第22話 激闘③

 一方その頃、東は燃え盛る校舎の中、必死になって他の生徒たちの救助をしていた。

 壁を天井をう炎をかわしながら散策を続け、人影を発見し次第その人を抱え、瞬間移動で安全な場所まで運び出す。

「ったく、こんな面倒くさいことはガラじゃないんだが」

 そう、全くもって信条に反する行為だ。だが、他に同じことができる人間もいない。他人に任せるならまだしも、見殺しにするのはあまりにも目覚めが悪い。

 煉獄の中、流れる汗も不足する酸素も意に介さず、傷つき破れ、すすにまみれたローブを炎熱にあおられながら生存者を探し続ける。

「ん———?」

 ふと、くすぶる黒煙の向こう側に、人影を発見した。助けに行こうと一歩を踏み出した時、その怪異の正体を見破った。夥しい数の木製の人形が、まるで夢遊病者のように頼りない足取りで東に向かってきている。

 炎の中でも燃えることのない無貌の影。目も鼻も口もないその異形はなにで感じるでもなく、東を敵として認識する。

「……どうやら、戦うしかないようだな」

 炎の中に、刃が躍る。両手に一本ずつ剣を構え、東は悠然と立ちはだかる。

 疾駆する傀儡。風を巻いて迫るその影に、東の剣が迎え討つ。

 今ここに、二番目の闘いの火蓋が切って落とされた。


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