終章 ゲームエンド

プロローグ

「あらあら。このままだと、完全勝利になっちゃうわねぇ」


ゲームの駒プレイヤー達が、ラスボスである俺の偽物を圧倒していた。

その事で、女神ンディアが得意満面気に毒を吐く


まあこれは仕方がない。

本来はダンジョン攻略パーティーが、女神の祝福レベル200アップを受けた状態でギリギリ倒せるかどうかの難易度に調整してあったのだ。

攻略レベルのパーティーが2つ協力したのなら、そりゃボコボコにされてしまうだろう。


「あ、終わったわね。ふふふ、勝っちゃってごめんなさいねぇ」


ンディアがムカつくドヤ顔を向けて来る。

イラっとしたので、拳でその顔面を粉砕してやろうかとも思ったが、止めて置く。

ゲームに負けた俺が、まるで癇癪を起したみたいになってしまうからな。


――そもそも、まだゲームは終わっていない。


女神ンディアは気づいていない様だが、ドロップが発生した瞬間、彼女が生み出した人形――リリアの瞳に歓喜の色が浮かんだ事を俺は見逃さなかった。


彼女はアドルに心酔しているからな。

間違いなく女神と対立する筈だ。

ならばまだ、あれを使った逆転の芽はある。


「まあいい約束通り、お前を復活させてやる」


俺は自身の中にある女神ンディアの部分を切り取り、彼女の肉体を復活させる。

その際力が少々低下してしまったが、まあ誤差だ。


かつてはンディアを殺し、その力を取り込んだ事で神になった俺だが、その後いくつもの世界で神を打ち倒し力を増大させて来た。

今更彼女の分の力を失ったからと言って、大した影響はない。


復活したンディアの肉体が、今彼女が支配しているフィーナと呼ばれる女性の体に吸い込まれていく。


「そのままでいるのか?」


「ええ、その方が面白いでしょ?あの子がどんな風に反応するのか、楽しみだわ」


相変わらず性根の腐った女だ。

まあ此方もあまり人の事を言えた性格ではない自覚はあるが、それでもこいつよりはマシだと断言できる。


少なくとも俺は、ゲームをクリアーした者達にはきちんとクリア報酬を用意するからな。


「じゃあフィナーレに向かうわね」


「好きにしろ」


彼女は月と繋がるゲートを生み出し、その中に消える。

月の方に意識を向けると、無駄にピカピカと光り輝くンディアの姿が見えた。

相変わらず、派手好きな女だ。


昔の事を思い出す。

異世界を使ってゲームを楽しんでいた時の事だ。


ラスボスだった俺と、勇者達との戦い。

そこにンディアは今みたいに輝きながら派手に登場した。

そして俺の力を半分奪って行ったのだ。


あの時は本気でムカついた物である。


「ふ、まあ結局は油断しきった奴を俺が殺してやった訳だがな」


リリアが例の金属を、スキルに収納するのが見えた。

ンディアは自分に酔いしれ全身から強い光を放っているので、その様子には気づいていない。


「さて……あのリリアという人形がどう動くのか。期待させて貰うとしようか」


楽しみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る