第117話 XVと洋子ちゃん

洋子ちゃんは、そのカフェの前まで来て

俺のXVを見て「あ、ここですね」と、にっこり。


あのデザインは、洋子ちゃんも好きらしい。

簡素で、素材が美しく仕上げられていて。



洋子ちゃんも甘いなぁと思うのは、俺がもし悪い奴だったら

Yとぐるになって、酷い目に遭わされるとか

考えなかったのかな、なんて思ったりもしたけど。


そーいう話しは日常になかった時代でもあった。




カフェは、女主人がどこかの外語大を出てから開いた、と言う

田舎には珍しいお店で


漆喰の白い壁、グランドピアノが一台あって。


ステレオでレコードが鳴っていて。


カウンターが、木で作りつけ。


テーブルが、いくつか。




「あら」と・・・ここの人、由布子さんが、にこにこ。


彼女は、ちょっと沢口靖子、という感じの美人である。

当時25歳くらいだったかな。



昼間、カフェの時間を店番していて。お料理も作って出していたり。



「こんばんは」と、俺が挨拶。


洋子ちゃんも。



「由布子さん、この子はね、セブンイレブンのバイト仲間の」と言うと



由布子さんはにっこり「こないだの子と一緒ね」



俺は「そう」と言って・・・・「この子は、洋子ちゃん」



洋子ちゃんはにっこり「こんばんは」





Yは、その俺たちを見ている。


髪の毛だけでも切ればいいのにね、と思うけど

真っ直ぐの長い髪、伸ばしっぱなしで。


なーんとなく、それだけでも不気味(笑)。


パーマ掛ければ、とか言ったら

いつか、掛けてきて

ゲイリー・ムーアみたいになってた(笑)けど。






そこのYの居る席に、洋子ちゃんを連れて。



洋子ちゃん、怖そう(笑)。



俺は「この人はね、怖そうに見えるけど。女の子には優しいから。」と。


洋子ちゃんは、静かにお辞儀。



洋子ちゃんは「何月生まれですか?」と・・・・。



星占いのハナシ、なんかして。



Yは「3月、魚座かな」と。なーんとなく、Yも恥ずかしそう。


不思議(w)。



洋子ちゃんは「おさかなみたいですね、顔が、魚座さんね」と、そこで

可愛らしく笑った。


Yも、にこにこ。



俺は、ホロスコープ占いなんかを書いてたので「顔は・・・上昇宮で決まる」とか

思ったけど、そういう事言うと可哀相だし(^^)。


洋子ちゃんがかわいいし。まあ、和やかでいいかな、と思って。


少し、お話して。



Yは「あ、それじゃ、遅くなるとお母さん、心配するから送ります」


この日、Yはお父さんのVWシロッコ(最初のやつ)に乗ってきてた。



洋子さんは「はい、あ、でも・・・・私、あのオートバイに乗ってみたいです」



と。XVのことを見上げて。


ロフトのカフェから、入り口にあるXVが見えた。



・・・まあ、クルマじゃどっかに連れ去られて・・・ぬっぱぬっぱ(笑)

なんて事もあるし。



そういう警戒もあってか。


Yはあっさり振られた(笑)。





すこしがっかりのY。



で・・・俺と洋子さんは、由布子さんにバイバイして。



「また、いらしてね」と、由布子さん。


「ハイ。お友達と来ます」と、洋子ちゃん。



俺は、地上に上って。


XVのロックを解除して、メインスタンドを降ろす。


ふわり。

猫足のように、モノクロス・サスペンションが沈んで。


メイン・スイッチをON。

ニュートラル・ランプが緑に光る。


チョークを引く。

サイドスタンドを出して、セルを回した。


自動車みたいな飛び込み式セルが


ひゅう。

がしゃん。


一瞬でエンジンが掛かる。



とととと・・・・と、ファースト・アイドルに。

すぐにチョークを戻して、スロットルで1200rpmにして。

アクセルの開き具合で、温まり方を見て・・・。


アイドリング。


ひゅる、ひゅる・・・と。72度V2気筒は

車体を揺らしながら。600rpmで回っている。



タンデムステップを出して俺は、バイクに跨る。


洋子ちゃんは小柄だから、バイクが沈んで丁度いい。



「よい、しょ」と、洋子ちゃんはステップに左足を掛けて。

スカートだから横座り。

小柄だけど意外と、グラマー(笑)ぽよんぽよんで、可愛らしい。



お見送りに来た由布子さんとYに「じゃ、また」と


クラッチを切り、ギアを1。


クラッチを離し、とととと・・・と。走り出した裏通り。


洋子ちゃんは両手を、前に回してくっついて。


かわいいおっぱいが(^^)背中に。


おちんちんが元気になって困る(笑)。



洋子ちゃんも気持いいかしら、おっぱいが揺れて(笑)なーんて

考えたりしながら




ちっちゃくても、女の子なのね(^^)。


ゆーっくり。洋子ちゃんのお家へと。静かな道を通って。



タイコ橋を渡って、林の中の静かな道を、ゆっくり。



洋子ちゃんは、静かだ。



高級住宅地の、洋子ちゃんのお家に着いて。

エンジンを止めて。


洋子ちゃんは、ぴょん、と降りた。


意外と元気な子。



石造りの門、鋳物の門扉。


おかーさんが出てきて「あら、こんばんは。送ってきて貰ったの。」


俺は、レガゾーニのヘルメットを取って「こんばんは。お嬢さんは無事、送り届けました」


おかーさんは朗らかに笑って「面白いのね。」


洋子ちゃんはにこにこ。「ありがとうございました。楽しかったです」



・・・そっか、楽しかったの、よかったね。



おかーさんは「あがって、お茶でも」と・・・言ってくれたけど


XVを置いておくとこがないので(笑)路地だし、置いておいたら車が通れない。



「いえ、今日は遅いですから、ありがとうございます」と。俺。



おかーさんは「そーお。じゃ、また、遊んでやってくださいね、洋子と」


俺もにっこり「はい」



洋子ちゃんもにこにこ。瞳が輝いていた。


・・・・濡れたかな、振動で(笑)。



ではでは・・・と、俺はXVに跨って

静かに、静かに。

住宅地を離れた。





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