第129話 海辺の夕暮れ

ディスコとは反対方向だけど、海岸沿いのカーブにある

デッキ・カフェ。


そこのレストランの前にXSを止めた。


エンジンを止める。


千秋は、静かにタンデムグリップを掴んで降りた。



「はー。いいね、750って」にっこり。



俺は、センタースタンドを掛けて。


空冷エンジンが冷えて、チン、チン・・・・と微かな音がする。




「750、初めて?」




と、尋ねると、千秋は「うん。乗ってる人いないし」



ヘルメットを取って。ぶら下げて。


俺もヘルメットを取って、右手を通して。

フルフェースだから。



この時かぶってたのは、コミネ・フジ800だった。


レガゾーニのレプリカである。


中に、ヘッドフォンを分解してスピーカーにしたものを

つけてある。


アゴのところの内装に、ステレオ・ミニジャックを付けて

中間コードでつなぐようにしてある。




それを千秋は見つけて「なにこれ?」




「ああ、スピーカーだよ、音楽の」と、見せてあげた。




千秋は「聞かせてくれる?」




いいよ、と、俺はコードをつないで

ウォークマン、腰につけていたそれのスイッチを入れた。




テープは、FMから録音した「スタッフ」の

インストルメンタルだった。



リチャード・ティーの

フェンダー・ローズ・ピアノが

ステレオで一杯、左右に広がり

ふんわり、揺れる音だった。



「my sweetness」と言う曲。




千秋は、しばらく聞いていてにっこり「ステキな音楽。」



俺は「そうでしょ」と、にっこり。



千秋は「こういうのを作ってるの?」と聞くから




「作りたいとは思ってるけど、なかなかそこまでは」と。



ヘルメットを俺に渡して「いいね!頑張って」と。元気な笑顔。



レストランの入り口で、しばらく立ってそんなことをしていた(笑)。







海のそばだから、似たようなお店はある。

まだシーズン前だし、連休でもない土曜。


割とお店は空いていた。



内装は木造で、ログハウスみたいな雰囲気。

天井も高く、素材のままのような木の感触がした。




大きな窓際の4人掛けに、ふたりで対面に座って。



なんだったか、スパゲティーを頼んだと思う。



レモネード、それとソーダ。



ふたつ頼んで。




爽やかなソーダの感触が快い。




千秋はボンゴレで、俺はミートソースだった。



「これ、なんかねー。好きなんだ、給食で出てきて」

と、ミートソースのことを、俺は。



千秋は、丁寧に貝のひもを殻から外して「そうそう。(^^)。袋に入ってて。ソフトめん」




俺も、にこにこ「余らないかなー、って、ソースは余るんだけど」



千秋も、そうそう(^^)と・・・にこにこ。

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