第20話 激闘
異世界での歳月は飛ぶように過ぎ、その月日の大半をアリアと共に過ごしていた。
最初は半ば以上強引に連れ去られる形で、授業のない日は世界の様々な場所を巡った。春は花から花へ渡る
東は初めは嫌がっていたが、異世界の景色は彼にとって新鮮なものばかりであり、興奮気味で観光すると、自然と隣にいるアリアとの会話も弾んだ。
東はアリアの強情さに
冬のある日の夜、二人はこっそりと自宅を抜け出して、街の中にある一際大きい木の下で待ち合わせた。した事といえば他愛のないことだが、賑やかな街の灯を眺め、プレゼントを渡し合い、最後には少し恋人らしい事もした。
楽しかった。そう断言するほど、アリアと過ごす日々は尊く眩いものだった。
だが、後に知ることとなった。この穏やかな日々に煉獄の炎、生命を焼き滅す破壊の力が襲いかかろうとしていることを。
「アズマ、起きなさいよ。次の授業始まるわよ」
既に我が家も同然に慣れ親しんだエイト・プリンス魔法学校の第三講義室の机で、東は眠りから覚めた。
「わるいアリア、俺はパスだ。あいつの授業ゴミだから受けたくない。もう少しここで寝るわ」
躊躇いなく呟くと、すぐさま東は寝直す準備に入る。こうなった東が
「分かったわよ。先生にはそれっぽい言い訳しておくから。それと、今週末の予定を忘れてないわよね?」
「もちろん、朝九時にいつもの噴水広場で待ち合わせだろ? 楽しみにしてるよ」
その答えに満足したのか、アリアは柔らかく微笑むと、そっと東の頬を指先で慈しむように
「じゃあ、また後でね」
これが東とアリアが交わした最後の会話だった。
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