他の方もおっしゃってることですが、異世界ファンタジーが大半の中でこういう「現実のモノに即した物語」というのはなかなかありません。
それはなぜかというと、「下調べをする必要があるかないか」という点が絡んでくるからです。
もちろん、異世界ファンタジー作品の中にも様々な下調べをした上で書いているものもあります。刃物の鍛造の仕方とか井戸の掘り方とか科学の知識とか歴史とか、そういうものを細かく調べた形跡のある作品は存在します。
ただ、実質的な問題として異世界ファンタジーよりも現代日本を舞台にした作品のほうが「調べる事柄」が多くなっていくわけです。
それができるというだけでも、書き手及び作品の数はぐっと絞られます。
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お酒というものは「文化の結晶」です。
たとえば日本語で「洋酒」と呼ばれているものは、実は日本でしか製造されていないものも数多くあります。これはカレーライスと同じで、「洋酒」とは日本文化そのものなんですよね。
ウイスキーにしろワインにしろ地ビールにしろ、それを開発するのにどれだけの時間と労力と費用が注ぎ込まれるか。我々は先人に感謝しなければなりません。
新型コロナの影響で外出自体が難しくなった今、私としては「上品な家呑み」が習慣として定着することを望んでいます。世の中が不景気になるとただただアルコール度数の強い酒をガーッと飲み干すような貧乏人の飲み方が流行るものなんですが、そういう悪習は阻止しないといけません。そして多少の背伸びで口にできるくらいの高級な酒、上品な酒、通好みの酒を紹介できるのは、色さんのような「文章を書ける酒好き」にしかできません。
これからも期待しています。
お酒が好きな主人公と神様が動画配信を巡って、様々な場所に旅をする物語です。
物語とは別にお酒の細かな情報や、立ち入った場所の歴史の解説をしたりと色々と勉強になる作風でもあります。
また、文体は純文学みたいな出だしですが、お酒が好みな愉快な神様との出会いにより、絶妙なファンタジー色を含ませ、読んでいて中々個性豊かで強烈な話でした。
アイスや丼ものなど、グルメを感じるような表現もあり、私も公共機関に揺られながら食してみたい衝動にも刈られましたね。
よく地方の勉強をして、文章に上手く注ぎ込んでいると思います。
この世の中、輪廻を経験する異世界物が飛ぶように人気を生んでいる中、このようなお酒にスポットを当てた硬派な内容は最近は稀にしかなく、その挑戦力に驚かされました。
例え、お酒の味に詳しくなくても、読んでいて何処か心を奪われる、中々巧みな小説ではないでしょうか。