第105話 真由美ちゃん

なんで、スーパーにそんなにバイトが必要だったかと言うと

その頃は、レジ掛が値段を見て

数字をボタンで押して、会計をすると言う仕掛だったから。


まだ、バーコードが全部のものに付いてなかった。


店長の頭にはついていたが(笑)。


店長は、痩せて、メガネを掛けていて。いかにも宮仕えが長い、と言う感じのくたびれた人

だけど、愛嬌があって、いい人だった。


俺のようなタイプでも、別に意地悪くはしなかったのは、まあ時代である。

そういう人は、いない時代だった。


だから、女の子も、おばさんも生き生きと、明るかった。



(それなので、どら息子が如何に嫌われ者だったかがよく判る)。





バイトの女の子も、いろいろ。



レジ打ち、なんて低賃金のバイトを真面目にやる子に、悪い子はいない。



姉妹で、手話通訳をしている子とか。


高校生なのに、毎日帰りに寄る子。


女子大生。


女子高生。


和食のお店をしていて、店が暇なので・・・合間に来てる娘。とか。



みんな、かわいい子だった。




高校生のひとり、真由美ちゃんはちょっと変わっていて


凛、として。笑わない。


鼻筋の通った美人で。まっすぐの髪、ストレート。

短めに揃えていて。


この子が、俺のようなクルクルパーマの長髪、ショッキングピンクのTシャツで

来るような・・・・こういう奴に不信感を抱くのは、まあふつー。


だいたい、オートバイなんて不良の乗り物である。


それも750cc。禁止になっている集合マフラーで

大きな音を立てて(笑)。



なので、遠くから、じーっ・・・・と観察しているのが、この子だった。



「まあ、ヘンな生物だと思っているのだろう」と。



時折、レジの紙が詰まったとか、お釣がないとか、

そんな理由で、ふたこと、みこと。


言葉を交わす事もあったりしたけど

そういう時、視線を合わさずに。でも、口調はやさしくて

可愛らしい声だった。



「ありがとうごさいます」と、丁寧にお辞儀をする子で。



この子は県立東高校で、俺が北高なのを知っているようで


「同じ県立ですね」と、にっこりすることもあった。


でも、そのくらい。恥ずかしがりらしく・・・・・可愛い子だった。



3年生なので、年末でバイトを辞めるとかで・・・・。

12月の終わり。


淋しげに仕事をして、帰る時も

やっぱり遠くから、じー・・・・と。見ていた。



俺は、にっこり。手を振ってあげた。




県立東高校は、北高と違って


よく東大に入るような、そういう学校で。


俺の行ってた北高は、まあ、バカ高である(笑)。


月謝安いから北高に入ったのだけど(そのあたりのハナシは、

「ほのぼの高校」に書いてあります(笑)。

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