第12話 RZ250



このNの他にも、バイク仲間にはいろいろ面白い奴がいる。

どうしてバイクのりってのはこう、バカが多いんだろ...って言ったら、

「類は友を呼ぶ、って言葉があるよな...。」ってYに言われてしまった。

Yさん、あなたも「同類」ですよ.....(笑)


<RZ250の思い出>



こんな風な「峠仲間」がなんたって喜んだのが、RZ250の発売だった。

当時、俺はXS750specialに、コンチハンをつけ、TT100 425/85-18を

装着して峠でステップをガリガリやっていた。

そこから、バンク角不足を補うために、昔のバイク雑誌で見た

マイク・ヘイルウッドの真似をして大ハングオン(当時はハングオフじゃなくて、ハ

ングオン

と言っていた)

でコーナーしていた。

これが結構、峠じゃいい勝負になるのでまあ、当時の公道レースは

それだけ速度が低かった、ということなんだけど。

で、この頃発売されたRZ250。

早速、Yが資金力に物を言わせて買い込んだ。

黒地に金のピンストライプで、Barry Sheeneの大ファンであるYは

喜んでこのRZ250を発売前から予約していたようだ。


そして、NもまたこのRZ250の白を、免許とって初めて買った。

当時、俺が出入りしていた沼津のTモーターに、偶然やつらも

RZ250を買いにきて.....


それが、以来、長年の付きあいの始まり.....


ひょんなことで、峠でハングオンしている俺を見て、Yは同類だと思ったらしい。

俺は、どちらかというと英国風が好きで、最初、中免時代はSR400'78に乗って

いた。

だから、ハングオンも、そういう、英国風スタイル(体全体でコーナーインするタイ

プ)

で乗っていた。


スカイラインの駐車場で休んでた俺を見つけて、Yがパークしてきた。

甲高い2ストの排気音とともに。


俺は、あまり人と話すのが好きじゃなかった。

それは今でも変わらないが。


Yは、人好きのする、いかにも東北人らしい温もりのある笑顔で

俺の方に歩いて来る。




「.......こんにちは。」

おれはようやくそれだけを伝えると、そのまま黙ってXS750のシートに腰掛けてい

た。

メインスタンドを掛けてあったので、つい腰をずらしてハングオンフォームの練習。


Yは俺の背中から


「肩が入ってない。」といきなりゴルフ教師のようにフォームを修正した^^;



それ以降、よりコーナーの通過が楽になった(ような気がする)。



今考えればなんでもないことだが、横に腰ずらしただけじゃダメにきまってる。

そんなことさえ、自分じゃまあわからないのはキャリアがなかった、というか。



Yは、黒いRZ250にまたがって、コーナーの向こうへ消えていった。


俺も何の気なしに後を追おうかな、とXSの3気筒エンジンに火をいれた。

パーキングから、右折しようと加速を始めたその時だった。



一台の白いRZ250が全開のSoundを響かせて、俺の進路を塞いだ。


.......このやろ!


Nだった。



ブレーキの効かないRZ250でアップ・ダウンのきついこのコースをふっとんで行

く。


(実際、俺はRZ250を借りた時、XSのつもりでブレーキング

して、赤信号に突っ込んだ恐怖体験がある。

今思い出しても背筋が寒くなるが、当時は交通量も少なかったので大事には至らな

かったが)


Nのアホさ加減は、この頃からなにも変わっていない。

ただ、この頃はニンジャと違い、パワーが無いので事故らなかっただけだ。

俺は、Nの後から距離を置いてついてゆくことにした。


....もちろん、転倒した時に巻き添えにならないためだ。


ゆるい高速左コーナーに、Nは無理矢理突っ込んで。

ハング・オンして、「肩を入れた。」


しかし。


明らかにオーバースピードだったので、いくら肩を入れようが尻を落とそうが

"キングNの象徴の白いマシーン"は、アウトにはらんで行こうとする。(笑)


Nは、コーナーリングをあきらめ、フル・ブレーキング。

幸い、効かないフロントブレーキのおかげで転倒はせず、対向車線を横切って

ガードレールに一直線...



と、思いきや。


閻魔大王も愛想をつかしたか、はてはカンダダのように

ひとつくらいは良い行いをしていたか(?)


ガードレールの丁度切れ目から、路肩へ飛び出して

生えていた雑草がブレーキの役割をして。


なんとか立ち木にぶつからずに済んだ。


自慢のイシイのアンダーカウルは傷になってしまったが。



俺は、微笑いながら「これで、ひとつ名前がついたな、コーナーに....。」


とつぶやいた。



こんな風に、誰かが事故ったコーナーに、俺達はそいつの名前つけてた^^;


あとで誰かに場所を教えるときに便利だからだが、


「あの、ガンちゃんコーナーでさぁ.....。」とかいう風に。


ここのコーナーは、Nコーナーってことになった。(笑)


その後も、コーナーの名前は増えて行く(^^;





中には、花束と線香を供えに行くようなこともあったりしたが。


最近程ひどくは無いにせよ。


(今日も箱根R1には事故のあとがいくつもついていた。

なんで、あんなに簡単に事故るのだろう?^^;)





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