エピローグ

「ふ!見たか!これがこの俺!皇帝エターナルの力だ!」


皇帝が雄叫びを上げる。

ただトドメを刺しただけだというのに、よくこうまで誇れるものだと呆れてしまう。


私ははしゃぐ皇帝を横目に、ドロップ品を活用した活路を見出すべく、頭をフル回転させる。


邪神が何故こんな物を用意したのかは気になるが、そう言った事は後回しだ。

状況が動き出す前に、プランを固めなければならない。


――やがて私の中で、一つの計画が固まる。


それはとてもか細い道のりだ。

幸運に幸運を重ね、奇跡を起こさなければ辿り付けないであろう小さなゴール。

普通なら、そんなギャンブルに近いプランは選ばないだろう。


だが問題ない。

幸運が必要というならば、引きよせばいいだけの事。


――そう、マスターには【幸運】のスキルがあるのだから。


幸運はドロップ率に影響するだけではない。

不幸に遭遇すると、その分が幸運となって跳ね返って来る特殊なスキルだ。

これを利用すれば、奇跡だって起こす事が出来るはず。


いや、私が起こして見せる。


「なんだ!」


「あれは……」


突如真上からの強烈な光が私達に降り注ぎ、その場にいた全員が上空を見上げる。

そこには太陽の様な、強烈な光を放つ何かが浮かんでいた。

それは真っすぐ私達の元へ、ゆっくりと、まるで此方を焦らすかの様に降りて来る。


――女神ンディアの御登場だ。


無駄に度肝を抜く様な演出で姿を現し、そして他者コマを絶望に落とす。

派手好きで、性格の悪い女神が好む手法。

私はそれを見て、これは縁起がいいと内心微笑んだ。


かつて彼女は同じ様な事をして、その後自らが転生させた人間――グヴェルの手によって殺されている。

そして女神ンディアを取り込む事で、グヴェルは邪神となったのだ。


女神を敗北させるのに、これほど縁起のいい事はない。


まあ縁起を抜きにしても、この状態は非常に有難かった。

ひょっとしたら、これすらもマスターの幸運の効果かもしれない。


「さて、チャンスを生かすとしましょうか」


全員の視線は、降下して来る女神に釘付けだ。

それはティアも同じ。

流石に攻撃を仕掛けるとバレるだろうが、それ以外なら問題ないだろう。


私は気配を完全に殺し、地面を滑る様に素早く移動する。

何処に?

勿論、偽のグヴェルがドロップした金属の元へだ。


想定通り、誰も私の動きには気づいていない。

降下してきている女神ンディアも、自分の放っている強い光のせいで私が何をしているのか気づけていないだろう。

馬鹿女神万歳である。


素早く金属を【収納】のスキルへとしまう。

このスキルはマスター由来であるため、スキルの内部は繋がっている。

だから、マスターなら自在に取り出す事が出来るだろう。


次に私はテッラの元へと向かう。

そして彼女にだけ聞こえる様、小声で囁いた。


「テッラさん。あなたの命、マスターの為に下さいな」


「!?」


テッラには、マスターの為に死んで貰う。


いや、彼女だけではない。

この場にいる仲間達。

そしてこの世界の全ての生きとし生ける者の命を、私は生贄に捧げる。


全ては、マスターを守るために。


「勿論、タダとは言いません。代わりに、あなたに神すらも殺す剣を作らせてあげますよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る