第27話 お約束

「ちっ!こいつら無限に湧いてきやがる!」


戦闘が始まり、既に5分程過ぎている。

魔獣を結界で分断しつつ、レアとガートゥを中心に敵を殲滅しているが一向にその数が減らない。


遠くの方を見ると、どんどん魔法陣から魔獣が召喚され続けているのが見えた。


「ダブル!アースクエイク!!」


テッラが分身と同時に放ったアースクエイクが広範囲の魔獣を吹き飛ばす。


「強さはともかく、このままだときりがないべ!」


「【超越種の咆哮ドラゴン・ハウリング】が効けば楽なんだがな」


超越種の咆哮ドラゴン・ハウリング】は、自分よりレベルの低い相手を動けなくする状態異常をばら撒くスキルだ。

俺のレベルは女神の祝福によって500を超えているが、残念ながらこいつらには通用しなかった――一度試している。

どうやら、その手の状態異常は聞かない様である。


「皇帝に期待……と言いたい所だけどねぇ」


ドギァさんの言葉に、チラリとエターナルの方に俺は視線を向ける。

一進一退。

ここから見た感じ、戦いは完全に膠着している様に見えた。


「時間がかかりそうだ」


因みに、邪神とエターナルの戦いに割り込もうとする魔獣はティアが排除している。

まあ俺達も出来るだけそちらに敵が行かない様位置取って捌いてはいるが、それでも彼女はかなりの数を一人で処理していた。


正直、想像以上の強さだ。

流石リリアの姉妹機だけはある。


「仕方ありませんねぇ。長期戦は避けたいですし、マスターは皇帝と一緒に本体を叩きに行ってくださいな」


「分かった」


敵の数が減ってこそいないが、戦況はかなり安定している。

ここから俺が抜けてもまあ問題はないだろう。


「但し、力の開放は最小限でお願いしますよ。くれぐれも、俺がトドメを刺してやるぜ。ヒャッハー的なのは無しで」


「分かってるよ」


邪神討伐の最大貢献MVPなど別に狙ってはいない。

そんな物は皇帝にいくらでもくれてやる。

重要なのは生き残る事だ。


それに承認欲求が満たされれば、ひょっとしたら奴も戦いを挑んでこないかもしれないしな。

不快な相手ではあるが、戦わずに済むならそれに越した事はない。


「つか、ヒャッハーって何だよ」


「雑魚がやられる前に良く立てる、フラグって奴ですよ。気を付けてくださいな」


「フラグ?」


相変わらず、リリアは時々意味不明な事を言って来る。

まあ考えてもしょうがない。


「あ、そうそうマスター。皇帝に助勢する時は、こう言ってくださいな――」


リリアから、こういえば丸く収まる言葉を教えられる。


「わかった。じゃあ行って来る」


全員に離脱を告げ、俺は魔獣共を切り捨てながらグヴェルの元へと向かう。

途中ティアとすれ違ったが、彼女は興味なさげに此方を一瞥し、止まる事無く魔獣の処理を続ける。


「悪いが割り込ませて貰うぞ」


「ちっ、なにしに来た」


「魔獣が無制限に湧いて来るんでね、おっと!」


近付いて来た俺に、グヴェルが衝撃波による攻撃を仕掛けて来た。

例の力を使ってはいないが、エターナルより前に出なければ何とか回避出来る範囲ではある。


「失せろ!貴様の力など不要だ!」


皇帝がグヴェルと斬り結びながら、失せろと言って来る。

このまま参戦しても、下手したらこいつに斬り付けられそうだ。

そうならない様、俺はリリアに言われた言葉を口にする。


「おいエターナル。大ボスには宿命のライバルと組んで退治する。それがお約束ってもんだろう?」


正直、自分で言っていて意味がサッパリ分からない。

何の約束だ?

だがリリアがこう言えと言ったのだ。

まあ何らかの反応は返って来るだろう。


「ふ、いいだろう。但し足を引っ張るなよ!」


エターナルからは、あっさりと快諾が帰って来た。

その声は心なしか楽しそうに聞こえる。


一体何が奴の琴線を動かしたのか不明だが、ここは素直に流石リリアと思っておこう。

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