第43話 ブラックバードくん

今日の日記


[フレーム考 2]



今日はちょっと暇があったので裏山へ走りに行った。

田舎住まいだから走る場所には事欠かないが

近所の名所になっている場所がある。そこは

家の裏山の行き止まりの道路で、全長が数kmだが

なんでも開発中に会社が潰れた別荘地の道路だと言う事だが

しかし、これが近所の走り屋で有名になり、昼夜問わず走りマニアが来る。



昼間はいわゆる走り屋は来ないので、俺はRZVを持ち込み

靴のつま先を削りながら(ステップが当らないようにつま先をすこし出しているのだ)

タイト・コーナーを楽しく走っていた。



と....


さっきすれちがったブラックバードが後ろから追いかけてきた。


ホンダらしいハイトーンの4ストサウンドは、良い感じだ。

昔乗っていたCBX750Fを思い出し、俺は嬉しくなった。

あれからもう22年だ。



ブラックバードは、俺を追い越すでも煽るでもなく後ろに付いている。

どうやらRZVがもの珍しく、見物しているらしい。


ならば、と....


RZVらしいコーナーワークのお手本を見せてあげよう。

それと、血沸き肉踊る2スト4気筒のサウンドを聞かせてあげよう。



いきなりシフトダウンはせず、まずはクルージング・ギアのまま

ゆっくりとコーナーに向かい、ブレーキングしながら2ndへ落とす。

スムーズにバンクさせ、軽くハング・オフしながらちょい、とスロットルを当てる。

両輪がバランスしたまま、RZVは綺麗に弧を描いてアウトへ孕んでゆく。



お手本どおりにまずはコーナー。


まだ、ブラックバードはついてくる。



少し長いストレートを2ndのまま引っ張り、次はタイトな左ベンド。


ブレーキングをすこし遅らせ気味にして、ちょいと前ブレーキを残し

バンクさせながら大きく左へハング・オフ。シフトを落とす。

同時にステアを左へ切る。

腰のあたりへの右モーメントに合わせてリア・タイアの接地面をアウトへ蹴るつもりで

ステップ・ワーク。

面白いようにクイックに回り込むのは16インチらしい特性だ。


並行してブレーキを解放、スロットルを柔らかく。

リア・タイアとフロントのグリップバランスを感じながらワイド・オープンにしてゆく。


甲高い2ストサウンドが山裾にエコーを引いて跳ね返る。



10000rpm近辺でシフト・アップ。


先は下り坂なので、2ndでフル・スロットルしていると

前輪は離陸したまま下り坂を降りてゆく。


ウェル・バランス。





......後のブラックバードの事を完全に忘れていたが

もとよりタイトコーナー向きじゃないマシンだから

大事を取ってゆっくりコーナーを回ってきたようだ。


気づいて俺がブレーキングしたら、すぐに追いついてきた。



-------+-------





さて、この走りからフレームのセッティングについて考えますと

どうも、このRZVはフルスロットル近辺でないと本来の旋回性が

引き出せない設定になっているようにも思えます。


平坦な路面で加速しても、容易には前輪を持ち上げないが

そのまま下りにさしかかると前輪が浮いたまま坂を降りてゆくあたりは

よくセッティングが出ていると、不安なくこうした走りができます。


前重のRZVですが、平坦路、1st全開でフロント・アップするか否かぎりぎりのセッティング

である、ということはかなり安定寄りセットであり、後輪に対するスクワット力を

相当打ち消している事が推測されます(やや過剰に過ぎるきらいはありますが)

また、コーナーで遠心力が掛ったとしてもコンプライアンス・ステアを起こすのは

かなりの負荷を掛けた状態でのみ、と言う事になります。


おそらくはスイング・アームの途中にサス・リンクがついている事、アーム自体が短く

ショート・ホイールベースで上下に短いダブル・クレードル・フレームのために

撓りが起き難いから、だろうと思われます。


たぶん、袋井テストコースのような路面ですと容易にコンプライアンス・ステアが起きたのでしょう。


そこは公道ですから、そのような事にはならず、結果として


前輪のグリップが不足したらアンダー・ステア。

うまくスピードに乗れていて、狭いパワー・バンドに入っていた時に限りコンプライアンスが生じる。

それ以下のスピード、負荷の場合はライダーが補正しないと鈍重なハンドリング。



こんな感じになるのだろうと思われますね。





ここの先の直線は、

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