第42話 28

日記  1988年...


[バイクショップにて]



ここんとこ硬いハナシが続いてたから、すこし軽いハナシでもするとしよう。

1988年と言うと、俺はこの頃バイクショップに勤めていた。

なので、結構オモロイハナシも多かったが....




---------------



俺はと言うと、バイク用品店の主任だった。

なかなか用品を売るってのも、一筋縄では行かない。



ヘンクツなマニアも多いが、なかにはこんな可愛いのもある。




「すみませーん、NSR50のハイカムください」(笑)



俺はこういう時、馬鹿にしたりせずに丁寧に教えてあげる事にしている。

誰だって最初は知らないのだ。

でも、仲良くなりすぎて店の定休日にタダで修理してやったりとか

結構、儲からない仕事も多かった。


まあでも、趣味だから楽しかった。



このコロはバイクブームで、普通のオネーチャンがバイクに乗ったりしてたし..



そうそう、それで思い出したが、当時のブーツはオーダーなんて少なかった。

んで、デブのオネーチャンとかが無理してカワイイデザインのブーツを買おう、とする....


当然、ふくらはぎが入らない(笑)



じゃあ、どうするか。



普通は丁重にオーダーを薦めるのだが、なかにはどーしてもこのデザインが良いと

我が儘を言う女もいる。(たいてい、我が儘なのはブスでデブが多いのはなぜだろう?と

この頃思った。いい女はそういう奇妙なこだわりがない...ま、ふつうサイズで入ってしまうから

こだわらなくても良いのだろうが)



で、この時もホソーイブーツに無理矢理ダイコンアシを押し込んで...(笑)



バック・ファスナーが半分も上がらない、なんて文句を言っていた女が居た。




んで、俺のとこにそのブーツを広げてくれ、と言ってきた。



広げる、と言っても....



当時は熱処理でブーツの幅を広げる工具があった。

水で湿らせて熱処理して、ついでに万力の原理で内側から広げるのだが...




これで広がるのはせいぜい1cmくらい。

その大根脚は、ふくらはぎがボーリングのピンくらいあったので(笑)


どう見ても無理。




「お客さん、無理ですよ」と俺は言った。





でも無理を承知で、と、その女は金を払ってブーツを置いて行った。


まあ、金もらっとけば良いか、と....



ところが、ブーツの皮が安物なので、延びない。



どう頑張ってもせいぜい1cmが良い所。





次の日。


女は来店、ブーツを履いたが、案の定入らない。(笑)




無理だって言ったのに....


「入らないのは店の責任だから、入るようにして」と喚く。(苦笑)




お金をお返ししますから、と言ったが聞き入れず、このブーツが良いと言う。


たしかクシタニだったかのピンクと白の可愛らしいヤツで、

おおよそ大根脚には似合わない....が。



そうとも言えず黙っていると、なんとかしろ、と言って帰った。




次の日。


間抜け店長が青い顔していた。



どうしたの、って俺が聞くと....


無理にブーツ延ばし機に掛けたので、ブーツの縫い目が裂けてしまった、との事。



よく見ると、スライス・レザーの飾りの縫い目が剥がれていた。





うーん困ったな。




困った時にはコレがある。



俺は、トライアルバイクのCMで有名だった(当時)

アロンアルファを買ってきた(笑)



トライアルバイクが壁にひっついてしまう位だからこれで大丈夫だろうと

接着剤をべっとりと塗って、そのストライプを貼った。




5分後。



見た目は全くわからない(^^)




女、来店。




ご機嫌でブーツを履いてった、とさ(笑)



メデタシ、メデタシ。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る