第11話 名前と街到着

 目が覚めた......



 寝る前もそうだったけど、目が覚めてからも特に昨日の事は気にならなかった。


 人間らしい感覚は、もう壊れてるみたい。


 快楽殺人者にだけはならないように気を引き締めとこう。ただ、俺らに害を及ぼそうとしている奴らには遠慮する気はない。



 おはようのもふもふをキメて心を休め、昨日食べなかった残りの焼き魚を朝食として食べる。あんこは今日もジャーキーに夢中でかわいいです。




 本日の俺の目標は、名前を決めること、街につくこと。


 これだけ。これだけしかないんだけど、名前を決めるとか結構プレッシャー。




 さてさて、はじめての人里だし少しでも怪しく見えないような、そんな格好をしていこうと思う。オールブラックスだとよく職質されてたし......。黒って落ち着くのに理不尽だ。



 濃いグレーのパンツに、アラクネの白シャツ、それに群青のローブにしよう。青系を混ぜれば怪しくは見えなそうだし......



 多分コレで怪しくないと思う......そう思っておく。



 自分の魔力の色とお揃いのローブが嬉しいのかあんこ姫がご機嫌。きゅーとですよ。



 今日は歩きたい気分らしく、テンションの高いあんこが歩きながらくるくる回っている......


 あ!!!しっぽを追いかけてグルグルしはじめたよ皆さん!!!



 この行動が素晴らしく可愛い理由は最後にコケるところだ。

 ......あぁこういうオバかわいい行動見ると癒されるぅぅぅ。


 あ、転んだ。ちょっと悔しそうなのもポイント高いわぁ......だいしゅき。




 一通りはしゃいだり走ったりして満足したらしく、俺に抱っこをせがむあんこ姫様。仰せのままに。





 えっ......?なんで......




 定位置に持っていこうとしたら嫌がられた......




 鬱だ......死のう......







 ん?フードに入りたいの?

 落ち込まないでってほっぺをぺろぺろしてくれたので復活。チョロくたっていいじゃない。



 フードに収まってご満悦なあんこと、ぺろぺろされてご満悦な俺。


 さぁ、このままゆっくりと歩いて行きましょうか。



 上機嫌で歩きながら考える。



 名前を本当にどうしようか......と。


 あんこは歩行時の揺れが気持ちいいのかフードの中で寝てしまったし、俺は暇を持て余す。


 外人系の名前って難しい。



 アンドリュー......ジョーンズ......マギー......ユーキリス......アマダー......ブセニッツ......ブラッシュ......コーディエ......ぺゲーロ......ブラックリー......コラレス......



 ダメだ。全然思いつかないし、しっくりとこない。



 外人の名前はかっこいいんだけど、俺には合わないなぁ。



 ジャパニーズである弊害がここに......




 うーん、俺に関する事で考えてみようか。



 犬、龍、不動明王、刀、闇、甘味......


 うーん......




 犬系は難しい、不動明王とかはなんか後が怖そうだし、英名はわからないから無理。


 刀や闇、龍は厨二感がやばそう、甘味は俺には合わないだろう。



 安易だけど、他には色とかかな......?



 俺の好きな黒だと......


 なんかアレだな。やめよう。



 群青とかそれ系統だと......

 インディゴブルー、ウルトラマリン、アズライト、シアンブルーとかだったかな?




 シアン......シベリアンハスキーに3文字も入ってるし、色的な意味でもあんことお揃いになれる。



 よし!他に思いつかないし、シアンでいいや。設定!







 なんか体が熱くなってきたんだけど大丈夫?怖いんだけど。破裂しないよね?


 名前付いた途端死ぬ運命だったとか?それはないよね。さすがに。





 えっとぉ......長くない?やけに体が熱いし、怖いんだけど。






 お、治まったよね?不意打ちでバァンしないよね?

 よ、よーし、ステータス確認してみよう。



 ▼シアン

 人魔ㅤ21歳

 職業:召喚者


 レベル3ㅤ魔力860,786,200/860,786,200


 スキル:【鑑定】【闇魔法】【魔力掌握】【神体強化】【金剛精神】【悪食】【溺愛テイマー】【⠀魔威圧】【侍】【闇糸】【薙刀術Lv6】【投擲Lv3】▼



 ▼あんこ

 幻魔獣ㅤ0歳


 レベル3ㅤ魔力50,000,000/50,000,000


 スキル:【氷魔法】【水魔法】【縮地】【威圧】【水氷牢獄】【闇魔法】


 備考:大量の魔力を取り込み続け、物質体と魔力体の境が無くなり融合した新種族

 主人が大好き▼




 俺は人間をやめたぞぉぉぉぉぉジョ〇ョォォォォ!!


 人魔ってなに!?......でもあんことお揃いみたいでいいかも。見たくないけど鑑定してみよう。名前見てわかるのは除いていいか。



 魔人じゃなくてよかったと思っておこう。



 ▼人魔

 人の身に余る量の魔力が名と共にその身体に馴染み定着した

 人であり、魔でもある▼



 ▼召喚者

 魔力を糧に召喚をする者▼



 ▼水氷牢獄

 水と氷を扱い、空間を支配する▼




 鑑定さんの反抗期ではなくほんとにコレしか言えないんだと思う。


 なっちまったもんは仕方ない。考えるだけ無駄だろう。


 もういいや。永住できる地を探しにいこう。



 ......あ、あとは相手に鑑定された時はどうする?考えてなかったわ。

 ちょっと鑑定さんを目に魔力集めて見てみよう。俺を鑑定されても平気なのかわからんし。


 ▼鑑定

 知りたいと思う事を念じながら鑑定すると詳細が出る

 力量差がある程、鑑定が困難になる

 名前だけは隠す事が出来ない▼



 ふむ......目に魔力集める必要なかったわ。

 いつものふわっとした鑑定結果は、俺のせいだったわけか。さっきのをまた見る気にはなれないのでスルーしよっか。


 レベル差ではなく力量差と出たので鑑定されても、少なくとも上級冒険者くらいまでは多分平気と言うのがわかったので、これで街に安心して行けるな。





 それにしてもレベル上がってたのはなんだろう?盗賊共を倒して上がったならもっと上がってるはず。


 何があった......?他に何かした記憶がないぞ......




 うーん......ん?


ㅤまさか魚か!?




 意外にも経験値高かったのかなあいつ。

 それ以上は心当たりがガチで無いので、きっと魚だろう。違ったらもう知らん。



 スッキリしたところでちょうどよく街についた。列があったので、列に並べばいいんだよな?

 大人しく並んで待つとしましょう。



 おぉ!!門番がいる!ファンタジーだ!あんこも楽しみなのかい?俺の頭の上に顎のっけてる。らぶりーすぎるよ!



「身分証の提示を。無ければ銀貨3枚を。

 ん?それは従魔か?登録が済んでないなら銀貨2枚を」



 もっと厳しい審査があると思ったがこれだけか。楽でいいなり。


 ただウチの子を、それって言うなや!



「じゃあ銀貨5枚で。身分証作るにはどうすればいい?この子も登録しないとだし」



「それなら冒険者ギルドだな、身分証と従魔登録一緒にできるからお得だぞ」



 ここらへんはテンプレだな。助かるっす。



「助かった。あとは従魔が平気な宿とか教えてくれると嬉しい。」



「それなら『宿り木』と言う宿がいいだろ。少し高いがお前さんの身なりなら余裕で払えるだろう。入場料もごねること無く払ったからな。

 登録が済んだら、ギルド出てそのまま左に進めば見えるぞ。ギルドはここから真っ直ぐ行けばわかる」



 わかりやすいな。案外親切にしてくれたからチップ渡しとこう。

 うちの子をそれ扱いしたんは許さねぇけどな!



「丁寧で助かった。ささやかだが、コレで一杯やってくれ」



 と銀貨を1枚渡した。これの反応で貨幣価値も少しはわかるだろう。



「おいおい!多すぎるぞ。だが貰えるモンは貰っておくからな!今更返せとか言うなよ。

 あ、ようこそグラッドへ」



 いい性格してんなコイツ。

 まぁ思ってたより価値があったみたい。


 ただ街を去る時に軽くなんかしてやる。



「気にすんな、礼も含んでるから。そんじゃ」




 さて、真っ直ぐ行けばわかると言ってたな。

 あんこは建物や通行人に興味津々のご様子でかわいい。




 5分くらい歩くとギルドを見つける。普通にデカいしわかりやすい。

 テンプレな事が起きたりするのかな?そんときゃそんときでいっか。



 結構ガヤガヤしてるぅぅぅ......入る気が失せるわ......


 でもなぁ......入らないとアレだし、とりあえずもう色々と諦めて中に入るか......



「この近辺に黒龍が現れたというのは本当かっ!事実確認を急げ!目撃した奴らも事情聴取に協力を惜しむなっ!!」




 あー............うん。


ㅤさーせん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る