第126話  750

この、バイク屋のオヤジさんはいい人なので・・・以来、ここと付き合っている。


結構、迷惑も掛けたんだが・・・。でも、細かいことは言わない。


「男」


と言う感じ。


だから、中井貴一くん(笑)が、箱根で事故った時も



「買ったバイク屋に言えよ」と、オヤジさん、言ったんだけど。


俺が「借りたバイクだし、遠いんだよ」と。


なんか・・・浜松だかから持ってきたバイクらしい。



「しょーがねーなあ」と。電話を切って


すぐ来た(笑)。1時間くらいか。


ホンダの軽トラで。



中井貴一くん、かなり痛がるので・・・・病院に直行。


脛が折れてるとの事。



色男だからなあ(笑)。




乗ってたハスラーはたいした事無くて。傷もほとんど無かったから

上手く、直してくれて。


金も取らない。


そういうオヤジさんだから、却って、中井貴一くんは


「じゃ、買います一台」と。VT250FEの黒いのを、新車でオーダー。


心と心の商売。ってそういうものだよね。



昔ながらの人、である。




Nし山が、プータローしてたときに・・・・・

このバイク屋さんで働かせた事があった。

だが、長く続かず・・・・行方不明(笑)。


俺は、行方を捜して始末をつけたり。


そんなこともあった。




そういう関係なので、中古で面白いバイクが来ると・・前にも書いたが

「乗ってみろ」と、渡す。



気に入ったら買え、と・・・・そういう事で。






なので、偶々暇な時、このバイク屋さんに居ると

「ちょっと、バイク引き取ってきてくれ」とか、よく頼まれた(笑)。




このオヤジさんは、俺の乗り方が好きだと言う。



いつだって全開だし(笑)。CBXだって、目いっぱい回して走っていたから

かもしれない。



それで、いろんなバイクに乗せて、見て楽しんでいたとか。





このバイク屋さんは田んぼの中で、静かだから

バイクで俺が吹っ飛んでいくと、すぐにわかる、と言って

笑っていた。




なので。

俺が一時、金に困ってRZVを売ると言った時

黙って、金出してくれて。


「金貯まったら、買い戻せ」と。


1年後。金が貯まって、同じ金額で売ってくれて。

車検証を見ると、俺の名義のままだった。



オヤジさんは、預かってくれて金を貸してくれたのだった。

売ったほうが儲かる筈だけれど・・・・。



「あんたが乗った方がいいよ、このバイクは」と。


まあ、そんなワケで。ずっと家にある。





でも・・・・。


「早く嫁貰え」と言うのには閉口したが(笑)。



そーんなもの貰ったら、後で困るし・・・・。

第一、オヤジさんには話して居ないが

父の借金もあったし、どこかにいる腹違いの妹(笑)とか。



そーいう関係に、例えば洋子ちゃんみたいなまともな家の娘を巻き込むのは可哀相だし。




ほぼ、車寅次郎である(笑)。


まあ、腹違いの妹がさくら、くらい綺麗なら映画になるが・・・・・。


このハナシは面白いので、また後で書こうと思う。





なので、俺は「寅さん」を見ると心境が良く判る。



さくらが「お兄ちゃん、バカね」と言っても旅に出てしまう。

それしか方法がないのだ。



し・・・・・。



新しい女の子と、楽しくやってた方が面白いのだ。



深く関わって、暗い方向に行くよりは

どんどん新しいのに出会った方が・・・・と。


大体、定着って面白くないのだし。






そんな、オヤジさんはもう死んでしまって

今は息子がやっているが、やっぱり俺は、そこでしかバイクは買わない。



義理と人情、と言うか・・・。


昔は、会社もそうだったし、地域もそうだった。


みんな家族のようだった。




今でも、このバイク屋さんはそうだ。







バイクに乗るために、生きる。

そんな時期があってもいい。




19歳になって、間違って750免許に合格してしまった。


30回とか、そのくらい受けても受からないと言う免許だったが

4回目で受かってしまった。

高校のクラスメートたちと、卒業前に一緒に行って

事前審査はみんな受かった。


その後。


親友、ノリちゃんが3回目。


俺は4回目。


時期は同じで7月だった。

1980年である。



それで、XSを買った。

例の、Yのおかげで行けなくなった(笑)前のバイク屋さんである。


20万円の、22000km走ったバイクで。


結構汚かったが、磨いて綺麗にしていて。

それに乗っている時間が欲しかったから

飽きるまで乗ろうと、フリーターみたいな生活をしていた。



元々、高校もバイトしながら行っていたので

もう疲れた、のもあった。


父の借金もあり、オマケに病人である。


兄は半分グレてしまい、変な女と夜遊びばかりして

暴走族みたいなことをしていた。




そんな時でも、オートバイがあれば

それだけで楽しかった。



高校を出る時、進学を・・その家の関係で諦めた。

でも、オートバイに乗るだけで楽しかったし

いつかは、父の借金も訴訟も片付く。


その後で、やり直せばいいとも思っていた。



それで、まあ、楽しいバイクライフである(^^)。





XSは3気筒だから、独特。どちらかと言うと、トルクのある4気筒みたいな

印象だった。


面白いバイクで・・・・。



高校を出るとき、とりあえず入ったタイヤのディーラーでも


「750!?」なんて。乗っていくと注目された。


免許制度のせいで、まず、街で見る事はなかったし

DOHC3気筒、シャフトドライブである。


独特の排気音。


今のMT-09に近いイメージの音だ。


そんなので会社に来る、もじゃもじゃパーマの男。

それが俺で・・・。



当時だから、妬んだりする奴は少なかった。

けれど、居なくは無い(笑)



営業だから、まあ、そういう・・・のも居た。

俺は、元々長く居るつもりもなかったから

媚びることもしなかった。



と、言うのは・・・・。知り合いのツテで

バイクの仕事ができないか?と・・・いろいろ、探っていた。

テストライダーとか。プレスライダーとか。



高校2年の時は進学希望だったけど、でも金もなし。能力もなし。

父が軽く「コネでなんとなかる」とか言うので

アテにしていたら、それもコケて(笑)。


伯父が国鉄職員で「大学を出てから国鉄に来い」と言っていたが

その大学も怪しくなって(笑)。


高卒で入ろうかと思ったが、当時の高卒就職は推薦枠があり・・・

高校3年の終わりになって国鉄に入るのは不可能。


伯父は青森車掌区だったから「青森に来れば入れる」とは言ったが・・・。

家をほっぽって行くわけにも行かない。


兄は頼みにならず・・・・逃げてしまった。



(そのバチがあたり、若くして死んでしまうのだが。悪い事はしないものだと思う)。



それで、腰掛にタイヤの配達をしていた。



まあ、配達って割と楽しい。

と言うのは、ガソリンスタンドやタイヤ屋さんには

かるーいメの可愛い子が、割といたからだったり(笑)。


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