第3話 超レアドロップ
「お……おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
剣で切り裂いたスライムの体が消滅し。
俺の目の前に、黄金色に輝く液体が詰まった瓶がドロップした。
それを見て、俺は思わず雄叫びを上げる。
この1年でどれだけスライムを狩っただろうか?
恐らく一万近くは狩っているだろう。
ついに……ついにその時がやって来たのだ。
俺はそれを震える手で拾い上げ、魔法による鑑定を行って間違いないかを確認する。
【経験値アップポーション】
そこに表示されたのは、紛れもなく俺の求め続けた物だった。
たった1年で出てくれた事は僥倖と言っていい。
正直ダメ元だった狩りだが、世の中何とかなるものだ。
正にスキル【幸運】様様と言える。
「これを売れば、一生遊んで暮らす事も出来るんだよなぁ……」
レアリティと効果を考えれば、それだけの価格が付くのは間違いなかった。
単純に幸せな人生を歩むならそれが正解だろう。
だが、それでは俺を追い出したかつての仲間達を見返す事は出来ない。
仮に売って得た金を見せびらかしたとしても、運よく超レアアイテムを引き当てただけ、そう思われて終わるのが落ちだ。
冒険者として奴らの上をいかなければ、目的を果たしたとは言えないだろう。
「よし!」
俺は手にした瓶の蓋を開け。
それを一気に飲み干した。
これで後戻りはできない。
前に進むのみだ。
「ふむ、無味だな」
味はしない。
感覚的にはただの水を飲んだ感じだった。
だが、自分の中で新たなスキルが生成されていくのがハッキリと分かる。
この感覚、いつぶりだろうか?
確かあれは4年前だったか……俺のレベルが3に上がった時のはず。
あの日、俺は【健脚】をレベルアップで習得している。
【健脚】は文字通り足腰を強化するスキルだった。
但し、筋力ではなく持続力を強化する効果だ。
まあ戦闘力にこそ直結しないスキルではあったが、ダンジョン内を長距離移動する事になる冒険者にとっては地味に有難いスキルとなっている。
俺がスキルを手に入れるのは、その時以来の事だった。
あれから4年。
戦闘に参加していないとはいえ、もちろん訓練は欠かさず続けてきた。
だが、追加のスキルは手に入ってはいない。
それもそのはず。
何故ならスキルは天性の才能だからだ。
スキルは生まれながらに習得している――ユニークスキルと呼ばれるもの――か、もしくはレベルアップによって覚醒する事によってのみ手に入る。
だから訓練などの努力をしても、決して身に着ける事は出来なかった。
それがスキルという物だ。
まあ今回の様な特殊なアイテムでの習得は例外中の例外で、超レアドロップのみが起こす奇跡と言っていいだろう。
「本当に久しぶりの感覚だ」
因みにスライムを倒しても経験値は1しか貰えない。
現在の俺のレベルは6で、7に上げるには3万以上の経験値を稼ぐ必要がなる。
その為、この1年で相当な数を狩りはしたが、残念ながらレベルアップには至ってはいない。
「取り合えず、効果の確認をしておこう」
念のため、俺はステータス鑑定の魔法を使って確認する。
魔法を発動させると目の前にステータス一覧が表示され、スキル欄の2番目に【経験値アップ】が刻み込まれている事が確認できた。
「コモンより上か。って事は、レアスキル扱いみたいだな」
ステータス上では、スキルはより高位の物が上に表示される事になっている。
そうして同位であるならば、先に習得した物が上に来るわけだが。
【健脚】の位置が下がってその上に【経験値アップ】が表示されているという事は、このスキルがより上位のレアスキルだという証だった。
まあ効果を考えれば、当然と言えば当然か……何せ経験値10倍という破格の効果だからな。
因みにスキルは3種類に区分され。
コモンスキル。
レアスキル。
ユニークスキルの順に序列があがっていく。
そしてその効果は、上に上がる程強力になると言われていた。
俺は眼前に映る【経験値アップ】の部分を指でタッチした。
すると画面が変化し、スキルの詳細な説明が表示される。
「経験値10倍!よし!よぉし!」
効果は分かっていたが、概要欄にあるそれを改めて確認する事でテンションが上がり、力強くガッツポーズする。
よし!
取り合えず狩りだ!
適当にスライムを狩って、その効果を実際に確かめるとしよう。
大丈夫だとは思うが、バグがあっても嫌だしな。
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