第4話 連続ドロップ

適当にダンジョン内を歩き回り、スライムを見つける。

俺は此方に気付いていないそいつに近づいて、素早く剣を振って始末した。


これで貰える経験値は10になっているは――


「ええええええええええぇぇっ!!?」


思わず大声を出して固まってしまう。

経験値が増えたからではない。


目の前に――黄金色の瓶が再びドロップしていたからだ。


「連続ドロップって……マジか……」


0ではないとはいえ、連続ドロップの確率はきっと天文学的な数字になるだろう。

そんな幸運が目の前に転がって来た。

余りの事に体がぶるりと震える。


「これって、二つ目を飲んだらどうなるんだろう?」


売って、それで可能な限り最高級の装備を――ダンジョン産の最高級品などは残念ながらお金ではほぼ手に入らない――揃えるのが正しいのは分かっている。

だが2つ目を使った場合の結果が、俺は酷く気になった。


追加で増えたり、効果が上がるのだろうか?

それとも無効?


どちらかは分からない。

こういったスキル習得系のアイテムが複数手に入る事など、まず起こらない事だからだ。


もし効果が上がるのなら……倍の20倍でウハウハの可能性もありえた。


俺はごくりと唾を飲む。


「行くか……」


連続ドロップなど、本来はありえない幸運だ。

ならばその運を信じ、賭けに出る。

ダメだったらその時はその時だ。


俺は2本目の経験値ポーションを手にし、そして一気に飲み干した。


「おおっし!」


賭けは俺の勝利に終わる。

自分の中でスキルが変化していくのがハッキリと感じられた事でそれが分かった。

魔法を使って、早速自分のスキルを確認してみる。


【経験値アップLv2】


スキル欄にある、経験値ボーナスのレベルが見事に上がっていた。

これで経験値20倍だなと思いながら、概要欄を開いてみる。


「ふぁっ!?」


詳細を見て変な声が口から飛び出た。

何故なら、そこには100倍という数字が記入されていたからだ。


見間違いではない。

間違いなく、経験値が100倍と示されている。


「効果は乗数でかかるのか……」


それは嬉しい誤算だ。

賭けは勝利どころか、超大勝利と言える。


「経験値100倍にレアドロップ率100パーセント」


これならいける……俺はそう確信する。


経験値10倍は見返すための最低ラインだった。

その上で、数年死ぬ気で頑張って何とかという想定だったのだが、経験値が更に10倍になった事で、俺の見返しはグンと加速する事になるだろう。


「いや、まだ喜ぶのは早いな。バグかもしれないし、きちんと確認しないと」


実はスキルには、異常状態バグと呼ばれる物が存在していた。


バグとはスキルの概略に表示される能力が、実際とは違う状態を意味している。

例えば詳細に載っていない隠された能力が入っていたり。

逆に記載されているのに、その効果が発揮していなかったりする状態の事だ。


そのためスキルにバグがあった場合、経験値が100倍と表示されていても実際はそれ以下の可能性がありえた。


本来そう言うのは確認に手間取る物だが、幸いこのスキルは経験値という分かりやすい目安があるので話は簡単だ。

経験値1のスライムを一匹狩るだけで確認できる。

スライムを狩って、経験値が100増えていればバグなしという訳だ。


早速次のスライムを見つけだし、素早く狩る。

そして魔法でステータスを確認してみると、先ほど確認した時よりも経験値が110増えていた。


10はさっき狩った分だ。


つまり――


「よっしゃ!100倍確定!」


俺は力強く、ガッツポーズを決める。

1匹で100匹分の経験値が得られるのは本当に大きい。


ソロはパーティーに比べ、数段弱い敵を狩らざるを得ないというのが実情だった。

強敵相手に単独で挑むなど、自殺に等しい行為でしかないからだ。

当然ランクの低い敵を狩る分、経験値効率は落ちる。


だが経験値が100倍になってくれるのなら、それでも軽くパーティーの数倍以上の効率は期待できるだろう。


それに加えてレアが確定しているドロップの独占。

アイテムを惜しまず湯水の様に使っていけば、1年もあれば奴らと並ぶことも可能なはず。


見てろよ。

必ず俺は緋色の剣を超える冒険者になってみせるぞ。

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