第116話 水曜日の洋子ちゃん

なぜ、洋子ちゃんのお母さんが俺を知ってるか?と言うと・・・


娘がバイトしてるから、と・・・・様子を見に来るついでにお買い物。

その時、よく話題に出る、面白い男のことを見て・・・と言う訳。



なので。


この少し後、奥さんの弟の我侭に振り回されて・・・バイトをほとんど、その弟に

任せてしまったので・・・・。



そういう、お友達需要が無くなった。結果、潰れる運命になるのだが

この時は、まだそれを知らない店長である。


お店の経営なんてよく知らない、脱サラおじさんの悲しい末路だ。





ただ、このハナシには裏がある。



店長の奥さんの弟は、なーんと、あの加藤由紀子、アソビ人風の

彼女が好きになっちゃった・・・から、店に転がり込んだと言う事を

後で俺は知った。




大人しい、いい子が一杯いるのになぁ、と・・・不思議に思った俺だったけど。




・・・・・それで。



その由紀子も首になってしまい・・・・。



カレは、なんの為にここに来たのか?無意味な転職になってしまった。



し。



由紀子に思いを告げることも出来なかった。



あーあ。



可哀相。



ここのコンビニって、どうして恋が生まれるんデショ(笑)。俺以外ね。





それはともかく。


俺は、水曜日。


洋子ちゃんを迎えに、駅まで行っていた。


例のロフトのカフェに、XVを置いて。


Yも置いて(笑)。





夕暮れの雑踏。駅の、太い柱。

時刻表が書いてある。




そんなに大きな駅じゃないから、雑踏と言っても知れている。


柱のかげで、俺は・・・待った。




ぱっ。



と、飛び出す絵本みたいに洋子ちゃん。


にっこり。



短めの髪は整っていて。左に分けている。


お化粧っぽい感じは見当たらないので、より、愛らしく見えた。


にっこり。


ジーンズの短めのジャケット。


その下は、ふつうの、お嬢さんふうの襟のまるいブラウスに、カーディガン。

その下は・・・見えない(笑)。


シンプルな紺色のスカートはひざ丈で、中学生みたいに可愛らしい。


白いスニーカーと短めのソックス。


小さめのバッグ。



「お待たせしました」と、マジメなご挨拶。



俺は、ちょっと、どっきりした。



可愛い子とデートの待ち合わせ、みたいな気分で。



「いや、全然。待ってないよー」と、にこにこしてしまう。




誰かが見てないだろうな・・・なんて、あたりを気にしたり。



「あ、じゃ、行こう?すぐそこ。前に話した地下のカフェー。」と、俺が言うと



「智子ちゃんが言ってたとこですね」と・・・・。


そういう話はすぐ伝わるらしい(笑)。


ガハハのおばさんの娘を連れて行ったので。




こんな、可愛い子とデート、なんてのもいいかなー。なんて

柄にもなく俺はそう思ったり。



そう。このデート(?)は・・・・


Yが、俺と洋子ちゃんをくっつけようとして画策したのだ。



その前にも・・・・Yは、朋ちゃんと俺をくっつけようと、していた。




後で考えると・・・・Yは、元々♂♂の気があったので・・・。


俺も♂♂だと勘違いし、そうならないように気遣っていたの・・・かもしれないが。



そんなことは全く無い(笑)。



ただ、可愛い子がいっぱい居るのに、ひとりと抜き差しならぬ・・・・いや。

抜き差しして(笑)身柄拘束されるのが・・・つまんなかった。

それだけだった。



(当時は、女の子が選ぶと・・・結婚しなくてはならない。そんな時代でもあった。

Hなんて、ふつーは結婚の後、そういう時代だ)。


それに・・・・お気楽暮らしも、そうなると悲惨なビンボー人である。



それもメンドーだった。




終身雇用が当たり前の時代で、誰でも大抵は就職できた時代だったから

敢えて、そうでない道を選ぶ人も少なかった。


いい時代だった。



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