第19話 七聖賢④
影深き、路地の奥。
その闇の中に、ふと半月が咲いた。闇と一体化するようにジッとしていた浴衣姿の妖艶な美女が、笑いの形に唇を歪めていた。
史記に書かれたような神聖な大亀に腰を下ろし、エデンの園に置かれたような蛇を携える女の姿は、まるで一葉の画であるかのように美しく、
その女の傍らには、十代半ばの少年が片膝をついて恭しく
「其の方、
「
「足りぬ」
不遜の狼藉を働いた少年に、玄翁女帝は緑の瞳をぎろりと向ける。
「面目次第もございません。
少年の
「答えよ、首尾は順調か?」
「はっ、昨日もバルジ王国西部にある都市を爆破して参りました。これで無知な民草は姿なき破壊の神に恐怖し、絶望したに違いありませぬ」
ふむ、と少年の言を
「其の方、妾の力を使って何をすべきか分かっておろうな?」
神の如き強烈な偉容にも、少年は一切物怖じすることなく、自信を込めて返答した。
「はっ。
「……結構ぞ。武勲のほどに期待する」
何を照らすこともない闇の中、女は満足げに呟く。甘い
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