第26話 邪神

グヴェルシャドーの居た広間を抜けた先――


そこは広大な空間となっており、その際奥には骨で汲み上げられた髑髏の玉座があった。


「……」


玉座には、一匹の化け物が座っている。

グヴェルシャドーと瓜二つの姿――いや、どちらかと言えば逆か。

シャドーが本体に真似て作られているのだから。


「詳細が一切見えない」


「まあ、神様ですからねぇ」


どうやら、レア達の神眼では邪神を鑑定する事は出来ない様だ。


しかし……


「こいつが本当に邪神なのか?」


グヴェルは俺達の姿を見ても微動だにしない。

人間如きに揺るぐ必要がないだけともとれるが、中身がない様な――そう、まるで抜け殻の様な印象を受ける。


そのため、自然と疑問符が俺の口をついた。


「よくぞここまでやって来た。か弱き虫けらどもよ」


その時、グヴェルが口を開きゆっくりと玉座から立ち上がった。

その声も、どこか魂が抜けた様な空虚な感じがしてならない。


女神から受けたダメージが回復しきっていない状態で封印が解かれた影響だろうか?


「我が名はエターナル!貴様を討つ者だ!!」


皇帝が邪神相手に、いつもの調子で前に出る。

だが、俺はそれを無謀な行動とは思わなかった。


……まるで負ける気がしない。


奴からは、本能を揺さぶる様な凄みの様な物を全く感じられないのだ。

リリアが絶対勝てると宣言した意味を理解する。


「神眼での解析は効かないが、思った程ではなさそうだな」


「やっぱ俺の世界に来たのとは別物だな。次元が違うぜ」


「女神の加護を受けた私達に、恐れる物などありません」


皆も俺と同じ判断の様だ。


「雑魚とは言えボスですから。皆さん、一応気合い入れて下さいな」


雑魚なのかボスなのか、どっちだ?

等とつまらない突っ込みはいれない。

いつもの事だしな。


「愚かな。万全ではないとはいえ、虫けら如きが我に勝てると思っているのか」


「ふ……邪神だろうが冒険者だろうが、所詮はこの俺を彩る添え物に過ぎん!全てを薙ぎ倒し――」


エターナルがチラリと此方を見た。

こいつを倒したら次はお前だと、その目が語っている。

本当にわかりやすい奴だ。


「俺が世界の中心である事を証明してやろう!」


「よかろう。ならば死を持って己が身の愚かさを知るがよい!」


グヴェルが両手を広げる。

次の瞬間、広い空間を埋め尽くすかの様な数の魔法陣が生み出された。


「こりゃ500や600じゃきかないねぇ」


それは召喚陣だった

中からは獣の形をした赤毛の魔獣達が姿を現す。

グベルシャドーの分体達だ。


軽く1,000を超えるその群れが、俺達の周囲を埋め尽くしている。


「へっ!面白れぇ!レア!何匹狩れるか勝負だ!」


ガートゥが覚醒し、ゴツイ体から緑の乙女へと姿を変える。


「いいだろう」


分体達のレベルは500だ。

それが1,000匹以上。

普通に考えれば絶望的な状況である。


だが、女神によって力を受けた今の俺達なら全く問題ない。


懸念があるとすれば、邪神と同時に相手をしなければならない事だが――


「は!雑魚が増えた所でこの俺の敵ではない!」


そっちは皇帝が気を引いてくれそうだ。


奴は周囲の魔獣など気にしないかの様に、迷わずグヴェルへと突っ込んで行く。

それが合図となり、魔獣達が此方へと一斉に襲い掛かって来た。


「邪神の相手は皇帝に任せて、私達は雑魚処理と行きましょうか」


「ああ、エターナルの献身に甘えるとしよう」


本人にそんな気は一切ないだろうが、精々頑張って貰うとしよう。

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