第21話 88ps

日記 1986/5/y


このN妻さん、なんとなく破壊的パワーの持ち主なところも

「ブルース・ブラザース」のジェイクみたいで..

俳優としてはそーんなに仕事があったワケではなく

TVのヴァラエティにチョイ役で出たりしたくらいだった。


でも、私生活の方が破壊的で、そこんとこが俺はとっても気に入っていた。

単身、ニューヨークに渡り寿司屋の板前になって有名になって、

でもすぐに飽きてかえってきたり。

「ニューヨークのマグロはな、ハドソンベイで人肉食ってるから旨いんだ。

マフィアに殺られた奴のな。」


....とか言って、まだ日本で流行る前、18インチのロードタイア穿かせたDT200Rで

ストリートをぶっ飛ばしてた。

俺も借りて乗った事があるが、なかなか楽しいマシンで、トルクがあるから

ウィリーも楽だし、交差点でダートラごっこもできる。

うんうん、楽しいじゃんと思ってたら最近はやってるな。


なぜか、このN妻さんはヤマハに乗ってる事が多かった。

というよりはスズキが大嫌いなのだ。



ファミレスなんかでメシ食った後、パーキングに行こうとすると彼がいない。

あれ?と思っていると隣のスズキのディーラー、とかスズキハウスから出てきたり。

なにしてるの?って聞くと「壁に小便してきた」(笑)。


pis on the wall ね。


....どうやら、心底嫌いらしい。




このN妻さんはYさんの旧友で、よく一緒に場外乱闘とかした仲らしい。

それなのに、Yさんがスズキのバイクを買うと、全く遊びにこなくなったり(笑)

ホンダに乗り換えると遊びに来たり。



どうしてか?というと....



彼はニューヨークで寿司屋の修行をしていた頃、間違ってゲイの店に行ってしまったらしい。

そこで、ホモのおっさんら(ヴィレッヂ・ピープルみたいな奴らね)に

犯されそうになって、ほっぺた舐められたりした恐怖がトラウマってる...とか(笑)。


いや、笑い事じゃない。


そいつらが、なぜかみんなスズキのバイクに乗ってた、とか。



それっからスズキが大嫌いで、Γ250なんかも「骨壺みてえなタンク」だとか、

例のSマークも「ハーケンクロイツの片割れみてえだ」とか


とにかく大嫌いだ、と。

なんか寅午なんかいな(笑)


んで、このヒト、俳優の仕事の傍ら、SMクラブの店長やってたりすると、

某有名歌手H.Iと、さる政府高官が一緒にSMしてたとこ見てて、なんだか世を儚んだのか

どっかに消えテッタ、らしい...



イマでも元気にしてるのかな。



さて、そうこうしているうちにRZVの復元はできた。

(改造じゃないのだ。元の姿に戻すんだし、

当時はまだ厳しーい車検制度のまっただ中で、TZRの純正セパハンをトップ・ブリッヂの下

につけただけで改造になった頃、だけど、このRZVのフルパワー化は車検OKなのだ)

例の中野のバイク屋に、Yの車で送ってもらう。

Yの車は、このころはやりはじめてたボーイズ・レーサー、CR-Xだった。

このYは車の運転のセンスがあって、その方向に進んだらよかったのに、と思ったくらいの

ドライヴぶりで、ちょっと俺は恐怖を感じながら首都高速6号をブットぶCR-Xの助手席に

しがみつきながら中野についた。



俺のRZVは、すでに作業を終えて舗道にパークしてあった。

店に入ってハナシを聞く。


ノーマルのヨーロッパ仕様だと、スローが濃くてかぶるから...って

ちょっと絞ってあるそうだ。

その代わり全開にすれば...って。


キーを受け取って、エンジンを掛けてみる。


始動性は変わりない。


バラバラバラ....と、いつもの感じにアイドリング。



じゃあな、って Yと店の主人に挨拶し、俺はメットを被って店の前の2車線道路へ飛び出し、

練馬方面へ。


もちろん、最初はカブってるように回らないから、かるーくアクセルを開いて

ロウ・ギアで高回転まで回し、クランク・ケースのガスを抜く。


それから.....


一度、スロットルを戻して回転を4000rpmまで落とす。


そして....


前が開いているのを確認した後、一気に全開!



6000rpmくらいからパワーが増えて、一気にレッドまで回る。

前傾してないと、フロントが浮き上がりそうになるのはいつもの通りの感じ、だ。



うーん。Goodだ。(^^)。




 

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