃねぇとか言われるのテンプレだしなぁ......


 これは、普通に起こりそうな気がする。


 それを避ける為に、自ら進んでおっさんの方に並んだり、話しかけたりするのもなんか嫌だし。



 どっかにそこそこ知識があって、困っている人とか居ないかなぁ......

 その場限りの後腐れない関係で終われるような都合のいい人は居ないかなぁ?......居ないかなぁー?





 都合のいい展開にはならない。


 ラノベ主人公みたいなご都合展開にはならない。どーも、わたくし旅人Aです。




 どうしましょうかね


 1、アラクネさん達に聞く


 2、どっかで人に聞く


 3、ギルドで聞く


 4、このままフィールドワーク


 5、いわゆる王都的な都市に行く



 1は、アリだろうけど......人間の住むトコの地理やその近辺の事を詳しくは知らない可能性が高いな......

 それに、もし知らなかったのなら呼び損になっちゃうし、一応王族やそのお付の子だからホイホイ呼ぶのも憚られる......



 2は......うん、やめよう。赤の他人に話しかけるとか拷問もいいとこ。


 3は......第一候補だろうけど、絡まれる可能性あり。


 4は、現在進行形で難航中。疲れてきたし継続が困難になりつつある。

 あんなにもサクサクと欲しい情報が、行動する度にピンポイントに集まる主人公達が異常。


 5は......現実的に一番いい案だろう。

 だがその為には情報が無い......3を実行する必要がある。

 東南西北の四択なんて当たる気がしない。二択ですら負け越してますし。




 しょうがないな......完全に手詰まりだし、ギルドへ行って情報収集だな。


 依頼もせずに......みたいな事言われたら生首ーズを晒してあげよう。まぁ元々この街で処理するつもりだったし。

 そこそこ被害を出していたみたいだから、依頼を消化するよりも評価は高いだろう。きっと。





 地理を把握出来てなかったのでちょっとだけ迷った。完全に迷子にはなってない。

 見たことある建物が見えてきて安堵した......なんて事は起きていないのだよ。



 この時間(現在二時半頃)ならば冒険者はキリキリ働いてる時間帯だろうし、人はきっと多くないだろう。

 と、買ったばかりの時計を見ながら考える。



 ギルドに入って、空いてる受付へと向かう。


 知らないおばはんだった。

 そういえばこの後どーすりゃいいんだろ?作法が全くわからん。


 とりあえずカードを提示して、聞きたいことを聞いてみる。



「あーすいません。ここらへんの地理とかを詳しく知るにはどーすればいいんでしょう?」



「あーそれなら資料室があるからそこで見ておくれ。使用料は銅貨五枚だよ。

 破いたり、汚したりはすんなよ坊主」


 親戚のおばはんに今みたいな喋り方のヤツいたなぁ、と思いながら銅貨を渡す。



「時間制限は?」



「暗くなったら閉めるからそれまでに調べ終わっておきなよ。ほら行った行った!」



 雑だなおい。一応お役所仕事みたいなもんだろギルドって......


 日本ならクレームきてるで。



 まぁいい。行こう。



 入ってみると思ってたよりキレイな室内。

 脳筋ばっかりなのだろうか、本はかなりキレイな状態だった。


 鑑定したら状態をキレイに保つという魔法のおかげらしい。

 脳筋と疑ってごめんな。多分脳筋野郎どもだろうけど。



 地理系の本を数冊手に取り着席。

 あんこを膝の上に乗せる。うん、一撫でしてから読もうか。




 なでなでなでなで......


 よーしよしよしよし......




 ......うん。一撫でしてから本を読み出した。







 ────選択肢を浮かべたあの時点で、彼の案で2、4を除いた三択だったのだが、彼の求める永住の地は、1を選んでいればすぐに見つかっていたのである。


 王にあの劇物を渡せば、彼の条件に当てはまる土地を王族のコネ、プライド、力をフルに活かして探し出し、それが自身の支配地域であればそのまま下賜されていた。

 他種族の地なら、その種族の代表との話し合いの場をセットされ、条件提示後に代表の袖の下にソッと劇物を滑り込ませればよかったので残念な彼なのでした─────

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