第20話 AIDS

日記 1986/5/x


幸運にも高速パトにもひっかからず、その後は東名高速を軽くクルージング。

用賀で環状8号線に降り、左折して練馬方向へ。

天気は曇り、まずまずのコンディション。


Yの口利きのモータースに着いたのはそろそろお昼、という頃。


モータースの主人はカワサキワークスでGPを転戦したメカニック。

弟はヤマハワークス、と根っからのGPメカニックで、腕には定評があった。




モータースの前は広い4車線泥道路、歩道も広く、俺はそこにRZVを留め、

モータースの主人に挨拶に行った。


「すみません、Yさんの紹介で....。」



もちろん、都合があるだろうから仕事の内容には触れない。



一見、野武士風のメカ氏、鋭い眼光だが穏やかに伝える。


「はい..じゃ、ちょっとすぐにはできないから、置いてって。」



...これは誤算。

すぐにやってもらって帰るつもりだから、帰りの足を考えていなかった。



とりあえずモータースにバイクを預ける事にして、茨城にすんでいるYに電話をし、

今夜泊めてもらえるかどうかを聞くとOK。

車で迎えに来てくれると、うれしい返事。



昼時になり、モータースの椅子に座ってYの到着を待っていると、

おかみさんがホカホカ弁当を買ってきた。


ずいぶんサービスがいい店だな、と思い、「ありがとうございます」と

言おうとしたら自分たちの分だけだった(笑恥)


そりゃそうだよね、とメシ時なので遠慮して近くのラーメン屋でラーメンライス。



ラーメン屋のTVには、なんだかローカルなCMが流れていた。


干しクラゲのCM。


お母さん女優が子役に話す。「コリコリが分かったらもう大人ね(^^)。」



俺は飲んでいた水を吹き出してしまった。



どうしてかって言うと.....




Yの親友にN妻さん、という俳優の卵が居た。

RZ250Rに乗っていた。

この人がまあ、面倒見がいいのか年下の女の子にもてるヒトで...

で、こんな事を言ってたんだ。

 

「こりっとしてるんだな。若い女は。」(笑)。


...とまあ、羨ましい限りのこのヒト、いろいろそのテの話題には事欠かず、

なんだか、砂が入ってたとか、忘れもののゴムが入ってた、とか...(笑)。


このヒトは普段、バイトでホテルのボーイをしていて、

危ないヒトたちのパーティーで薬を売りつけられそうになった、とか...


「アンちゃん、一発打ったろか?スカーっとすんで?。」


...なんて。(笑)。




芸能人のパーティなんかで乙に澄ました女優とかが居ると、そいつの飲み物の

マドラー代わりに鼻クソほじった指でかき混ぜたり、とか...


まあ、おもしろいヒトで、俺はバンドをやってた事があったんで

このヒトのノリは好き、だったが..




その後、このヒトは消息を絶つ...



AIDSで死んだんかいな(笑)。



 

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