第13話 はじめての屋内と混浴
やっと身分証が作れたので、もふもふしながら宿り木を目指す。
ギルドを出た後は、つけられていて襲われる......
なんていうことはなく、実に穏やかな宿までの道のりだった。
ちょっと進むと、木にへばり付いたマリモが描かれた看板があった。ここがそうだろう、宿り木という宿へと到着した。
外観も内装も結構キレイな宿でした。受付は正面で右手側が食堂かな?
「いらっしゃーい!ようこそーお泊まりですかー?
身分証の提示をよろしくですー」
元気な声で出迎えてくれたのは30代半ばくらいの女将らしき人物。
「従魔も大丈夫な宿を門番に聞いたらココを勧められたんだけど、部屋空いてます?あ、コレ、ギルドカードです」
「あーそうなんですねー。大丈夫ですよー!従魔はそちらのかわいいわんちゃんですかー?うちは従魔の子込みで1泊朝夕ご飯付きで銀貨4枚になりますがよろしいですかー?」
銀貨4枚......お高めの宿と言ってたから銀貨1枚が多分3000円~5000円くらいと推測。合ってるかは知らないしわからない。
この女将さんは語尾伸ばす癖があるんだなーと思いながら話を進める。
「じゃあとりあえず3泊でお願い。先払いでいいのかな?」
と言いながら銀貨を12枚渡す。
「はーい!では部屋にご案内しますねー。
備品は壊さないようにお願いしますー。ご飯の時間になったら部屋の中のベルの魔道具が鳴るんでー食堂にお越しくださいねー。
食堂には部屋の入口にあるマークと同じ絵が置かれた机があるのでーそこに座ってくださいねー」
と言われ、案内された部屋は太い枝に葉っぱが3枚描かれたマークの部屋だった。
細い枝が1階、中くらいの枝が2階、太い枝が3階。
葉っぱの数が部屋番号らしい。わかりやすい作りでよかった。
聞けば、文字が読めない人でもわかるようにとのこと。日本で言うなら303号室って事か。
「それではごゆっくりー。なにかありましたらー受付までお越しくださいねー!これが鍵ですのでー戸締りはキチンとお願いしますー」
女将さんが去っていったので鍵を開け、部屋に入る。
一通り部屋を見渡してみた。
ベッドが大2つに小2つ、大きめの机が1つに椅子が4つ、床はふかふかの絨毯が敷いてある。色んなサイズの従魔に対応してるのだろう。
扉が3つあるので後で見ようと思う。
靴のまま生活する文化はいつまで経っても馴染めない気がする......清潔にされているようだ。
だが靴は脱ぎたいし、靴で歩くとこを素足で歩くのはなんか嫌なのでスリッパを召喚。
スリッパも慣れないけど靴のままでいるよりかは大分マシだ。
従魔用の小さいベッドにいつものブランケットを置くと、お嬢様のスペースが完成。
そこに向けてダイブしていった。かわいい。
扉を開けて中を調べる。
1つ目の扉は下半分が従魔の移動用らしく押せば通れるよう両開きになっている。猫を飼っている人の家でたまに見るヤツみたいだった。その奥は、水洗のトイレと砂場があった。
2つ目の扉を開けると脱衣スペースと洗面台、奥に人が2人入れそうな風呂場があった。湯は蛇口っぽいのから出すようだ......わかりやすくて助かる。
日本にいた時はシャワー派だった俺だけど、入りたいなと思った時に風呂に入れないと変なストレスがある。今日はあんこと混浴しよう、楽しみだ。
3つ目は鍵付きの扉だった。扉を開けると棚があったので多分物置だと思われる。
さて、変な場所も無かったし、これでやっと落ち着ける......
安全が大分保証されたプライベートスペースというのは貴重だ。
俺の取り扱い説明書には〝防音対策をしっかりとした冷暗所で保存してください〟と書かれている事だろう。
遮光カーテンとランタンを召喚する。闇糸でカーテンを固定し、部屋から日光を遮断。
ランタンに火を灯すといい感じの雰囲気になる。
火の揺らめきが俺の心を落ち着けていく。
最近焚き火の動画を見る人が増えているそうだし、この感覚に共感できる人は多いと思う。
行き過ぎると放火に発展しそうで怖いから気をつけてください。
人工物が燃えてるのはキレイじゃないので、そっち方面に萌えないでほしい。
椅子に座り、缶コーヒーを召喚し飲みながらまったりする。至福の時間だ。
いつの間にかあんこが俺の膝の上に来て寛いでいる。
なんでこの子はこんなにキュンとするツボを連打してくるのだろうか......
ずっと一緒にいようね。
ベルの音が鳴り、意識が覚醒する。まったりしていたらいつの間にか寝ていたらしい。
ご飯の時間になったらしいので、あんこを抱いて食堂へと向かう。
席につくと料理が運ばれてくる。従魔が横で一緒に食事できるように、大きめの椅子の上に料理が乗せられている。
この気配りは良いな。そして従魔は食べさせちゃダメな物とかは特にないのだろう。数組の従魔連れの方々の従魔も同じのを提供されている。おぉ、色んな種類がいる。
だがこの中でもうちの子が一番可愛いな。
ゴロゴロお肉と野菜が入ったスープが従魔用らしい。美味しそうに食べてるなぁかわいいなぁ。
こっちは、クリームシチューみたいなのとスライスした肉にサラダとパンだ。
味付けは塩味が多少強いけど、美味しかったと言える。
パンもカッチカチということは無くて、シチューとの相性がよかった。
文化レベルや食文化はちゃんとしてると思っていいだろうな。部屋も綺麗だったし......これから先、宿とかに泊まるのなら、このレベル以下の場所は嫌だな。
お嬢様も食べ終わったみたい。
ご飯足りた?満足?よかった。じゃあお部屋に戻ろうか。
女将にお礼を言い部屋に戻る。結構良い宿だなぁここは。
あんこのテンションが高いので、どうしたのかと思って聞いてみると、周囲を警戒してない俺と一緒にいれるのが嬉しいとの事。
ㅤ俺のことも気遣ってくれるなんて、優しい子なのねっ!しゅき!
あと暗くてほんのり明るいこのような空間が好きらしい。俺と嗜好が似ているな......召喚の影響かな?なんか嬉しいなぁ。
一緒にいて、お互いがストレスを感じない環境を共有できる関係は何物にも代えがたい、素晴らしい事だと思う。
さてさて、これから本日のメインイベントだ。
今まではあんこに水を出して貰って、環境に悪くないと言う触れ込みの石鹸を使って体を洗ったり、水辺で洗ったりだったので、この世界に来てから初めての入浴。
猫足?みたいな浴槽だけど......底が接地してないお風呂ってなんかビビる。脆そうな足だけど折れないよね?
湯を張り終え、考える。
あんこは石鹸が平気だったので、俺と同じもの使っても多分問題はないはず......と。
排水もしっかりしてるし、日本で使ってたバス用品を召喚。
嫌がる時はしっかりと嫌がるし......嫌がってないからきっと問題はないのだと思う。
初めてのお湯が案外気持ちよかったのか、されるがままに洗われてるあんこ。
しっかりと泡立ててから、揉むように手で洗っていく。
......ボディソープで洗った後はどうすればいいだろうか。シャンプーするのならボディソープいらない?わからん。
野郎なのでそこらへん詳しくないし、日本なら専用の物で洗えばいいだけだったし......うん、深く考えるのはやめよう。湯船からあがった後にコンディショナーしとけばいいかな。
そんなことより、今は泡でもこもこになっているあんこの方が大事です。
色々いじくって羊さんフォルムにしてみた。永久保存版決定!
可愛いあんこを堪能して満足できたので、俺も体を洗っていく。
一緒に入りたいらしく、俺が洗ってる間は羊フォルムのまま待っててくれていたので、急ぎつつもしっかりと体を洗った。優しい子だねほんと。今度入る時は、どんなフォルムにしようかな?
お互いの体についた泡を流して、準備はおしまい。
あんこを抱っこしながら湯船に入っていく、いつもと違うしっとり感触を味わえて幸せだ。スリムな姿もいいね!
お湯へと入って少ししたら俺から離れていき、湯船の縁に前足と顎を乗せてリラックスしている。その姿を眺めながら、俺もしっかりお湯に浸かってダラダラ。
ちょっと熱くなってきたのか俺の頭に乗って、冷気を少し出しながら休んでるのもまた乙なものである。
そんなに長湯するタイプではないし、満足できたので湯からあがって、あんこを仕上げた。
備え付けのタオルでしっかりと体を拭き、お部屋に戻る。
しかし、ふわもこさらさらになるかと思ったけど、毛や体は魔力で出来ているらしいので、触り心地に変化はなかった......くそぅ......
乾かすのも同様で、ブルブルしたら勝手に水分が飛んでいくんですよ。
ぶっちゃけ洗う必要はないらしい。でもお風呂の事は大変お気に召したらしく、また入りたいとの事。
いい匂いになっただけだった......
だが、これからもやろうと思う。いい匂いになるのはいい事だ。
それからしばらくイチャイチャして、ゆったりした時間を楽しみ、就寝。
◇◇◇
目が覚めたら、別々に寝てたはずの俺の胸元に乗っかって眠るあんこを見て幸せを感じて起床。ずっと見てたいわ、この寝顔。
ベルが鳴ったので朝飯を食いに食堂へ向かう。朝はベルいらないな......眠い時は寝ていたい。
パンとスープ、それとベーコンサラダだった。味はまぁまぁだったけど、似たようなメニューしかないのか?せめてたまご料理が一品くらいあってほしかった......
ちょっと残念な気持ちになったけど、これが異世界朝飯のスタンダードなんだろうな。
身だしなみを整えて、そこからしばらくまったりする。
今日は普通の白シャツとアラクネローブの黒でいいか。
今日はお散歩デートをしながら、この世界の情報を集めていくとしましょう。
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