第17話 47X


日記 1986/5/x


[ヨーロッパ仕様へ]


ある日。

そろそろ慣らしも終った。


輸出仕様に戻そ、早く、とYが電話でそう言った。



手回しよく、例の練馬のモータースには連絡してあり、

本当ならそこで買った客だけ、というところを

Yのカオで、なんとかやってもらおう、という事、だった。


この当時、いろんな店でこれをやっていて、

それぞれピンきりでいろいろな仕様があったのだが、

ここの店はさすがにレースメカだけあって、

そこをうまくセッティングしてくれる、と有名だった。

普通にヨーロッパ仕様にすると、日本の道で渋滞とかに

合うと特に夏など非常に扱いにくくなったりもするが

(気温が違うからまあ、あたりまえなんだけど)

そこら辺もお金かけずに巧くやる、と評判だった。


いつのまにか年はあけ、1986年になっていた。

春を迎える頃に、仕事を休んで俺は、東名高速に乗った。

もちろん、輸出仕様に戻すために。


平日の午前、空いている高速のインターをゆっくりと登り

アプローチ・ロードで全開。


国内仕様なので、トルクが今一つ薄いがそれでも

加速そのものは2ストらしく軽快。

でも、8000rpmくらいから伸びが悪い。

この辺、むかしのRD350みたいだ。










俺らの時代は、中型免許(今の普通2輪)なんかは

試験車が2ストだったりした。


俺の時はRX350、RD350で..


特にRXは前ドラムブレーキなので、制動試験なんか

でごろごろ転倒してたりした。


また、加速も鋭く、空冷の2ストらしい鋭い加速で

教習生を慌てさせたりしたものだった。

S字路でコースアウトしたり、一本橋から落ちたり。


俺は高校生の頃、学校の仲間と免許を取ったが

(もちろん、禁止。)


仲間のひとりに、U原くん、という奴がいた。

彼はちょっと今でいう「天然」のケがあって

いつもがっこではギャグメーカーだった。


で、この時、このU原くんは中免の教習中,,,,


RX350で坂道発進の練習だ。

彼、普段はパッソルに乗っているので、

「2ストは慣れてるさ、低速トルクないから..。」

と、知識はあった?ようだ。


んで、この時も....



坂道で一時停止。

フロント・ブレーキを握ったまま。

リア・プレーキを離し、シフトを1速に入れる。

後方確認(この辺はエラい^^;...)

リア・プレーキを踏む。


アクセルをあおり、クラッチをツナグ...


(2ストは低速ないから、って、おもいっきり。(笑)





......!!☆。


RX350は、ポン、とフロント・アップ(^^)。

びっくりタマゲタU原くん、アクセルを急に戻して。

でも、その時はもう、坂道の頂上を越えて。

前輪は宙に舞ったまま....



あせったU原くん、前後輪のブレーキを思いッきり。


前輪は、下り坂に叩きつけられ、ブレーキ握ってたから...


.....教習中止(笑)




このU原くん、何が気にいったかわからないが

免許取ってからも2ストをよく、乗りついでいた。

例のNか山くんとシグナルGPで仲良く右折車に

激突!したRZ250ってのは、このU原くんだ。(笑)








,,,回想を続けながら、俺は機械的にシフト・アップして

RZV500Rをクルージングさせた。

しばらくの間、御殿場インターまでは平和な直線路だ。

のんびりとクルーズしてると暇なんで、また回想が続く..







このU原くん、他にもいろいろやってくれた。

教習中にRD350のプラグかぶりをやらかして

(当時の空冷2ストはよくあった、こういうトラブル)

再始動。

でも、カブッテんだから簡単にはかからない。

U原くん、やけになってダブル・キック!





ドテ



勢いあまって転倒(笑)


これには教官も大笑い(^^)



..とかなんとかで、ようやく取れた中型免許。



でも、学校はもちろん禁止なので、みんな隠れて乗っていた。


で.....



ある日の事。

他のクラスで免許をもってる者、を調査した、という

情報が来た。


風紀の教師が回ってきて、自己申告させた、という。

持ってるだけで校則違反だが、素直に言えば所持を認め

黙っていても警察に行って調べ、隠れて持ってた者は

停学にする、という....



俺は、なんか変だ、と思い、申告しなかった。

だいたい、学校が免許所持を認めるワケがない。

で、俺達は、U原くん以外だれも申告しなかった。


U原くん、人がいい、というか....



ホームルームの時間。


生徒指導の教師が乱入。(笑)

角刈り頭。

サンダル履き。

手には、竹刀。

(こんな教師が、当時は一杯いた。「3ない運動」の頃だ。)



「バイクの免許、持ってる者は手を上げろ」


俺達は、平然と無視した。



「はーい(^^)。」


U原くん、ひとり(笑)。挙手。






二週間後。

御自慢のロング・ヘアーを五分刈りの坊主頭にした

U原くんはひさしぶりに登校した(笑)



俺は、気になって....

「おい、U原、どうしたんだよ?免許は認められたのか?。」



彼は、うなだれて事情を話す....



免許所持を認める、というのは真っ赤な嘘で、

実際には謹慎処分にするから、免許を学校に預けろ、

という命令があって、三日謹慎だった、という。


で、不貞腐れて家で昼寝してたら、同じようなアホ仲間が集まってきて、奴の部屋で...


窓の外に向けて扇風機を回しながら、煙草吸ってた^^;


もちろん、U原のオヤジは怖いので、そんな事を認める筈もない...が。


いつもは、これでうまくごまかしていた。



ところが、この日...



謹慎中、という訳で、生徒指導の教師(例の竹刀の男だ)

が、家庭訪問に来た(笑)そうだ。


その時、二階の窓から煙が出ているのに竹刀は気付き、

無人だった家に上がり込み(鍵かけてないのもU原らしい)...


御用!



...と、いう事で、頭丸めて停学。(笑)



....御愁傷さま^^;



そんな風にヒトのいいU原くんだったが、その後も

いろいろ楽しい事件を起こして俺達を楽しませてくれた。


TZR250の純正セパハンをトップブリッヂの下に付けて

よせばいいのにネズミやってるいつものストレートで、全開!


...とっつかまって、整備不良も取られたり。

一緒に走ってた連中にも、同じ改造してる奴は居たが

ネズミにひっかかんなかったので、そのまま通過(笑)


とか。


TZRのキイをいつもつけたままにしていたので

ツーリングの時にいたずらされて、キーをドブに捨てられて帰ってこれなくなったり。

(あとで、家からキィもっていったら、ドブの中からキイが見つかった)


とか。



ミニバイクの試乗会でスクーターに試乗し(やっぱり2ストのJOGだった)、

直線でスラロームやってコケ、弁償させられたり...



とか...



まあ、例のNし山程じゃないけど、楽しい奴。


俺達はNか山、Nし山とこのU原くんを..「さんばからす」なーんて。


もちろん、「三羽烏」ではなく.....


[三馬鹿等 's] (笑)。



とかなんとか、まあ、みんな面白い奴等だった。





平和にクルージングを続けるRZV500R国内仕様は

御殿場インターを越え、長い長いストレートをようやく走り切り

足柄サービスエリアを右手に、下りワインディング区間に入る。

現在とは違い、上下二車線のちょっとしたサーキットのような楽しいルートだった。

とはいっても、オートバイだとカーブが緩すぎて

スピードが乗りすぎるので

適当に流すのがいい、という感じ....





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